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どのベンチャーで働くべきか

どうも。先週末から暖かい日々が続いております。そろそろ寒さの峠は越した…なら良いのですが。

さて、将来起業をするつもりだ、自分は起業向きではないが大企業向きでもない、面白いことをやりたい等々、ベンチャー企業で現在働いている方も今後働きたい方も多くいらっしゃるとことと思います。では、どのベンチャーで働くか、というのが今日の話です。

起業から数年経って、ある程度結果を出し成長しているベンチャーであれば、ある程度の判断材料があるかと思いますが、出来立てホヤホヤのベンチャーに初期メンバーとして加わる場合はどうか?特にここ数年のように、Web2.0ベンチャーがバブリーに増えているような状況では、似たようなアイディアも含めベンチャーが毎日沢山あちこちで生まれていて、どれがイケそうなのか判断するのが難しい。

先日エンジェル投資をうけたばかりのPath101の創業者で、元VCのCharlie O’Donnellが、この点についての考えを、引き手あまたのエンジニアを対象に記していたので、取り上げて見たいと思います。(彼によると、近頃はLinkedInなどでPHPやAJAXがレジュメのキーワードにあるだけで面識のないベンチャーやリクルーターなどからお呼びがかかる、というほどの売り手市場だそうですが、エンジニアの皆様、そうなんですか?)

これだけ機会があると、”interesting technical challenges and things I’d like to work on”(技術的に興味深いものでやりがいがある)という観点で絞り込んでも、まだ絞りきれないとし、次の5つを考慮点として挙げています。(以下キーフレーズの引用+内容要旨の意訳)

1. Is this a viable concern? In other words, is this company going to be around in a year?
非常にクールなアイディアに見えても、何がしかのお金が入ってこないと想定した場合、そのベンチャーはどの位の期間、生き延びられるのか?プロダクトやサービスを開発してから資金調達をすればいい、と簡単に考えてはいけない。VCやエンジェルは「面白いねー」なんて言うことも多いが、実際彼らから資金を調達できる可能性はすごく小さいのだ。創業者やエンジェルやその他から何がしかの資金が調達できていなければ、避けるべし。

2. What are they willing to give you?
ビジネスサイド、技術サイド、それぞれが貢献して成り立っているのが組織だ。ビジネス側の人が自分のアイディアや経験をもとに起業した故に自分の貢献度を過大評価し、ごく僅かな株式しかエンジニアにオファーしないようなベンチャーは避けるべし。

3. ON THE OTHER HAND, don’t underestimate the value of relevant experience either.
その業界での経験が全くないエンジニア数人のチームでも、開発してすぐに競合に売却するという目的ならば良いかもしれないが、市場にかなりのインパクトを与えるプレーヤーになり人々の行動を変革するような大きなことを目的としているならば、業界での経験も人脈もあるメンバーが必要だ。技術や製品があるだけではビジネスにはならない。

4. Is the market big enough?
そのベンチャーが成功するためには多くの人が今までにした事がないことをする必要があるのか?コンピューターサイエンスの学位を持たない人でそのビジョンを理解できる人がいるか?テクニカルではない友人10人に意見を聞いてみるべし。

5. And finally… how dedicated is the team to this idea?
既存チームメンバーの人生においてそのベンチャーがどれ程重要なものか? 創業者が暇な時にふと考えた思いつきのアイディアなのか、今までやってきたことの集大成のアイディアなのか? 「創業者がどのくらいそのベンチャーに懸けているか」なんて大げさだと思うかもしれないが、成果が中々見られず資金も底をついているなんて時には、犠牲も惜しまない何が何でもという強い情熱が必要だったりするものだ。

如何でしょうか?それぞれ、確かに、という感じはするのですが、結局は自分が何を求めているのかによると思います。「数年がむしゃらにやってビッグになる!」ということを求めているならば、上記のような基準で勝ち馬を見つける必要があると思いますが、「結局どのベンチャーが上手くいくかなんて一流の VCでも分からないのだから、自分にとってやりがいがありスキルを延ばせる可能性が何がしかあるところで働く」という場合には、それ程ビジネスの成長性の重要度は高くないのかもしれません。(潰れた場合はまたすぐ就職先を見つける必要には迫られますが) 私自身が今何かを選ぶとしたら、自分がそのビジョンに強く共感できるか、というのが重要なポイントかなと思います。

どの目的の場合にも考慮すべきだと私が思うのは、誰とチームを組むかということです。長期的にその人を知っていない限り、長所短所の隅々まで分かり得ないのは当然ですが、短期的にであれ学べる何かがあるとか尊敬できるとか、そういった部分がないと難しいように思います。ベンチャー自体が上手くいかないことになったとしても、そこで出会えたチームはその後の宝になることもありますし、何しろ、合わない人と小さい組織で働くのは辛いし建設的ではないですからね。

皆様はどう決断されますか?

それでは今日はこの辺で。ではまた。

SNSがらみのM&A – Visible Path

どうも。今日は今朝発表されたM&Aの話をちょこっと。

企業データを提供するHoover’sが、エンタープライズ用のいわばSNSを提供するベンチャー、Visible Path を買収したというものです。以前からこの2社は協業しており、お互いのニーズが見合って今回の運びとなった模様。

このVisible Path、通常思い浮かべるSNSと一線を画しています。まず、LinkedInのようなサービスがビジネスパーソン仕様の「まじめ版」SNSであるのに対して、Visible Pathは仕事、特に営業に直結するためのビジネスツールとしてデザインされていること。そして、その人的ネットワークを何次隔たっているかという距離に加え、「繋がりの強さ」で表していることです。

この繋がりの強さをどう認識するかというと、例えば、アウトルックでのメール送受信をスキャン、モニターして、どれだけの頻度で連絡を取り合っているか、コミュニケーションが双方向的か等々を見るわけです。自分と知り合いの繋がりの強さは、こうアルゴリズムで機械的に行わなくても、大体分かっているのでそれ程面白みはないのですが、もう1次隔たっているCさんに誰かの紹介を通じてコンタクトしようと思った場合、結構役に立ちそうです。というのも自分の知り合いでCさんを知っている、AさんとBさんのうち、どちらがCさんとより親しいかが分かるので、目的地までの最適ルートが分かるということなんですね。まあ、全てのコミュニケーションがモニターできるわけではないので(例えば自宅から電話したとか)、正確とは言えないですが、なかなか面白いと思います。

Hoover’sは私もよく利用しますが、企業の管理職リストを提供するだけでなく、ユーザーのコンタクトネットワーク情報を取り込むことで、ユーザーがその目的の人物と知り合うための最適ルートを表示できるというのは、かなり良い付加価値だと思います。買収の条件などは公表されていませんが、両社のフィットという面では評価できるのはないでしょうか。

ネット関連ではコンシューマー向けのサービスで流行ったものが、エンタープライズ用に取り込まれていくという、「逆」パターンが言われてから久しく、Enterprise2.0というのも何だかな、という感じではありますが、今回のM&Aはそれらの1ケースとして見ても良いのではないかと思います。

実は、昨年、このVisible Pathの見込み客セミナーのようなイベントに呼んで頂いたことがあるのですが、参加者の殆どは企業のITや人事の「スーツ」な方々で、SNSやその他 Web2.0的なものに対して一生懸命理解しようという意気込みと、セキュリティーや生産性に悪影響を及ぼさず、どのように良いとこ取りができるかというのを真剣に探ろうとされているのが、かなり印象的でした。この手のソリューションをエンタープライズ向けに提供するためには、要件を設計自体から考慮する点に加えて、こうした布教努力が結構必要なのかもしれません。

短いですが、今日はこの辺で。ではまた。