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Amazonの起業支援プロジェクト

どうも。昨年11月にAmazonがユーティリティーコンピューティングに乗り出すのでテクノロジー起業家は恩恵を受けそう、という内容のエントリーを書きましたが、今日はそのフォローアップです。

今日のGigaOmによると、現在Amazon Web Services (AWS)は “over 265,000 developers, more than 5 billion objects, and up to 25,000 requests per second”という規模にまで成長したそうです。本格的にサービスを開始してから半年位ですから、かなりのスピードですね。そして、このサービスは特にネット系の起業にパラダイムシフトと言ってよい程の変化を及ぼしているようです。

Amazonは昨日はスタンフォード、今日はサンフランシスコでThe Start-Up Projectという半日のイベントを開催していて、ネット起業家にAWSのプロモーションをしています。これがただの宣伝活動ではなくて、AWSを実際に使って成功しているベンチャー企業がケーススタディのプレゼンをしたり、ベンチャー起業に関するアドバイスをしたり、Kleiner Perkins Caufield & ByersやBay Partners等の一流VCも参加したネットワーキングパーティにもなっていて、一大起業サポート的なイベントになっている模様です。しかも昨日は Jeff BezosとKPCBのJohn Doerrもサプライズで登場したという盛り上がり具合。(今後ニューヨーク、ボストンでも開催予定です)

以下、出席者コメントを引用します。

“We’re now at a point that business plans really don’t matter,” said VC Randy Komisar of Kleiner Perkins Caufield & Byers. “It’s an iterative process of quickly getting your ideas into the hands of others.”…“Before — there was a black art,” he said. “We don’t need gurus, we have a market.”

このようなサービスがあることで本当に安くサービスを立ち上げることができるようになったので、ビジネスプランを専門家が熟考して上手くいくかを予見するのではなく、とりあえず創って世に送り出して、市場の評価を得られるようになった、ということですね。初期の生活等を支えるお金があれば、資金集めの道を踏まずにやれちゃうわけです。

“This next wave is not about making it cheaper, it’s about making it so you only pay when you have success,” said Jon Boutelle, CTO of startup SlideShare, an AWS customer since inception.

これからは如何に安くサービスを立ち上げるかということではなくて、まずは立ち上げることに注力して出世払いするような形になると考える人も。 チープ革命の更に先というところでしょうか。

AWSのサービスを活用して、LAMPで、ということであればホントに安く立ち上げて様子見ができますよね。すごい時代になったものです。ケースとしてはやはりその辺の話、AWSのお陰で今では大ヒットしたFacebook向けのアプリが自社のリソースをそんなに使わずにできたかとか、お陰で約 $700kも節約できた等があったようです。

熱いですねー。最近は決済などの機能も加えているようですが、熱狂的なファンは今後も更なる機能増加を期待していくことでしょう。Web1.0のリテールと見誤ってはいけませんね。このサービス、Amazonにとっては結構赤字だと思いますし、こんなショーマン的なイベントを繰り広げるなんて、ネット世界のプラットフォームをおさえるようなかなりの考えが背後にありそうですよね。(「年取ったし若い起業家を育成するか」、というノリではないと思うんですよね…)

競争のルール自体を変え得る力、というのはすごいものです。本当に感心してしまいます。

皆さんの中でもAWS使っている方、いらっしゃいますか?ぜひコメント寄せて下さい。

今日はさくっとこの辺で。

グーグルもVCに?

どうも。しばらく更新できず、すみませんでした。数年ぶりの夏の東京を満喫してきました。当地で会って頂いた方々、有難うございました。今後とも宜しくお願い致します。

さて、今日はCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の話を軽く。しばらく前に、もしかしたらグーグルが今後もっとインキュベーターっぽいことするんじゃないか、と書きましたが、ホントにやりましたね。BusinessWeekの記事によると、一口$500K程の資金をCVC的な形で投資しているそうです。目的としては、買収候補の青田買い、そしてインドや中国など新興市場へのリーチを広げるためのようです。

By staking startups, Google hopes to avoid paying the higher prices companies can fetch once they take funding from traditional VCs. It’s possible that some of its investments are conditioned on Google having first-acquisition rights should a target opt to sell, some VCs speculate. Google didn’t respond to calls requesting comment.

VCから投資を受けたベンチャーは買収の際に割高になるので、早いうちから入り込むとか、投資の条件として以前に触れた、First Right of Refusal とかFirst Right of Offerを課している場合もあるとか言われていますが、実際はどうでしょうね。私は、そういう点よりもむしろ、この記事で出ているようにインドのファンドに投資する事などを通じて新興国へのリーチを広げるための意味合いが大きかったり、先日のガジェットのように、初期の段階からgoogleの技術にピッタリ沿った形で見込みのあるプロダクトが開発されるように仕向ける、という意味合いが大きい気がします。ベンチャー企業をいかに安く買収するかということはあんまり頭にないと思うのですが、どうでしょう。

近頃CVCの試みは全体としてかなり復活しているようです。今年前半のCVCによる投資は2001年以降で最高水準に達しており、390社に対して総額$1.3 billionだそうです。この記事ではCVCが復活していることの理由として、テクノロジー企業のR&D支出が増加していること、中国・インド・ロシア等の前途有望なベンチャーを見出す必要があること、そして株主側が長期的な価値を創造するために、ベンチャー投資にありがちな四半期ごとの浮き沈みに対して寛容になってきていること、を挙げています。

以前も触れましたが、CVCといっても、各社目的や方針がかなり異なりますので、一概には言えないと思いますが、こういう投資の波は周期的にやってくるものかもしれませんね。CVCの中でも大規模なインテルやモトローラ等の各社の動向について興味がある方はこちらをどうぞ。CVCがそもそもどんなものかに興味がある方は、拙著のこちらをどうぞ。

さて、このグーグルの動きに対してVCはどうかというと、金余りの中で益々投資する先が限られて大変という危機感をもたれている方もいるようです。どの分野でもグーグルが潜在的に競合となる可能性があると恐怖感を抱く場合があるようですが、この投資の件に関しては、グーグルも他のCVCと変わらず、通常のVCとはモデルが異なるので、心配するほどのことではないと私は思います。

それよりもむしろ、早くからグーグルの投資を受けることで囲い込まれた形になって、そのままグーグルに安く買収されるか、グーグルが買収への興味を示さなかった場合に行き先がなくなる、という状況に陥るベンチャー企業が出てくる可能性があることのほうが心配です。自社の売却をする際には株主に対するリターンという金銭的なことだけでなく、自社の成長の第二幕として最適な相手を探すことが重要ですが、納得の行く結果を得るには、複数の企業と同時に話し合いをすることが極めて重要です。交渉において、はじめから立場に差のあるもの同士が一対一で話し合うのは、どうあがいても立場の弱い側(この場合ベンチャー企業)にとって不利なのです。

資金は同じ額面でもそれぞれコストが異なります。投資をうける場合には色々な意味でのコストを熟考してからにしましょうね。

今日はこんなとこで。ではまた。