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資金調達の心得

どうも。このところ忙しいのに加えてオリンピックでついつい間があいてしまっております。今週はお盆休みの方も多いかもしれませんね。

さてさて、今日は資金調達の、どちらかというと心構えみたいな話です。

先日Paul GrahamのA Fundraising Survival Guide という大変ためになるエッセイがアップされていたので、簡潔に触れたいと思います。プレゼンだとかの技術的な話ではなくてプロセスの不完全さと人間心理のダイナミックさについて非常に良く書かれていますので、興味のある方はちょっと長いですがぜひ原文を読んでみて下さい。

ベンチャー企業が失敗する最大の原因は、人が欲する製品やサービスを創れないことだというのは自明だと思いますが、2番目に大きな原因は資金が調達できないことだというのはちょっと以外に思う人もいるかもしれません。業種や市場によって違いはあるかとは思いますが、確かに最初の或いは後のラウンドで投資が得られずに倒れるケースは本当に多いものです。資金調達はとにかく大変だということを認識するだけでも、その後その事実に直面した時の驚きや落胆、そして諦めに至ることを防げるのではないかと彼は言っています。

投資家から資金調達をする代わりに、コンサルティングなどのサービスを提供することでキャッシュを稼ぐ、というのはよくとられる手段ではありますが、デメリットもあります。ここでは触れませんが、その点を検討している人は原文に詳しく書かれていますので、ぜひ参照して下さい。

以下ポイントの意訳・超要約です。

1. Have low expectations.
資金調達がベンチャーをだめにする大きな要因だというのは、それが落胆やモラルの低下を引き起こすからである。これはM&Aのケースも同様だが、うまく行っているように感じていても、殆どの場合は失敗に終わるということを肝に銘じて、期待しすぎないことが重要。

2. Keep working on your startup.
資金調達は投資家と実際に会う時間だけでなく、それに要する準備、その後に思い返して考えてしまうことなど諸々、かなりの時間を消耗する。できればファウンダーの一人を資金調達の専門にして開発に支障をきたさないようにすること。資金調達は予想よりも長くかかるのが常で、その期間に製品開発が滞ることが非常に多く見られるが、これは投資案件としての魅力にも影響するので危険である。

3. Be conservative.
タームの良し悪しにそれ程とらわれずに、だれかが資金を提供してくれるというならば、受け取るべき。いつ投資家の気が変わるかも経済の環境が変わるかもわからないのだから、取れるときに取るべし。

4. Be flexible.
VCはいつも必要資金額を聞くけれども、ミニマムを敢えて言わないほうが良い。むしろ例えば50kならばどういうことが可能で、200Kならば、或いは2Mならどうかということを説明するほうがよい。期待するより低い資金しか得られないとしても、誰かが既に投資したという事実が他の投資家の興味を引くことも多いので、そこは柔軟にかまえること。

5. Be independent.
生活費をまかなえるほどの収入があることは重要。ビッグになるには投資が必要だが、当面なくても死なない。それは投資家の目にも魅力的に映る。投資家にとってベンチャーの助けになれることは喜ばしいけれども、自分達の助けが無くては死んでしまうようなベンチャーは好まないものだ。

6. Don’t take rejection personally.
投資を断られた場合、その理由は真摯に受け止め次に活かすべきだが、必要以上に自分達がダメだと思い込んではいけない。

7. Be able to downshift into consulting (if appropriate)
コンサルティングをすることで日銭を稼ぐというのはデメリットもあるが、死ぬよりはましである。いづれはプロダクトを出すということは見失わないようにすること。

8. Avoid inexperienced investors.
経験の乏しい投資家の場合、決断に非常に時間が掛かるし、タグを組む弁護士も経験が乏しく、まるで大企業向けのような無駄なタームが大量に盛り込まれたものになって、ムダに時間がかかったりする。そうした場合は自分でプロセスをまわしたりドラフトを用意したりすること。

9. Know where you stand.
投資家はなかなか意見を表明しないけれども、実際のところはどうなのかということをよく認識すること。お金をだしてもらえなさそうな投資家に注力してもしょうがない。

どうでしょう。先程も書いたように、要点だけでなくその背後の考えかたも理解するためには、原文を参照することをお薦めします。一点だけかなり面白いと思ったことをたしておくと、5番目の生活費をまかなえるほどの収入があるという状態を、彼のY Combinatorでは”ramen profitable”と称しているそうです。かなり前にラーメンで生き延びろという話を書きましたが、この表現はなかなか良いですね。

長くなりましたので今日はこの辺で。来週は休暇でメキシコに行っているのでお休みします。ではまた。

最初の資金をくれる(かもしれない)VCのリスト

どうも。今日は久しぶりに資金調達に関する話です。

特にネット系のベンチャーにおいては必要資金がかなり少なくなり、VCの側でも構造変化が迫られている、ということについて過去に何度か触れました。VCごとにファンドサイズ、スタイル、要員等の様々な違いがあるので、この新しい状況に対応する戦略は異なりますが、いくつかはシードやかなり小額のシリーズA投資を幅広くするなどの積極策にでています。

今日はそのような投資を積極的に行っているVCについて記している記事がありましたので紹介したいと思います。これからアメリカで資金調達をする方々はぜひ参考にしてみて下さい。アメリカでのVCの数は非常に多いですし、其々のファンドサイズ、期間、フォーカスしているエリアなどのマッチングもありますから、幅広くかつ個別に検討する必要がありますが、まずはスターティングポイントということで。

元記事には各VCのスタンスや特徴などについてのコメントもありますので詳しくはそちらを見ていただくとして、ここでは要点をリストの形でまとめることにします。なお、投資先企業は各社他にもたくさんありますが、記事内で触れられているもののみ記載しています。

Accel Partners
拠点:Palo Alto (シリコンバレー)
これまでのネットベンチャー投資例:RealNetworks, Facebook
名門。もとよりアーリーステージには投資してきたが、3年前にコンシューマー向けネットサービスやオンラインゲーム等についてシード的な投資を積極的に行うプログラムを立ち上げた。平行してシリーズDなどのレイトステージの案件にも投資している。

Bessemer Venture Partners
拠点:Menlo Park(シリコンバレー)、New York、その他アジア等
これまでのネットベンチャー投資例:Hotjobs.com, eToys, Skype, Zopa
老舗。幅広いジャンルに投資しており、その一環としてコンシューマー向けネットサービスにも選択的に投資。海外案件に積極的で、昨夏時点でインドにおける投資は10億ドルに達している。

Charles River Ventures
拠点:Waltham(ボストン近郊)、Menlo Park(シリコンバレー)
これまでのネットベンチャー投資例:BuddyTV, Vlingo, Lookery
東海岸名門。ローンの形でシード資金を提供するQuickStartプログラムを2006年に開始。[詳細はVCがエンジェルになる?を参照のこと]

First Round Capital
拠点:San Francisco
これまでのネットベンチャー投資例:1-800-FREE411, MyYearbook.com, Dayak
2004年の創業以来60社ほどに投資。年間15-20の投資を目指しており、平均投資額は$400K-800K。パワーポイント上のアイディアの段階でも投資している。

Flybridge Capital Partners (旧 IDG Ventures Atlantic)
拠点:Boston
これまでのネットベンチャー投資例:Blackwave, Transpera
特に動画系に注目している。但し非常に込み合っている状況なので、勝ち馬が見えてきてから大きく乗ることも考えている。

Greycroft LLC
拠点:New York, Los Angeles
これまでのネットベンチャー投資例:The Huffington Post, paidContent.org, WideOrbit, Collective Media, Buzzd
2006年創業。デジタルメディアベンチャーに対してスタートアップ時から投資。初期投資は$500K-$3Mで、段階ごとに追加投資する。

Madrona Venture Group
拠点:Seattle
これまでのネットベンチャー投資例:Farecast, Classmates Online
大学でのリサーチペーパーなどアイディア段階も含め初期段階の投資に強み。競合は他のVCよりもむしろ自費でやろうとするベンチャー企業、とのこと。

Milestone Venture Partners
拠点:New York
これまでのネットベンチャー投資例:TargetSpot, M5 Networks, Outside.in, GenomeQuest
メディア、マーケティング、及び金融・医療業界向けのITサービス等に投資。初期投資は$1M-1.5Mくらいで、追加投資としても同程度を準備。年間4-5件。売上げが既にあるベンチャーで、資本効率がよく黒字化までに$5M程度しかかからないような企業が対象。

Mohr Davidow Ventures
拠点:Menlo Park(シリコンバレー)
これまでのネットベンチャー投資例:Hi5, PBwiki
名門。創業してからの期間や規模よりも、どのくらいスケールする可能性があるかということを見て、相対的に「アーリーステージ」と捉えて投資している。

Sequoia Capital
拠点:Menlo Park(シリコンバレー)
これまでのネットベンチャー投資例:Yahoo, Apple, Oracle, Cisco, PayPal, Google, YouTube, SearchMe, FunnyOrDie
名門。他社に先駆けて経験の乏しい未来の大物起業家に投資してきたアーリーステージ投資の代名詞。ハイリスクの投資を好む。

SoftTech VC
拠点:Palo Alto(シリコンバレー)
これまでのネットベンチャー投資例:Truveo, Kaboodle
最初は個人としてのエンジェル投資であったが、4年間にWeb2.0ベンチャー23社に投資し、その内5社から既にエグジットし、ネットベンチャーのシード投資の雄に躍り出た。現在は総額$12Mのシードファンドを持つ。

Spark Capital
拠点:Boston
これまでのネットベンチャー投資例:KickApps, SendMe, Tumblr
2005年創業。シードでは$300Kから、レイトステージへは$20Mまでと幅広く投資。

Union Square Ventures
拠点:New York
これまでのネットベンチャー投資例:Etsy, Tumblr, Tacoda, Feedburner, del.icio.us, AdaptiveBlue, Oddcast, Twitter
アーリーステージのウェブサービスベンチャーに特化。はじめての起業家にも数多く投資。今後は、成長の糊代があるレイトステージのウェブサービスにも投資していく予定。

VCに関しては各社のウェブサイトだけでなく、様々なレビューサイトなどからも情報を得ることができますが、簡単に住み分けを把握できるような日本語の資料があると便利そうですね。ハイレベルな特徴と、投資するセクター、段階、規模等がさくっとわかると良いと思います。VCの皆様、或いは既に様々な VC巡りをされた起業家の方々、ボランティアで作成してみませんか?

それでは今日はこの辺で。