Sequoiaによるベンチャー成功法則
このブログでも何度か触れていますが、最近はシリコンバレーのVCビジネスが難しい岐路に差し掛かっていて、新規のファンドを取りやめたり新しい取り組みを始めるところも出てきています。そんな中、YouTubeの大ヒットや、その後のTopioのNetwork Applianceへの売却などで好調な一流VCのSequoia Capitalですが、近年の自社のグローバル化戦略を反映して(このTopioはイスラエルですし、他に中国やインドにも積極的です)ウェブサイトをリニューアルしたそうです。その中でShare Your Ideaと題してSequoiaの求めるベンチャーの資質、及びビジネスプランのフォーマットについて記しています。ここではその前者を取り上げて見たいと思います。
Elements of Sustainable Companiesと題したそのセクションはいわばSequoiaから見たベンチャーの成功法則みたいなものです。以下のような特徴を示すベンチャーは成功する可能性が高いとしています。
Clarity of Purpose
Summarize the company’s business on the back of a business card.
目的がはっきりしていること。名刺の裏に自社の事業を要約せよ。Large Markets
Address existing markets poised for rapid growth or change. A market on the path to a $1B potential allows for error and time for real margins to develop.
市場が大きいこと。急速な成長や変化が起こりそうな既存の市場を対象にせよ。10億ドルに成長する可能性のある市場はしっかりしたマージンが生成されるための時間や試行錯誤を許容してくれる。Rich Customers
Target customers who will move fast and pay a premium for a unique offering.
リッチな顧客層。動きが早く、ユニークなプロダクトにはプレミアムを払うことを厭わない顧客を対象とせよ。Focus
Customers will only buy a simple product with a singular value proposition.
フォーカス。顧客は一つの価値命題のみをもつシンプルなプロダクトだけを買う。Pain Killers
Pick the one thing that is of burning importance to the customer then delight them with a compelling solution.
痛み止め。顧客の差し迫ったあるニーズを捉え、説得力のあるソリューションを提供し喜ばせよ。Think Differently
Constantly challenge conventional wisdom. Take the contrarian route. Create novel solutions. Outwit the competition.
オリジナルな思考。常に一般通念にたてつき異議を唱えよ。斬新なソリューションを創造し競争相手を出し抜け。Team DNA
A company’s DNA is set in the first 90 days. All team members are the smartest or most clever in their domain. “A” level founders attract an “A” level team.
チームの(優秀な)DNA。企業のDNAは最初の90日間で決まる。チームメンバー全員がその事業エリアで最も頭が切れるか利口であるべきだ。トップレベルの創業者はトップレベルのチームを引き付ける。Agility
Stealth and speed will usually help beat-out large companies.
機敏であること。早くて忍び足なことは大企業を打ち負かすのに役立つ。Frugality
Focus spending on what’s critical. Spend only on the priorities and maximize profitability.
質素であること。重大なことに投資を集中せよ。優先事項で且つ収益性を最大化するものにのみ費やせ。Inferno
Start with only a little money. It forces discipline and focus. A huge market with customers yearning for a product developed by great engineers requires very little firepower.
猛火(になる可能性がある、勢いがあるっていうことかな?イマイチ意図が不明です)。少ない資金で始めよ。自制とフォーカスが自然とできるからだ。優秀なエンジニアによってプロダクトが開発されるのを切望しているような潜在ユーザーがたくさんいる大きな市場は火力を殆ど必要としない。
どうでしょう。大概はごもっともという感じですかね。自社がコントロールできる部分に関しては、フォーカス、スピード、真の問題を解決すること、差別化、賢い資金活用、良い人材等の重要性を挙げており、このブログでも述べてきた点ですがこれらは謂わば共通認識といって良いものだと思います。
但し、市場の大きさとか対象顧客の懐具合というマーケット関連のポイントは必ずしもベンチャーの成功要因ではないと思います。無論成功の定義にもよりますが、ここで挙げられているような規模はSequoiaに魅力のあるような大きなリターンを提供する可能性が高いものというように捉えるべきでしょう。これらのVCから投資を募るのでない限り、対象市場の大きさはさほど気にしなくても良いと私は思っています。というのもマーケットリーサーチでの数字は大概当てにならないですし、マクロすぎだったりして、実際に自社のプロダクトが届く範囲を予測しても確度はそんなに高くないことが多いですよね。それよりはむしろ、誰かが必要としている真の問題を解決することに注力すべきだと思います。
一番最初のポイント、ちょっと新鮮でした。要は名刺の裏に書けるくらいに短く的を得て事業を説明せよということですが、ネットワーキングパーティーとかその他諸々の機会でほんとにそんな名刺を配ると良いかもしれないですね。キャッチコピーとかじゃなくて「ウチはこれをやっている会社です!」と簡潔明快に書いておいてもらえると印象にも残るし、ウェブサイトくらい見てみようというモチベーションが働く気がします。事業を一文で表現するということ、結構難しいんですよね…でも非常に重要なことです。これには社内の誰もが暗記して他の人に言えるようなものを時間をかけて考えるのも良いと思います。表現の問題ではなく一文に収まらない場合、フォーカスがきちんとされてなという場合が多いので自社の方向性をちゃんと見直しましょう。
さてThanksgivingの4連休で今日はこれからボストンに行きます。七面鳥と砂糖を大量摂取して参りまする。ではまた来週。