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‘07上半期Web2.0投資概況

どうも。今日明日と近所でTechCrunch40カンファレンスが催されていて、結構盛り上がっているようです。が、私は出席しないので、そんな最中に発表されたWeb2.0関連の投資状況について冷ややかにお伝えしようかと思います。

以下、Dow Jones VentureOneとErnst & Youngが発表した今年上半期におけるWeb2.0関連投資について簡単にポイントをまとめます。

グローバルでは伸びているが、アメリカ国内では頭打ちの様子 → exitへの道筋が不透明だからでは
グローバルベース:101件、総額$464.2 million (前年比7%増)
アメリカ:その内 67件、$357 million (前年比ほぼ同じ)
<それでもアメリカは全体の66%を占め、VC投資に限れば77%を占めている>

伸びを牽引しいているのはヨーロッパとイスラエル
ヨーロッパ:20件、$52 million (前年比約2倍)
イスラエル:5件、$15 million (前年は1年間で2件、$5million)
中国:9件、US$41 million (前年比約8.5割)

サンフランシスコベイエリアの割合が低下している →この分野をずっと追ってきた多くの投資家は既にベイエリア企業でポートフォリオを満たし様子見中であり、今は新参の投資家がベイエリアの外で良い案件を探しているという状況なのでは
2002年から2006年まで:全体の40%
2007年:全体の20%

アメリカでその分伸びが大きかったのはニューイングランド(ボストン近辺)と南カリフォルニア(ロサンジェルス近辺)地域で、ニューイングランドは額ではサンフランシスコベイエリアを抜いた
サンフランシスコベイエリア:25件、$91 million
ニューイングランド:10件、$102 million (前年は1年で12件、$62 million)
南カリフォルニア:8件、$59 million (前年は1年間で13件、$64 million)

昨年積極的に投資したVCの多くは今年は殆ど投資していない
Benchmark Capital:2006年16件(内殆どがベイエリア)、2007年上半期3件(内1件ベイエリア)
Omidyar Network, Kleiner Perkins Caufield & Byers、Storm Ventures等も同様。
Sequoia CapitalとDraper Fisher Jurvetsonがグローバルベースでは最もアクティブ。

アメリカ国内での案件の多くは”Enterprise 2.0″に該当するものであったのに対し、中国、ヨーロッパ、イスラエルの案件はコンシューマー向けに特化している

案件毎の投資額中央値は$5 million程で、アメリカでの額は過去最高
グローバルベース:$4.6 million
アメリカ:$5.2 million

このレポートの抜粋では日本の話が全然出てこなかったのですが、日本での状況はどうなのでしょう。

上記のレポートでも触れている通り、アメリカ国内では、よりお金を必要とするタイプ(エンタープライズ系)や、レイトステージへの投資が増えているようですね。もう少し、このWeb2.0分野全般でM&Aが活発に起こるかしないと、今から資金を調達するのはちょっと難しそうですねー。といっても、初期の方はお金が殆どかからないものも多いので自己資金やエンジェルからの資金でやっている人たちが多いですけどね。

ブームが終わると言われてから結構まだ引っ張っているようですが、さて今後どうなるでしょうね。
今日はこんなとこで。

グーグルもVCに?

どうも。しばらく更新できず、すみませんでした。数年ぶりの夏の東京を満喫してきました。当地で会って頂いた方々、有難うございました。今後とも宜しくお願い致します。

さて、今日はCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の話を軽く。しばらく前に、もしかしたらグーグルが今後もっとインキュベーターっぽいことするんじゃないか、と書きましたが、ホントにやりましたね。BusinessWeekの記事によると、一口$500K程の資金をCVC的な形で投資しているそうです。目的としては、買収候補の青田買い、そしてインドや中国など新興市場へのリーチを広げるためのようです。

By staking startups, Google hopes to avoid paying the higher prices companies can fetch once they take funding from traditional VCs. It’s possible that some of its investments are conditioned on Google having first-acquisition rights should a target opt to sell, some VCs speculate. Google didn’t respond to calls requesting comment.

VCから投資を受けたベンチャーは買収の際に割高になるので、早いうちから入り込むとか、投資の条件として以前に触れた、First Right of Refusal とかFirst Right of Offerを課している場合もあるとか言われていますが、実際はどうでしょうね。私は、そういう点よりもむしろ、この記事で出ているようにインドのファンドに投資する事などを通じて新興国へのリーチを広げるための意味合いが大きかったり、先日のガジェットのように、初期の段階からgoogleの技術にピッタリ沿った形で見込みのあるプロダクトが開発されるように仕向ける、という意味合いが大きい気がします。ベンチャー企業をいかに安く買収するかということはあんまり頭にないと思うのですが、どうでしょう。

近頃CVCの試みは全体としてかなり復活しているようです。今年前半のCVCによる投資は2001年以降で最高水準に達しており、390社に対して総額$1.3 billionだそうです。この記事ではCVCが復活していることの理由として、テクノロジー企業のR&D支出が増加していること、中国・インド・ロシア等の前途有望なベンチャーを見出す必要があること、そして株主側が長期的な価値を創造するために、ベンチャー投資にありがちな四半期ごとの浮き沈みに対して寛容になってきていること、を挙げています。

以前も触れましたが、CVCといっても、各社目的や方針がかなり異なりますので、一概には言えないと思いますが、こういう投資の波は周期的にやってくるものかもしれませんね。CVCの中でも大規模なインテルやモトローラ等の各社の動向について興味がある方はこちらをどうぞ。CVCがそもそもどんなものかに興味がある方は、拙著のこちらをどうぞ。

さて、このグーグルの動きに対してVCはどうかというと、金余りの中で益々投資する先が限られて大変という危機感をもたれている方もいるようです。どの分野でもグーグルが潜在的に競合となる可能性があると恐怖感を抱く場合があるようですが、この投資の件に関しては、グーグルも他のCVCと変わらず、通常のVCとはモデルが異なるので、心配するほどのことではないと私は思います。

それよりもむしろ、早くからグーグルの投資を受けることで囲い込まれた形になって、そのままグーグルに安く買収されるか、グーグルが買収への興味を示さなかった場合に行き先がなくなる、という状況に陥るベンチャー企業が出てくる可能性があることのほうが心配です。自社の売却をする際には株主に対するリターンという金銭的なことだけでなく、自社の成長の第二幕として最適な相手を探すことが重要ですが、納得の行く結果を得るには、複数の企業と同時に話し合いをすることが極めて重要です。交渉において、はじめから立場に差のあるもの同士が一対一で話し合うのは、どうあがいても立場の弱い側(この場合ベンチャー企業)にとって不利なのです。

資金は同じ額面でもそれぞれコストが異なります。投資をうける場合には色々な意味でのコストを熟考してからにしましょうね。

今日はこんなとこで。ではまた。