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コミュニスト的Craigslistの粋

どうも。あっという間に12月も半ばですね。最近こちらも寒い日が続いて参り気味です。

さて、先日別件で調べ物をしていたら、ちょうど1年程前の記事でCraigslist関連のものに遭遇しました。はご存知の方も多いと思いますが、この辺では特に人気のある、生命線に近いコミュニティーサイトです。もう十年近く存在しており、UIもシンプルで、1回目と今回のバブルに脇目も振らず淡々と成長し皆に愛されているサービスです。ご多分に漏れず私もよく使わせてもらっています。

営利主義ではなくユーザーの求めるもののみを提供するという信念を貫く企業として有名ではあるのですが、前回の動画にあったように一攫千金モードが高まっている昨今、この地でその姿勢を続けていることに新鮮さを感じざるを得ません。数年前にeBayが25%の株を取得してどうなるかと危ぶまれたこともありますが、その影響は殆どみることが出来ないくらいです。

この1年前の記事ではUBS global media conferenceでの質疑応答におけるCEOのJim Buckmasterとウォールストリートの人々との間の噛み合わないやりとりに触れています。単純に要約するとこんな感じです。

UBS analyst: What are your plans to maximize revenue?
Craigslist CEO: Craigslist does not maximize revenue. It’s not part of the goal.
Audience:..?..?..?….

Craigslistは現在450都市にサービスを展開しており月間ページビューは毎年200%成長を経て約80億を誇りますが(その他統計の詳細はこちら)、社員数は25名。 サービスの殆どは無料で、AdSenseや他のバナー広告等は一切なく、収入源はその内7都市にだけ課金している求人広告と賃貸広告料(求人:サンフランシスコ $75、その他6都市 $25、賃貸:ニューヨーク $10)のみです。トラフィックだけでもすごいことですし、本気で収入を増やそうと思えば企業価値はとんでもないことになると言われているのも納得です。

しかし、掲載ボリュームがかなりありこれだけで相当の収入となるため満足しているし、大金持ちになっても良いことないし、ユーザーの要望に応えるだけだからというCEO。理解不能とばかりそれでも食い下がるアナリスト。

UBS analyst: How about running AdSense ads from Google?
Craigslist CEO: Craigslist has considered that. We even crunched the numbers, which were quite staggering. But users haven’t expressed an interest in seeing ads, so it is not going to happen.
Audience:..?..?..?….

ウォールストリートの人々を中心としたその場の聴衆の表情は、なんとも面白かったでしょうね。これがまたJim Buckmasterが抑揚もほとんどなく淡々と当然のように語るので、かなり異星人に見えたことでしょう。その場の状況をZDNetのライターがJim Buckmasterは“delightfully communist”そして聴衆は“confused capitalists wondering how a company can exist without the urge to maximize profits”だと記しています。

こうしてよく共産主義者だと言われる彼らですが、そういうわけではなく、CEOも言っている通り、ただ足るを知る人々なのだと思います。まぁ、アメリカ人一般には受け入れ難いですよね。利潤を追求しない=コミュニストというのは資本主義の権化のこの国では通ってしまうことかもしれません。

どちらが良い悪いという話ではないのですが、何かの信念を貫くというのは、それが金銭的なものであれ別のものであれ、格別の充足感がありますし、それが他の人と価値観が違っていようとも、状況が許すのならばそれで良いではないか、と思います。状況が許すということは、私企業でかつVC等の投資家がいないこと、そして一緒に働いている人達がその理念を共有していることです。そこを固持していくことは、それはそれで非常に難しいことでしょうけど。

そんなわけで、特に結論もないのですが、今になって何だか新鮮だなと思った次第です。では、また。

P.S. 遅ればせながら、シリコンバレーツアーの告知を貼らせて頂きました。 締め切り間近だと思いますので、興味のある方は奮ってお申し込み下さい。私も次回はぜひボランティアとして関わらせて頂きたいと思っています。

Vator.tv – 人材援護で成功を導けるか?

どうも。このブログでアクセスの多いエントリーを集計して右のコラムに試しに載せているんですが、知らぬ間に、プレゼンの話がトップになっていました。本ブログのコアな内容ではないのでいささか複雑な心境ではあるのですが、やはりプレゼンに悩む方が多いということなのでしょうか。基本編以外にもまた今度書きますね。

さて、今日はプレゼンにちょっと関係する話を。最近書いていなかったのですが、相変わらず月1で行っているSF New Tech Meetupというベンチャーのプレゼン+ネットワーキングイベントで先週見たものをご紹介しようと思います。

先週のイベントは女性起業家というあまりないテーマだったので、女性視聴者も多く、普段Geekでいっぱいの会場はいつもよりは若干華やいでおりました。で、その中でもひときわ華があったのが、Vator.tv というピッチビデオサイトの紹介をした、CEOのBambi Francisco氏。ちょっと場違いなくらいにきれいなお姉さん風で、しかも有力者を結構知っていそうだったので、何事かと思ったら、この方、CNNや Dow Jones MarketWatchでインターネット関連を追っていたジャーナリスト/レポーターだった人なんですね。

このVator.tvはサービスを開始して間もないベンチャーで、ビジネスやテクノロジーのアイディアや自社の製品・サービスなどをピッチ(宣伝)したビデオを掲載したり、閲覧したりできるというサービスです。YouTube等で同様のビデオが掲載されていることもありますが、その目的にフォーカスしたサイトを提供しギブ&テイクができるコミュニティを形成するというのが狙いのようです。社名はイノベーターのエレベーターピッチというところから取ったとか。最初の想定はアイディアをピッチしてVCからの投資を募るというところで、それを拡張していったのでしょう。

こういうサービスは「あったら良いよね」というものではあるのですが、実際に有益に機能させるのはかなり難しいと思うんですよね。どれだけ質の高いビデオコンテンツ及び質の高いユーザーグループを集めひきつけ続けられるか、そしてビデオが多数の一つとして埋もれてしまわないような、見たいコンテンツを的確に見つけ出せる仕組みを埋め込めるかというのが、すぐに頭に浮かぶことですが、中々一筋縄ではいきませんよね。

そして、より根本的な問題は、ビデオというメディアかもしれません。このNew Techイベントでも数多く見ましたが、近頃ビデオ関連のベンチャーがとにかく多いです。みんなそんなにビデオ見るんでしょうか…? 私は殆ど見ません。最大の理由は、要する時間です。編集がしっかりされていないことや内容の説明さえもおろそかなことが多く、要旨を把握するのに無駄にする時間が多すぎると感じるのです。

例えばあるベンチャーのやっていることをHPやニュースで見て興味を持った場合、次のステップとして、ビデオによる簡潔な説明があればとても良いと思うのですが、何の興味も無い時点では見る気がしない場合が多いと思います。ピッチの目的にあわせて掲載ビデオの時間制限をする等の仕組みは最低限必要な気がします。

かなり否定的なことを言ってますが、一つ面白いなと思ったのは、Competitionsという仕組みがあって、雑誌やカンファレンスやVCがテーマを決めて主催するコンペでそれにビデオ応募することができるものです。現在進行中のものでは、雑誌AlwaysOn主催のクリーンテクノロジー、 Pequot Ventures主催のビデオゲーム等のコンペがあります。テーマと仕組みがしっかりあれば、それなりに利用価値もあるかもしれないですね。

そして、このVator.tvはもしかしたら機能する可能性もあります。というのは、背後の人々が中々の顔ぶれだからです。先に述べたCEOがネット業界そしてVCコミュニティにかなり深いネットワークを持っていること、そしてそれを反映するかのように、PayPalファウンダーでVCのPeter Thiel、MySpace前会長のRichard Rosenblatt、そして以前GoogleのAdSenseを担当していたGeorges Harikなどがエンジェルとして既にバックアップしているんですね。こうしたネットワークを駆使して良質なユーザー及びコンテンツを集め、経験ある関係者が頭と力をあわせれば、上手くいくかもしれません。まあもちろん、大失敗もありですけどね。

さて、どうなることやら。ご興味のある方は自社のピッチビデオを投稿してみては如何でしょうか。
今日はこんなとこで。ではまた。

P.S. あ、お知らせなのですが、8月27日の週に東京に行きます。せっかくだから会ってやろうかという方、会うべき人をご紹介してくださる方、もしいらっしゃったら、お手数ですがメール(techventurebusiness at yahoo dot co dot jp)にてご連絡いただけますか。宜しくお願いします。