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以前にキーワードとして触れた、プロダクト/マーケットフィット、略してPMFですが、日本ではどれだけ理解されているでしょうか。
これは、概念的には、「自社の製品を欲する一定の顧客層が存在していて、製品が顧客の期待に応えている状態」です。実感的にはイケイケな状況を指します。
スタートアップにとっては、その地点に達するのがとにかく勝負です。が、この地点を認識していないと、いわゆるliving deadの過酷な状況に陥いる可能性が高いです。大体、最初の1-2年でこの地点に達しないと、資金がつきるか、メンバーのモチベーションが下がるか、投資家から冷たくされるか、いろいろな状況が混じって崩壊に向うケースが多いと思います。
なので、計画はその地点に達するまでを基準に考えるのが良いと思います。スタートアップの場合はそのようなビジネスモデル自体を探すのが使命なわけですから、「毎月収入がこれぐらい増えるはず」という計画がそもそも立てられません。一般企業に当てはまるようなファイナンシャルプランニングをむりやり使っても、絵に描いた餅以上の何ものでもなく、自分達の進歩の状況をはかるのに一向に役に立ちません。
例えば、あなたのスタートアップがコンシューマー向けのウェブサービスだとして、以下の状況だと想定します。
- メンバーは4人でバーンレートは月々$40,000
- シードとして$1Mを調達済み
- とすると、ランウェイは2年くらいだが、Series Aを調達するには6ヶ月かかるとして、実質18ヶ月
- Series Aを募る前のマイルストーンとして100万インストールが必要
- バージョン1.0をつくるのに3ヶ月かかる
仮に最初からユーザー(カスタマー)からのとても良いエンゲージメントが得られ、即座にPMFが得られたとします。その場合は、そこからユーザーとインタラクションしながら15ヶ月じっくりかけて最適化・growthを磨いていけば良いことになります。15ヶ月で100万インストールなので、日々のサインアップが平均して2,000になる状況まで確度を上げていく必要があります。
一方、PMFに達するのに12ヶ月かかるとどうでしょう。そうすると残り9ヶ月で100万インストールに達するには、サインアップが一日平均11,000で進まなければならないので、相当なマーケティングプッシュが必要でしょう。自社にそんな規模のgrowthを実現できるマーケターがいなければ、外から連れてくるか、エージェンシーを使うなど素早く実行する必要があります。
もちろんPMFにどれくらいかかるか自体を計画することは不可能ですが、上記の両極端の例のように、シナリオを考えて、常に地点を確認しながら、残された時間の中でゴールを実現する手立てを計画・調整していくべきだと思います。
これは多くのスタートアップが陥る罠ですが、PMFに達するまでは、マーケティングに力を入れる(またはgrowth hackをがんがんやる)のは無駄です。とにかく100万インストールに達するために、と早くマーケティングに手を出したくなりますが、成果がなかなかでない上にマーケティング力だけでインストールが増えたとしても、ユーザーがどんどん離れていくザルの状況になり、維持できません。これは最初のうちはマーケティングを一切やってはいけない、というのではなく、例えばアーリーアダプターを掴むためのマーケティング活動などはもちろんすべきです。つまり活動内容、目的が異なるわけです。
初期は、ユーザーを知るため、PMFに達するための活動が必要で、これはマーケティングの要素もありますが、必ずしもマーケティング専門の人が必要なわけではありません。PMFに達してからは、ブランディングだとか、PRだとか、広告だとか、いわゆる「マーケティング」と呼ばれる活動を本格的に行い、ユーザー数を増大させる活動となります。最初からPRにたよってインストールを増やそうとする場合が多いですが、時期尚早の場合、問題の本質を知ることなく後にliving deadに陥るので注意が必要です。
では今日はこの辺で。
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シリコンバレーに限ったことではなく、アメリカ全体、または他の国・地域でもそうですが、日本市場だけでなく他の市場にも向けて製品・サービスを展開したい、という場合、かなりのことは実は日本国内に居ながらできるのではないかと思ってます。
昨今シリコンバレーをめざす起業家・スタートアップが増えていて、それはそれで好ましいことなのですが、どうも実質的な意味で「進出」がなかなか進まないなという感じがします。設立自体はデラウェア登記で行ったものの、観光ビザで行ったり来たりで結局殆どの活動は日本国内で行うことになったり、視察やイベント参加で訪れたりするものの実際の行動には至らなかったり、そんなことが多い様です。
シリコンバレーの情報をゲットするとか、シリコンバレーでの起業自体が重要なのであれば、それで良いのでしょうが、製品・サービスを世界市場で「シリコンバレーのスタートアップ的に」展開するのが目的であれば、まずはモノをつくって日本以外のユーザーを獲得してフィードバックを得ることが先決なのではと思うのです。が、それが出来ていないケースが殆どです。ニーズがあるか分かる前から多額のお金をかけて物理的な進出をするのは得策ではないですし、ビザの問題や資金調達に引きずられて動けなくなります。
そしてそれは日本に居ながらにしてもある程度可能なことです。
この場合「モノをつくって」というのは、製品を日本語で日本のユーザー向けにつくりこんで、それをただ英語に訳したものでは決してありません。それは失敗パターンです。そうやってつくったものがアメリカで広まらないのはマーケティングが弱いからではまずないです。必要なのは、自分達のビジョンにニーズがあるかを検証し、その後つくりこみを重ねていくための最低限のモノ(リーンスタートアップで言うMVPです)で、その準備或いは開発自体は日本国内に居ながらできるはずです。当地のユーザーの感覚を感じるために事前に視察するとか、一時期当地で生活するとか、特に海外経験が不足している場合はその点を補うことは必要かもしれませんが、それもかなりのことはウェブで可能だったりします。自社に当地で通用するレベルの英語人材が欠けているのであれば、それは外部の人やサービスを活用して補う必要があります。(製品やサイトの英語自体が伝わらなければMVPのレベルには達しないため)
そして初期のユーザーを獲得するには、ローンチして何らかのマーケティングを行ってユーザーが来るのを待つのもありですし、AdSenseで小額の広告を出して数人集めるのもありですし、ターゲットにあたる人を紹介してもらったり募集したりして使ってもらうのもありです。重要なのはそれらのユーザーについて詳細を把握すること、彼らが製品をどのように使い、どう思っているかを詳細に把握することです。そうしたフィードバックを元にそもそも市場があるのか、あるならばどのように製品をつくりこんでいけば良いかを考えて進めていくのです。
そのようなユーザーとの関わりは実際に対面でできるのがベスト(もし当地に渡航するならばそれを目的にするのが良いと思います)ですが、日本からSkypeでも電話でもメールでもできることはありますし、また項目によっては製品・サービスを通してフィードバックを得ることができます(例えば、アンケートでユーザーが「あれば良いと思う」と言ったとしても、実際にサイト上で購入ボタンを押すとは限りません。そうした実際の行動をパターンでテストすることで「ユーザーの意見」を得ることができます。)
製品を用意する際と同じですが、そうしたことが出来る英語人材がいなかったり、そもそもその類のノウハウに欠けているのであれば、外部からの支援を得ればよいのです。私もそうしたことを行っていますし、他にもそのようなサービスを行っている方々はいるでしょう。何でも自力でやろうとするのは、海外を目指す場合は特に、無理がありますし、リソースの限られたスタートアップは特に臨機応変である必要があります。
箱を用意したりビザが取れるのを待ったりしてからでは機を逃してしまう可能性が大です。後の資金調達を考えると云々とか、色々考えることはありますが、たくさんのユーザーがとても欲しているものを作れれば、その他のことは後からでも何とでもなるのです。どこに拠点があろうとも、まずはとにかく日本の外で初期ユーザーを得るべく動いてみてはどうでしょうか。