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無料ランチの終焉?!

ご存知の方も多いと思いますが、シリコンバレーのスタートアップシーンでは、この数年、会社がランチを無料で提供することがデフォルトになってきました。(会社によってはランチだけでなく、朝も夜も出すところもあります)

この文化の始まりはGoogleからですが、FacebookやTwitterなどの大きなところだけでなく、大小のスタートアップにもかなり広がりました。

この仕組みは、社員はハッピーだし、会社にとっては社員の外出による時間や生産性のロスを抑えることができたりと、win-winな状況だったわけです。

ところが、今、IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁、連邦税を司る、誰からも嫌われる役所です:-))が、この福利厚生に対して課税するかも、という話しが出て、物議をかもしてます。まあ、この仕組みによって、Googleなんかの大きな会社がかなり税金逃れしているとすると、それはそれで、まあ追うのもありよね、ということもあるかもしれません。

が、検討されているのは、従業員それぞれの所得税のようです。例えば従業員の年収が$70,000だとして、年間の会社提供ランチが$2,000相当だとしたら、課税対象年収は$72,000とせよ、ということのようです。こうなると、話しはかなり面倒なことになりますね。じゃあ、タダじゃないじゃん、とか、そのような課税を希望しない社員は会社提供ランチを拒否できるのか、とか。

まあすぐには決まらないと思いますが、これからどうなるんでしょうね。会社提供ランチは過去のことになるのでしょうか。個人的には、そこに手をつけなくても…という感じがしますが。スタートアップ周りがいろいろ新しいことをやってそれが広まると、後から役所がにおいをかいで追ってきて法改正しようとする、ってのは、まあ、いろんな方面でありますよね。なんか非生産的ですな。

では今日はこの辺で。

 

プロダクト/マーケット フィットへの道

以前にキーワードとして触れた、プロダクト/マーケットフィット、略してPMFですが、日本ではどれだけ理解されているでしょうか。

これは、概念的には、「自社の製品を欲する一定の顧客層が存在していて、製品が顧客の期待に応えている状態」です。実感的にはイケイケな状況を指します。

スタートアップにとっては、その地点に達するのがとにかく勝負です。が、この地点を認識していないと、いわゆるliving deadの過酷な状況に陥いる可能性が高いです。大体、最初の1-2年でこの地点に達しないと、資金がつきるか、メンバーのモチベーションが下がるか、投資家から冷たくされるか、いろいろな状況が混じって崩壊に向うケースが多いと思います。

なので、計画はその地点に達するまでを基準に考えるのが良いと思います。スタートアップの場合はそのようなビジネスモデル自体を探すのが使命なわけですから、「毎月収入がこれぐらい増えるはず」という計画がそもそも立てられません。一般企業に当てはまるようなファイナンシャルプランニングをむりやり使っても、絵に描いた餅以上の何ものでもなく、自分達の進歩の状況をはかるのに一向に役に立ちません。

例えば、あなたのスタートアップがコンシューマー向けのウェブサービスだとして、以下の状況だと想定します。

  • メンバーは4人でバーンレートは月々$40,000
  • シードとして$1Mを調達済み
  • とすると、ランウェイは2年くらいだが、Series Aを調達するには6ヶ月かかるとして、実質18ヶ月
  • Series Aを募る前のマイルストーンとして100万インストールが必要
  • バージョン1.0をつくるのに3ヶ月かかる

仮に最初からユーザー(カスタマー)からのとても良いエンゲージメントが得られ、即座にPMFが得られたとします。その場合は、そこからユーザーとインタラクションしながら15ヶ月じっくりかけて最適化・growthを磨いていけば良いことになります。15ヶ月で100万インストールなので、日々のサインアップが平均して2,000になる状況まで確度を上げていく必要があります。

一方、PMFに達するのに12ヶ月かかるとどうでしょう。そうすると残り9ヶ月で100万インストールに達するには、サインアップが一日平均11,000で進まなければならないので、相当なマーケティングプッシュが必要でしょう。自社にそんな規模のgrowthを実現できるマーケターがいなければ、外から連れてくるか、エージェンシーを使うなど素早く実行する必要があります。

もちろんPMFにどれくらいかかるか自体を計画することは不可能ですが、上記の両極端の例のように、シナリオを考えて、常に地点を確認しながら、残された時間の中でゴールを実現する手立てを計画・調整していくべきだと思います。

これは多くのスタートアップが陥る罠ですが、PMFに達するまでは、マーケティングに力を入れる(またはgrowth hackをがんがんやる)のは無駄です。とにかく100万インストールに達するために、と早くマーケティングに手を出したくなりますが、成果がなかなかでない上にマーケティング力だけでインストールが増えたとしても、ユーザーがどんどん離れていくザルの状況になり、維持できません。これは最初のうちはマーケティングを一切やってはいけない、というのではなく、例えばアーリーアダプターを掴むためのマーケティング活動などはもちろんすべきです。つまり活動内容、目的が異なるわけです。

初期は、ユーザーを知るため、PMFに達するための活動が必要で、これはマーケティングの要素もありますが、必ずしもマーケティング専門の人が必要なわけではありません。PMFに達してからは、ブランディングだとか、PRだとか、広告だとか、いわゆる「マーケティング」と呼ばれる活動を本格的に行い、ユーザー数を増大させる活動となります。最初からPRにたよってインストールを増やそうとする場合が多いですが、時期尚早の場合、問題の本質を知ることなく後にliving deadに陥るので注意が必要です。

では今日はこの辺で。