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(ターゲット)顧客から有益な意見を聞きだす方法

お客さんが欲しがる製品やサービスをつくるには、何が一番効果的かと言うと、お客さんやターゲットから実際に意見をもらうことです。が、やり方を間違えると、明後日の方向に行ってしまうことがありますので、ご注意を。

有益な意見を得るためには、いくつか気をつけなければいけない事があります。

一つは、人は思った通りのことを言わないことがある、ということ。例えば、対面で質問を受けた際にネガティブなこと・批判的なことを言わないことがある、というのは容易に想像がつくかと思います。

二つめは、言うことと実際の行動が異なることがあるということ。「こういう製品があったら欲しいですか?」という質問に「はい」と答えた人が皆実際に買ってくれるかというと、そんなことはないですよね。

三つめは、上記と多少かぶりますが、「欲しい」とかYesとか言うのは簡単だ、ということ。これはその場の取り繕いという心理的なものの場合もありますし、または、「要るか要らないかといわれれば、まあ、あってもいいと思う」くらいな気持ちでYesとこたえることが多いというのもあります。絶対的にNoという場合まで絞り込めているケースは圧倒的に少なく、その他8割以上は積極的に或いは何となくYes、もしくはよく分からないから取りあえずYesというのが混ざっていると思っていいでしょう。

じゃあどうするか、ということですが、大きく分けて二つあります。

一つは意見をヒアリングして拾うのではなく、実際のアクションを通して拾うというもの。これはLean Startupでよく用いられる手法です。例えば架空の製品に対する需要をみるには、ターゲットのニーズや商品の利点に関する仮説をいくつか用意し、それぞれのターゲットにあたかも本物のようなウェブサイトで商品を提示し、どのようなアクションが取られるか(購入ボタンを押すなど)を測定するというものです。またサイトの最適化に活用するA/Bテストなども同様のコンセプトです。アクションによって好みが明らかになるというわけです。

もう一つは、ヒアリングをする際に、単純なYes/Noの質問で終わらせない、ということです。例えばAというフィーチャーがあると良い、という意見だったら、どうしてあると良いのか、その人の生活がどう改善されるのか、ないとどんなダメージがあるのか、などなど深掘りし、本当のモチベーションを聞き出すようにします。さらにはそのフィーチャーにいくら支払うかと聞いてみても良いでしょう。お金がかかるとなるとYesの範囲は相当狭まります。同様に製品を見せて「どう思いますか」とオープンエンドに聞いても答えにくいので、実際その人にどのような利点がありそうか説明してもらったり、他の人にどう説明するかをたずねたり、実際に使うつもりか、そうでなければなぜか、を対話の形で深く聞き出すよう心がけるようにします。それからちょっとした表情やボディランゲージを見逃さずにその意味を確認することが必要です。このようにすることで、実際に欲していることを汲み取り、適したソリューションを提供できる可能性がでてきます。

特に初期のころProduct/Market Fitに至るまでは、これらの方法を組み合わせて核心にせまるようにすることが、一見遠回りに見えて実は近道です。一方通行のアンケートにはそれなりの利点もありますが、この段階では実際に人に会って話しを聞くこと、また実際に買ってもらえるかを検証することが必要です。気恥ずかしさや不慣れなことなどから、こうして「ビルの外にでる」ことを避けたい人が多いですが、実際に製品をつくりこんでしまったあとに誰も欲しがらなかったというような事態を招かないためにも、最初に時間と労力をかけましょう。

では今日はこの辺で。

 

 

 

 

 

 

 

プロダクト/マーケット フィットへの道

以前にキーワードとして触れた、プロダクト/マーケットフィット、略してPMFですが、日本ではどれだけ理解されているでしょうか。

これは、概念的には、「自社の製品を欲する一定の顧客層が存在していて、製品が顧客の期待に応えている状態」です。実感的にはイケイケな状況を指します。

スタートアップにとっては、その地点に達するのがとにかく勝負です。が、この地点を認識していないと、いわゆるliving deadの過酷な状況に陥いる可能性が高いです。大体、最初の1-2年でこの地点に達しないと、資金がつきるか、メンバーのモチベーションが下がるか、投資家から冷たくされるか、いろいろな状況が混じって崩壊に向うケースが多いと思います。

なので、計画はその地点に達するまでを基準に考えるのが良いと思います。スタートアップの場合はそのようなビジネスモデル自体を探すのが使命なわけですから、「毎月収入がこれぐらい増えるはず」という計画がそもそも立てられません。一般企業に当てはまるようなファイナンシャルプランニングをむりやり使っても、絵に描いた餅以上の何ものでもなく、自分達の進歩の状況をはかるのに一向に役に立ちません。

例えば、あなたのスタートアップがコンシューマー向けのウェブサービスだとして、以下の状況だと想定します。

  • メンバーは4人でバーンレートは月々$40,000
  • シードとして$1Mを調達済み
  • とすると、ランウェイは2年くらいだが、Series Aを調達するには6ヶ月かかるとして、実質18ヶ月
  • Series Aを募る前のマイルストーンとして100万インストールが必要
  • バージョン1.0をつくるのに3ヶ月かかる

仮に最初からユーザー(カスタマー)からのとても良いエンゲージメントが得られ、即座にPMFが得られたとします。その場合は、そこからユーザーとインタラクションしながら15ヶ月じっくりかけて最適化・growthを磨いていけば良いことになります。15ヶ月で100万インストールなので、日々のサインアップが平均して2,000になる状況まで確度を上げていく必要があります。

一方、PMFに達するのに12ヶ月かかるとどうでしょう。そうすると残り9ヶ月で100万インストールに達するには、サインアップが一日平均11,000で進まなければならないので、相当なマーケティングプッシュが必要でしょう。自社にそんな規模のgrowthを実現できるマーケターがいなければ、外から連れてくるか、エージェンシーを使うなど素早く実行する必要があります。

もちろんPMFにどれくらいかかるか自体を計画することは不可能ですが、上記の両極端の例のように、シナリオを考えて、常に地点を確認しながら、残された時間の中でゴールを実現する手立てを計画・調整していくべきだと思います。

これは多くのスタートアップが陥る罠ですが、PMFに達するまでは、マーケティングに力を入れる(またはgrowth hackをがんがんやる)のは無駄です。とにかく100万インストールに達するために、と早くマーケティングに手を出したくなりますが、成果がなかなかでない上にマーケティング力だけでインストールが増えたとしても、ユーザーがどんどん離れていくザルの状況になり、維持できません。これは最初のうちはマーケティングを一切やってはいけない、というのではなく、例えばアーリーアダプターを掴むためのマーケティング活動などはもちろんすべきです。つまり活動内容、目的が異なるわけです。

初期は、ユーザーを知るため、PMFに達するための活動が必要で、これはマーケティングの要素もありますが、必ずしもマーケティング専門の人が必要なわけではありません。PMFに達してからは、ブランディングだとか、PRだとか、広告だとか、いわゆる「マーケティング」と呼ばれる活動を本格的に行い、ユーザー数を増大させる活動となります。最初からPRにたよってインストールを増やそうとする場合が多いですが、時期尚早の場合、問題の本質を知ることなく後にliving deadに陥るので注意が必要です。

では今日はこの辺で。