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どうも。前回に引き続き、さらっと統計を。数値ものはブログのエントリーにしておくと備忘録にもなって良いかと。
アメリカでの今年Q1のVC投資について。 Dow Jones VentureOneとErnst & Youngの統計によると、件数は584件(昨年同期比7件減)、投資総額は $6.96 billion (昨年同期比10%増)だったそうです。 その内、ここサンフランシスコベイエリアの内訳は189件、$2 billionとのこと。
セクターではIT投資は減少。(昨年同期比で件数では8%減、投資額では16%減) 一方で大きく伸びたのが代替エネルギーや環境関連技術、及びヘルスケアのセクターとのこと。
世のためになる医療やグリーンテクノロジーに投資が回っているのは良いことですね。どこの政府にも(特にアメリカには)成育を任せて置けない分野なので、ぜひ民間投資で底上げしたいものです。
社会的な関心が向いてきたというのもありますが、Web系ベンチャーが引き続き増えていること、そしてチープ革命で特にソフトウェア系のベンチャーの資金需要が少ないこともあり、VC側が多額の投資を必要としていて長期的なR&Dを必要としているような分野を求めているという事情もあるのだと思います。
グリーンテクノロジーは新しい分野で、しかも恐らくexit向きではないので、長期的に大きくなる企業を創り育てる方向で今後暫らくは投資が進みそうな感じです。かなり前からソーラーシステム等地球に優しい方向性を志向してきた日本から、この分野で活躍するベンチャーが生まれると良いなと思っています。この分野の方、今はこちらで起業する良いタイミングのようですよ、如何でしょう。
ではまた。
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どうも。良い一週間を過ごされたでしょうか。今日は売る話からずっと溯って、資金調達の話を。
テクノロジーベンチャーにとって資金を調達する方法は色々とありますが、その中でも千差万別で外からはちょっと解りづらい、コーポレートVC(略してCVC)、つまり事業会社が一事業としてベンチャー投資を行っている場合について触れたいと思います。前回バブルがはじけて不況に陥った時に、かなりの数の事業会社がこういった事業から撤退したのですが、現在でもインテルキャピタルを筆頭に多くの一流企業がVC部隊を営んでいます。
起業家の側からすれば、そのような大企業のお墨付きを得ることは有難いものの、近すぎる業界では買収に近い形になってしまったり、その企業の競合とはビジネスができなくなるのではないかと心配したり、またかなり離れた業界では資金以外にどんな有益なサポートが得られるのか分からないで困惑してしまう、ということがあります。つまり、CVCの狙い、真のアジェンダが判りかねるという、ちょっとした不気味さを感じている起業家は多いのではないでしょうか。
そこで、本日のVentureBeatでインテルキャピタルの参謀がWorking with a corporate VC – an insider’s perspectiveという有益なエントリーを寄稿していましたので、CVCがどのようなもので、どのように付き合うべきか、ということのポイントを意訳してご紹介したいと思います。
①Why do CVCs invest? なぜ事業会社が投資するのか?
通常のVCと異なり、CVCが投資する一番の理由は戦略的な根拠からである。何らかの戦略的な理由無しに投資することは極めてまれであるが、戦略的と一言で言ってもその形は様々である。モチベーションの例としては
(a) to support a thriving ecosystem around the parent’s core products e.g. software stacks, display technologies and power innovations.
自社のコアプロダクトの生態系を繁栄させるため
(b) a proxy for inorganic growth
買収と同様に投資先が自社のビジネスの成長に寄与するように
(c) a market development tool , e.g. ‘planting the VC flag’ in new regions and geographies 新しい国や地域の市場開発のため
(d) an eyes-and-ears tool to identify and nurture emergent technologies or foster new trends or business models
新興技術にアンテナをはったり、新たなトレンドやビジネスモデルを助成するため
(e) a ‘gap-filler’ which approximates to outsourced R&D but with an end customer-centric goal
顧客の視点から自社の足りない部分を補ういわばR&Dのアウトソースとして
(f) a conjoined source of positive returns (financial in addition to strategic)
戦略的なリターンに付随した経済的なリターンの源泉として
知る範囲でCVC各社のアプローチの特徴を述べれば:
・ CiscoとCadenceは通常買収の布石として投資する
・ IBMとMicrosoftはもはや直接に投資はしておらず、VCファンドに投資をし、そのVCのポートフォリオ企業にビジネスディベロップメントのサポートを提供している
・ Samsung VenturesとMotorola Ventures は通常プロダクトグループとの何らかのビジネス上の契約を要求する
・Intel CapitalはどのようにVCやベンチャーと協働するかはフレキシブルであるが投資した企業を買収することは稀である(全体の1%程)
②How do CVCs add value? CVCは投資先にどのような付加価値を提供するか
Extended reach
グローバルなテクノロジー企業としての幅広い見識や知識を提供し得るし、またセールスやマーケティング、R&D、チャネルや顧客へのアクセスを提供できる。例えばIntel Capital Technology Days (ITDs)のようなプログラムがあり、投資先のベンチャーをインテルの顧客に紹介することで、顧客に有益なソリューションを提示し且つベンチャー企業の早く幅広い収益機会を提供することが可能である。
Consistent cash over time
通常のVCと異なりラウンドというスケジュールに基づいた投資だけでなく、理にかなった範囲で必要に応じて資金を提供できる可能性もある
Being experts on deal terms as well as players
Intel Capitalのような企業の場合、とてつもない数の企業に投資してきたため投資の際のタームだけでなくIPOやM&Aの知識・経験も蓄積されている。また投資家としてだけでなく、自分達が買収を行う企業であるがゆえに、買収を行う側の習慣や買収先の比較等の点で異なる視点を提供できる
③How to Navigate the Corporate VC (and Build Value) CVCとどのように付き合うか
(a) Learn the investment strategy
Cisco, Siemens, Comcast, Motorola, Adobe, Intel Capital, Google, TransCosmos, Pfizer, etc. CVC各社の投資戦略は異なる。それぞれの特徴(投資対象、動機、投資するステージ、ボードメンバーの立場を要求するか等)を良く理解することは、いつの時点で、また、どのような立場でCVCに出資を促すかを決めるのに役立つだろう
(b) Value the process in the CVC and its parent
自分達のベンチャーと異なり、非常に形式ばって動きが遅く見えるCVCのプロセスにイライラすることもあるだろうが、そのプロセスはCVCや親企業にとって理にかなった重要なものである。尊重せよ。
(c) Do your due diligence on the CVC
CVCに対してデューディリジェンスをし自分達にどのような得があるかを見極めよ。なぜそのCVCからの出資を必要としているのかを明確に伝え、投資家として何ができてできないかの期待を予め伝えよ。自社が価値を創造し成長するのに何が必要なのかをはっきりと認識することがまずは重要だ。
(d) Find the right investment professional
積極的にネットワーキングをして、自社にピッタリの投資家を探すこと。CVCのネットワークは広いのでその企業があわなくても他の人を紹介してくれることもあるだろう。
(e) Solicit their input
戦略や主要な取引、特許申請、インフラの拡張など、様々なことに対する意見を求めよ。CVCは自社の持つ多様なリソースを駆使してアイディアを提供したり製品開発や問題解決に力を貸してくれるだろう。
(f) Keep updated
オブザーバーやボードメンバーになった担当者を通じて、本社の関係する事業部や研究所でどんなことが行われているかの情報を得よ。定期的に担当者と一対一で打ち合わせの機会を持つと良いだろう。
かなり長くなりましたが、如何でしょう。ちょっと宣伝も入っていますが、CVC側の意見をこのように聞くのは中々有益だと思います。CVCの場合、本社の業績やビジネスの方向転換などの影響を受けることがあり、通常のVCのように長期的にサポートしてもらえないかもしれないという難点はあります。しかし、上記に挙げられたような、事業会社としての知識や市場リーチなど様々な利点もあるわけです。そして各社の思惑はかなりの違いがありますので、過去の事例を調べたり、実際に投資を受けたことがある人に経験を聞くなどして、良く調べることが必要でしょう。
重要なのは、自社にとって資金調達を通じて必要としているものは何か、をシビアに検討して、通常のVC、CVC、エンジェル、その他政府機関のグラント等、様々な資金提供者の特徴を検証して、その必要なものを最適な形で提供してくれる相手を選ぶことだと思います。確かに資金調達は簡単なものではありませんし、自分の希望通りに行くとは限りませんが、自分の要求をしっかりと把握しておくことは無駄にはならないはずです。挫けずがんばってください。
今日はこんなとこで。では皆さん良い週末を。