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どうも。今日は今朝発表されたM&Aの話をちょこっと。
企業データを提供するHoover’sが、エンタープライズ用のいわばSNSを提供するベンチャー、Visible Path を買収したというものです。以前からこの2社は協業しており、お互いのニーズが見合って今回の運びとなった模様。
このVisible Path、通常思い浮かべるSNSと一線を画しています。まず、LinkedInのようなサービスがビジネスパーソン仕様の「まじめ版」SNSであるのに対して、Visible Pathは仕事、特に営業に直結するためのビジネスツールとしてデザインされていること。そして、その人的ネットワークを何次隔たっているかという距離に加え、「繋がりの強さ」で表していることです。
この繋がりの強さをどう認識するかというと、例えば、アウトルックでのメール送受信をスキャン、モニターして、どれだけの頻度で連絡を取り合っているか、コミュニケーションが双方向的か等々を見るわけです。自分と知り合いの繋がりの強さは、こうアルゴリズムで機械的に行わなくても、大体分かっているのでそれ程面白みはないのですが、もう1次隔たっているCさんに誰かの紹介を通じてコンタクトしようと思った場合、結構役に立ちそうです。というのも自分の知り合いでCさんを知っている、AさんとBさんのうち、どちらがCさんとより親しいかが分かるので、目的地までの最適ルートが分かるということなんですね。まあ、全てのコミュニケーションがモニターできるわけではないので(例えば自宅から電話したとか)、正確とは言えないですが、なかなか面白いと思います。
Hoover’sは私もよく利用しますが、企業の管理職リストを提供するだけでなく、ユーザーのコンタクトネットワーク情報を取り込むことで、ユーザーがその目的の人物と知り合うための最適ルートを表示できるというのは、かなり良い付加価値だと思います。買収の条件などは公表されていませんが、両社のフィットという面では評価できるのはないでしょうか。
ネット関連ではコンシューマー向けのサービスで流行ったものが、エンタープライズ用に取り込まれていくという、「逆」パターンが言われてから久しく、Enterprise2.0というのも何だかな、という感じではありますが、今回のM&Aはそれらの1ケースとして見ても良いのではないかと思います。
実は、昨年、このVisible Pathの見込み客セミナーのようなイベントに呼んで頂いたことがあるのですが、参加者の殆どは企業のITや人事の「スーツ」な方々で、SNSやその他 Web2.0的なものに対して一生懸命理解しようという意気込みと、セキュリティーや生産性に悪影響を及ぼさず、どのように良いとこ取りができるかというのを真剣に探ろうとされているのが、かなり印象的でした。この手のソリューションをエンタープライズ向けに提供するためには、要件を設計自体から考慮する点に加えて、こうした布教努力が結構必要なのかもしれません。
短いですが、今日はこの辺で。ではまた。
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どうも。前回のエントリーにはすごい数のアクセス及びブクマを頂きまして、かなり驚きました。ネットワーク効果の大きさを改めて認識した次第です。初めて立ち寄られた方、ぜひまたお越し下さいな。今年はぜひとも、α、β…θブロガーくらいを狙っていきたいものです。
さて、今日はつい先日の、SunによるMySQL買収に関する話を。SunがLAMPのMを$1billionで、ということですが、このM&Aは幾つかの重要な意味をもっているように思います。
一つ目は、Sunのこれからの方向性としてのもの。過去何年かにわたって混迷を続けてきたSunですが、この買収によってオープンソースソフトウェアの一大支持者、クラウドコンピューティングの覇者としての脱皮を図るつもりのようです。これはある意味ブランディングでもあり、MySQLから得られる収入と新たな顧客群、或いはDB進出も重要ですが、それ以上に、周りから再度「クール」だと思われることの意義は大きいです。
実際、SunはこのところWeb2.0系のネットベンチャーにもかなりアプローチしていて、私が参加しているSF Tech Meetupでも数ヶ月前からイベントスポンサーになり、ベンチャー支援プログラム(Sun Startup Essentials program)の宣伝や無料プレゼントをしたり、と地道にアピールしています。Solarisをプッシュするのかとか、PostgreSQLはどうなるんだ、とかの疑問もありますが、Jonathan Schwartz下のSunは、どうやらアイデンティティを再構築していけるかもしれないという気配がしています。
そして二つ目は、やはりオープンソースが確実に市民権を得てきているということ。これは凄いことですね。今後も更に商業的なオープンソースは増え、エンタープライズ仕様、更にミッションクリティカルなシステムにも取り入れられてくると思われます。そうなるとこれから益々ありそうなのが、、、
そう、三つ目、オープンソース企業間、或いは大きなIT企業によるオープンソース企業のM&Aの増加です。451グループによると、オープンソースがらみのM&Aは2003年には6件、2004年には3件、2005年には15件、2006年には22件あり、そして2007年には後半にぐんぐん伸びて30件に達しました。そしてこのMySQLですから、かなり旬な感じです。MySQLはIPOを予定して準備していましたし、他のオープンソース数社も今年のIPO候補として挙がっているのですが、今回の件で波はM&Aに向かっているように思われます。
但し、コマーシャルオープンソースは新しい概念ですから、従来のM&Aとは異なる要素が多くあります。通常のM&Aでは支配権ということが大きなポイントですが、オープンソースの場合はコアの技術がパブリックですから、何をモチベーションにどれだけの対価を払うかというのは中々難問です。そして買収する会社が買収後にそのオープン性をどのように取り扱っていくのかというのも、権利や、営利、モラルの観点からも一筋縄ではいきません。また、数多くおこっているようにオープンソース企業同士のM&A(コンソリデーション)ならば分かりやすいのですが、一般のIT企業が買収する場合にはカルチャーギャップの問題も大きいはずです。最悪の場合、買収した矢先に殆どの社員が「そんな邪悪なのはイヤだ」と離職してしまう可能性もあります。この辺りは今後も暫らく手探りが続くのだと思われます。
さて、上記で対価に触れましたが、ちょっとバリュエーションについて見てみたいと思います。MySQLの過去12ヶ月の売上げは一説には$50M弱程。買収額が$1billionですから、20倍ですね。データベースという観点から比較し得るものが近頃ないので、他のオープンソースを見てみます。 RedHatによるJBossの買収では過去12ヶ月の売上げ倍率は13倍。CitrixによるXenSourceの買収ではなんと500倍、Yahoo によるZimbraの買収ではこれまた大きく117倍….。
総じて一般のIT企業よりは高めのようですが、差はかなりありますね。ベンチャー企業のバリュエーションは定石が当てはまらず、結局はM& Aプロセスにおける仮想市場の原理が現実だと私は常々思っていますが、オープンソースの場合は先程述べたような手探り状態のため余計にばらつきがあるように感じます。
とまあ、色々あるわけですが、このオープンソース分野、私は興味津々です。M&Aに関しても今後可能性、実現性をより深く検討したいと思っていて今ちょっと勉強中です。メジャーになりつつあるもの、かなり将来性のあるオープンソースプロジェクトや企業、またオープンソースに関して良い資料などありましたら、ぜひ教えて下さい。
では今日はこの辺で。皆様、良い週末を。