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エグジットが危ない!

どうも。あっという間に下半期突入ですね。

そんな節目のニュースで大きかったのが、昨日閉じた第2四半期において、VCマネーの入ったベンチャー企業のIPOが一件も無かったというものです。この記事によると、そんなことは30年ぶりらしく、業界団体のNVCAは、これは警告であり危機的状況だという強い表現をしています。

彼らのサーベイによると、IPOが枯渇していることの要因として以下が順に挙げられているそうです。

1. Skittish investors
2. Credit crunch
3. SOX

で、このような状況は投資家にも起業家にとっても良くないので、これから民衆・政府に対して働きかけをしていくと息巻いています。業界団体なのでこういうスタンスは当然かもしれませんが、どうなんでしょう、そんなに危機的でベンチャー企業のIPOが「不当に」妨げられている部分があるのでしょうか。

今は株式市場の状況が非常に悪いですから、IPOする準備をしていてもタイミングを先延ばしにするということは致し方ないので、たまたま今回が0であっただけかもしれません。(実際そのような企業は現在22社あるそうです) そして、SOXに関しては基準の問題で検討の余地があるかもしれませんが、その事自体がIPOを妨げているというのは、おかしい議論のような気がします。(エグジットしたい投資家の気持ちは分からなくは無いですが、公募するわけですから…)

で、実はもっと深刻だと思うのは、ではM&Aが増えているかというとその逆で、M&Aの件数は昨年同期比で42%減少していることです。景気が悪くなり先行きが不透明なことから、大企業が出費を控えているというのが一番の要因ですが、要はIPOだけでなくエグジットそのものが厳しい状況にあるということです。

でもこればかりは景気の影響で仕方が無いところもあるので、ベンチャーの側では、常に選択肢を見ながら、キャッシュをしっかり持っておくしかないですね。M&Aのサービスをしている私としても、何とか食いっぱぐれないようにしないと…

とまあ、こんな暗いデータではあるのですが、実は考慮に入っていないことも幾つかあります。

一つは、これはVCマネーの入ったベンチャーについての数字なので、最近の「必要資金の少なさ」傾向に沿って、エンジェル投資或いは自己資金だけである程度成長するか、またはかなりの早期に買収されたベンチャーは結構あるかもしれないということ。

二つ目は、Q2において被買収企業の平均「年齢」は6.9年だったのですが、ということはバブルがはじけてから回復するまでに創業された企業も多いわけです。例えば2001年に投資をうけたベンチャー数はかなり少ないですから、そもそも母集団として的確なベンチャー企業数が少ないという可能性もあります。

これだけの「年齢」だと、VCの側からすればかなりのエグジット圧力がかかるので、この景気状況はかなり歯がゆいところですね。 個人の資産形成のためにも、起業家精神保護のためにも、ぜひぜひ、市場が回復することを祈りましょう。

では、今日はこの辺で。

企業乗取り等のちょっと怖い世界

どうも。真夏日のここサンフランシスコですが、今日はヤフーとマイクロソフトの話にまた新たな熱い展開がありましたね。

あの、物言う株主、またはコーポレイトレイダー(corporate raider: 乗取り屋)として知られるカール・アイカーン氏の登場です。現取締役の決断は不合理だとして、マイクロソフトとの合併交渉を再開することを求め、取締役全員の入れ替えを提案し委任状争奪戦に乗り出すと表明しました。

カール・アイカーン氏、もう70歳を超えているはずですが、ほんとにどこにでも出てきますね。精力的極まりない。最近ではモトローラ、BEA、過去にはタイムワーナーなど関わった企業のリストは膨大なものになります。

近頃は日本でもライブドア、村上ファンドがらみで「物言う株主」の存在が広く知られるようになりましたし、敵対的M&Aも増えるなどして委任状争奪戦という言葉も馴染みのあるものになってきたと思います。こういう事は在る意味、派手でドラマのような面白さがあるために目立ちますので、これが M&Aの世界なのかと思ってしまっている人が結構いるようにも感じますが、決してそうではありません。多くのM&Aは友好的ですし、関係者のミクロのドラマは必ずありますが、もっと穏便です。

とはいえ、こういう「ハゲタカ」的な世界があるのも確かですし、この機に、カール・アイカーンってどんな人、乗っ取りってどうやるの、というような事を感覚的に把握したいという方の為に、映画をご紹介します。

それは今から20年以上前に出た「ウォール街」という映画で、オリバー・ストーン監督、マイケル・ダグラス主演のものです。随分前に見た事があるという方もいらっしゃると思いますが、そういう背景を知るという目的で見ると今更ながらの作品でも非常に楽しめると思います。私も普段はこういうジャンルは好まないのですが、アメリカ社会、特に企業活動や政治への理解を深める視点で見ると学ぶところがあるものが多いです。

さてこの映画ですが、主人公はGordon Gekkoというコーポレイトレイダーでして、このカール・アイカーン氏、そして他のウォールストリートの著名人(Ivan Boesky、J. Tomlinson Hill、 Michael Milken等)をモデルにしたと言われています。アメリカでは一時代を反映する映画として非常に有名ですし、Gordon Gekkoというキャラクター名を知らない人はいないというくらい、文化的な象徴であったりします。とても賢くやり手だけれども冷徹で拝金主義、とまぁ一言で言えば悪役です。

日本人の多くはマーティン・シーンが演じるお父さん役の倫理観に共感すると思いますし、オリバー・ストーン監督も行き過ぎた資本主義に反対する思いを込めて作ったのですが、皮肉なことに、アメリカではGordon Gekkoに憧れてウォールストリートでのキャリアを目指す人が続出し、ヒーローとしての扱いを受けてきたことも確かです。その辺もアメリカならではだな、と思います。

幾つか有名な台詞がありますが、その中でも実はとても深いなと思うのがこれ。Greedという言葉がきつ過ぎるかもしれませんが、日本社会が元気になるには必要な要素かもしれない、と思ったりします。

“Greed, for lack of a better word, is good. Greed is right. Greed works. Greed clarifies, cuts through, and captures the essence of the evolutionary spirit. Greed, in all of its forms, greed for life, for money, for love, knowledge has marked the upward surge of mankind.”

悪役なのですが、非常に魅力的な部分もあり、感情では悪だけれども、資本主義のルールに則ればそう簡単に悪とも言えない、といろいろ考えさせてくれるキャラクターです。それが正しいとしてウォールストリートに邁進するつもりにはなりませんが。皆様も色々な視点から見てみて下さい。

最後にチラ見せで一部を張っておきます。なお、この映画の続編が製作中との噂です。監督は異なりますが、マイケル・ダグラスが引き続きGordon Gekkoを演じ、今度はヘッジファンドの設定だとか。今年後半か来年公開予定とのこと。中々楽しみです。

今日はこの辺で。ではまた。