•
どうも。今日は交渉の話です。
交渉というのは企業間の契約や年俸等の大事ではなくても、実は日々の生活の中にも結構あるものです。そのように認識しないものの、「お皿洗うからゴミ出してきて」というのも交渉の一つですし、我々の生活は交渉の積み重ねと言えるかも知れません。それなのに、交渉の仕方については学校教育で教えてくれるわけでもなく(少なくとも私は習ったことはありません)我々の多くは、知識も技術も不足しているのかもしれません。もったいないですよね。
細かい交渉の技術はさておき、良い条件を引き出すために一番効果的なことは何かと言えば、いつでも自分から交渉を打ち切れる状況でいるということだと思います。これは覚悟とかハッタリとかではなくて(時には必要ですが)、常に他の選択肢を用意しておくということです。
例えばVCから資金調達する際に、バリュエーションや役員構成、株主比率等において最適な条件を得るためにはどうするか?
複数のVCと同時に交渉して其々の条件を引き出しつつ、そのVC達がベストオファーを出すべく競争するように促すのです。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、余りにも多くの場合、起業家は一社とのみ話を進めて、頓挫したら別の一社と新たに話を進める、というシリアルなプロセスを取りがちだという現状があります。一人で何役もこなす創業者が、日々の業務に奔走しながら資金調達することが多いので、時間的にも制約があり難しくはあるのですが、交渉を優位に進めるには、一時期にできるだけ専念して複数の関係者をマネージする必要があります。
これはM&Aの場合も同様です。自社を売却するにあたり、一社とだけ交渉していては良い条件を引き出すのは非常に困難です。「他社と話していることがA社に知れたら、A社が逃げてしまうのではないか」という心配を時々耳にしますが、そんなことはありません。もちろんA社は大企業vs.ベンチャーによくある立場の差に基づいたその恐怖心を煽るべく仕掛けてきますが、それは交渉の戦術であって、当社がA社の欲するものをもっている場合、A社が離れてしまうことはありません。
ベンチャー企業の売却における、こうしたパラレルな交渉の必要性については他にも様々な要素がありますので、後日また触れたいと思います。
今日はMLBのプレーオフを見ていて遅くなってしまったので、短くこんなとこで。
ではまた。
•
どうも。しばらく更新できず、すみませんでした。数年ぶりの夏の東京を満喫してきました。当地で会って頂いた方々、有難うございました。今後とも宜しくお願い致します。
さて、今日はCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の話を軽く。しばらく前に、もしかしたらグーグルが今後もっとインキュベーターっぽいことするんじゃないか、と書きましたが、ホントにやりましたね。BusinessWeekの記事によると、一口$500K程の資金をCVC的な形で投資しているそうです。目的としては、買収候補の青田買い、そしてインドや中国など新興市場へのリーチを広げるためのようです。
By staking startups, Google hopes to avoid paying the higher prices companies can fetch once they take funding from traditional VCs. It’s possible that some of its investments are conditioned on Google having first-acquisition rights should a target opt to sell, some VCs speculate. Google didn’t respond to calls requesting comment.
VCから投資を受けたベンチャーは買収の際に割高になるので、早いうちから入り込むとか、投資の条件として以前に触れた、First Right of Refusal とかFirst Right of Offerを課している場合もあるとか言われていますが、実際はどうでしょうね。私は、そういう点よりもむしろ、この記事で出ているようにインドのファンドに投資する事などを通じて新興国へのリーチを広げるための意味合いが大きかったり、先日のガジェットのように、初期の段階からgoogleの技術にピッタリ沿った形で見込みのあるプロダクトが開発されるように仕向ける、という意味合いが大きい気がします。ベンチャー企業をいかに安く買収するかということはあんまり頭にないと思うのですが、どうでしょう。
近頃CVCの試みは全体としてかなり復活しているようです。今年前半のCVCによる投資は2001年以降で最高水準に達しており、390社に対して総額$1.3 billionだそうです。この記事ではCVCが復活していることの理由として、テクノロジー企業のR&D支出が増加していること、中国・インド・ロシア等の前途有望なベンチャーを見出す必要があること、そして株主側が長期的な価値を創造するために、ベンチャー投資にありがちな四半期ごとの浮き沈みに対して寛容になってきていること、を挙げています。
以前も触れましたが、CVCといっても、各社目的や方針がかなり異なりますので、一概には言えないと思いますが、こういう投資の波は周期的にやってくるものかもしれませんね。CVCの中でも大規模なインテルやモトローラ等の各社の動向について興味がある方はこちらをどうぞ。CVCがそもそもどんなものかに興味がある方は、拙著のこちらをどうぞ。
さて、このグーグルの動きに対してVCはどうかというと、金余りの中で益々投資する先が限られて大変という危機感をもたれている方もいるようです。どの分野でもグーグルが潜在的に競合となる可能性があると恐怖感を抱く場合があるようですが、この投資の件に関しては、グーグルも他のCVCと変わらず、通常のVCとはモデルが異なるので、心配するほどのことではないと私は思います。
それよりもむしろ、早くからグーグルの投資を受けることで囲い込まれた形になって、そのままグーグルに安く買収されるか、グーグルが買収への興味を示さなかった場合に行き先がなくなる、という状況に陥るベンチャー企業が出てくる可能性があることのほうが心配です。自社の売却をする際には株主に対するリターンという金銭的なことだけでなく、自社の成長の第二幕として最適な相手を探すことが重要ですが、納得の行く結果を得るには、複数の企業と同時に話し合いをすることが極めて重要です。交渉において、はじめから立場に差のあるもの同士が一対一で話し合うのは、どうあがいても立場の弱い側(この場合ベンチャー企業)にとって不利なのです。
資金は同じ額面でもそれぞれコストが異なります。投資をうける場合には色々な意味でのコストを熟考してからにしましょうね。
今日はこんなとこで。ではまた。