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シリコンバレーでの資金調達は厳しくなるかも

どうも、すっかりご無沙汰してしまいました。前触れなくすみません。実は子供が産まれて忙しくしてたのです。

さて、あけていた間の大きな話題の一つにFacebookのIPOがありましたが、今日はその関連で、アーリーステージのスタートアップが資金調達をするのはこれから大変になるかもよ、という話です。

当地ではここ暫く、アクセレレーターやスパーエンジェルの活躍もあり、シード/エンジェル及びシリーズA辺りの資金調達がかなり盛り上がっています。調達がかなりやりやすく(然るべき点をちゃんとおさえていれば)、バリュエーションもまたバブリー。

が、FacebookのIPOがパッとしなかったことで、これから財布の紐が固くなる可能性がかなりあるということなんですね。これは、10日程前になりますが、かのPaul GrahamがY Combinatorのスタートアップ全員にメールで警告した、ということで話題になりました。暫くバブっているといつ収束するのかということがよく語られますが、その最前線にいる彼の口からでてくると中々信憑性がありますよね。

そのメール(全文はこちら)では、

What does this mean for you? If it means new startups raise their first money on worse terms than they would have a few months ago, that’s not the end of the world, because by historical standards valuations had been high. Airbnb and Dropbox prove you can raise money at a fraction of recent valuations and do just fine. What I do worry about is (a) it may be harder to raise money at all, regardless of price and (b) that companies that previously raised money at high valuations will now face “down rounds,” which can be damaging.

資金調達の条件が悪くなることが予測されるが、心配なのは(a)バリュエーションに関係なく資金を調達すること自体が難しくなるかもしれないことと、(b)既に高いバリュエーションで資金調達した場合は今後down roundsになる可能性があること、だと述べています。

そこで、資金をまだ調達していないスタートアップには「期待値をさげよ」とアドバイスしています。バリュエーションや調達額については柔軟に構えるのが重要だと。で、すでにConvertible Noteを高めのキャップで行った場合は、最初のエクイティラウンドでのバリュエーションがキャップを下回るかもしれないが、その場合はキャップについての言及を避けよと。で、既にエクイティラウンドを高いバリュエーションで終えた場合、更に資金が必要になれば、バリュエーションを下げなければ得られない局面に遭遇するかもしれない(ので避けよ)と。

ちなみに、down roundというのは、後続の資金調達を以前よりも低いバリュエーションで行うことです。何が悪いかというと、希薄化がひどくなることと、何よりも「傷物」の印象がついてしまうことです。これは結構ひびくので気をつけたほうが良いです。資金調達をしているとどうしても高いバリュエーションにこだわりがちですが、あまり高くすると後にミクロ・マクロの要因で下げざるを得なくなる可能性も高くなりますのでご注意を。

で、対策はというと、

The best solution is not to need money. The less you need investor money, (a) the more investors like you, in all markets, and (b) the less you’re harmed by bad markets.

一番良いのは資金を必要としないことだと言っています。どんなマーケットの状況であれ危害が少ないし、資金調達の必要がない程投資家に気に入られるからだと。

この、必要ないほうが気に入られる、という点は重要ですね。お金だけでなく他の様々な場面に当てはまりますが、心理的な印象の観点と、交渉カードの観点で非常に優位です。

そんなわけで、程度は予測できませんが、厳しくなる可能性がいよいよ高まってきました。私としては昨今あまりにも芸能人がスタートアップにエンジェル投資したりしている状況から、これはほんとそろそろかな、と思っています。

日本でもデラウェア登記+シリコンバレー資金調達を考えているというスタートアップがかなり増えてきたようなので、参考にして頂ければ。

ではまた。

アメリカでのプレスリリース Part 3: メディアへのコンタクト

引き続き、プレスリリース関連の話しです。

前回の内容に沿って、プレスリリースが作成できたとしましょう。では次はどうするかというと、メディアの方々にコンタクトをして記事を書いてもらうように働きかける必要があります。

方法はざっくり3つあって、1つはWireとよばれるプレスリリース配信サービスを使って幅広く配信すること。2つ目は、自社で記者さんのメーリングリストを作成・管理しておいて(気のきいた)マスメールで配信すること。3つ目は、実際のプレスリリース配信前に、個別の記者さんに事前連絡することです。もちろんこれらを組み合わせたハイブリッドもよく行われます。

それぞれ長所短所はありますが、どの方法が掲載率が最も高いかは恐らく明らかでしょう。3つ目の事前個別連絡です。

この行動は通常、ピッチと呼ばれます。(ピッチは他でもよく使われる言葉ですが、まあ要は売り込みですね) コンタクトの方法として最も使われるのはメールです。もちろん既知の知り合いかどうかや、記者さんが指定する別の方法(例えばTwitterでディレクトメッセージとか)があるかにもよりますが、基本はメールです。余程の有名人かすごい貸しがあるとかでない限り、とりあえずアポとって会ってから説明する、ということはあり得ないのでご注意を。

ではメールでピッチする際に何が必要かというと、連絡したい媒体・記者さんのリスト、それぞれのメールアドレス、「つかむ」件名、興味をひく簡潔なメール本文のテンプレートです。この段階では作成したプレスリリースはまだ送りません。

媒体及びどの記者さんに連絡するかというのは、きちんとリサーチする必要があります。常々自分の製品・サービスに関する分野の記事を追っていて、どの媒体が期待する読者層をとらえているか、どの記者さんだったら自分のニュースに興味をもってくれるか、というのを把握しておくのがベストです。が、把握していない場合は、例えば競合製品の記事などを検索しましょう。見つけたらその人がこれまでにどのような記事を書いているか、どういうことに興味があるかを確認します。当たりであれば、直接関係する最近の記事や視点をメモしつつ、リストに入れます。媒体が自分の知らないものである場合は、どのくらいの影響力がありそうかなどをgoogle、見た目、Alexaランキングなどなどで見極めましょう。

メールアドレスを探す手はいろいろとありますが、まずはその媒体のコンタクトページや記者さん紹介ページを見てみるのがいいでしょう。なければ、その記者さんのtwitterアカウントのプロファイル欄、個人で書いているブログなんかはかなり確率が高いです。

計画した媒体・記者数に近づくまでこの作業を繰り返します。(もちろん、予想に反して少なそうなことが分かったら期待値自体を変更する必要があります)

で、いよいよピッチメールを作成します。これに関してはサイエンスではないので、とにかく相手の視点に立って頭をひねる必要があります。件名は短いのでAdWordsの広告を考えるみたいにクリックさせるような文章を検討してみましょう。相手の視点に立つとは、「なぜ時間をさいてこれを読む必要があるのか」に答えるということです。

本文で大事な点は、まず目的と相手との関係性を簡潔に述べること。ここで先ほどの記者さんリサーチ時にメモったことが役に立ちます。例えば「あなたがxx日に書いたyyyの記事を興味深く拝読しました。私が来週リリースする製品Aは記事中で比較されていた速度を2倍上回るもので、追加記事として興味がおありではないかと思いメールしました」という感じです。

そのようなイントロの後に、要点を箇条書きで簡潔(これほんと重要!)に書き、最後に、もし興味があればお知らせ下さい、プレスリリースも送れますし、良ければSkypeなどでも更に詳細をご連絡できます、とかオプションを書いて締めます。 全体で数行から10行くらいが良いでしょう。

全体の内容はテンプレートとして同じで良いですが、最初のイントロ部分は必ずカスタマイズしましょう。それから、言うまでもないかも知れませんが、メールはHi (名前)、などで軽く始めます。名前はファーストネームまたはニックネームでOKです。Mr.名字という書き方はこの業界ではまずないと思っていただいて結構かと。

とまあ、手間隙かかりますが、ここまでしてようやく土俵に上がれる感じですので、自力でやる方はがんばるしかないです。相手から返信がきたら、素早く希望にこたえて話しを進めましょう。場合によってはExclusiveが欲しいとかの条件を提示されることもあるので、その場合は色々と調整が必要になります。

記事になれば見返りは大きいですが、とにかく時間も労力もかかります。このような活動をPR会社やコントラクターにお願いすべきかどうかは、自分がやる場合の効果やコストと照らし合わせてしっかり考えたほうが良いと思います。また、できればプレスリリースを出すタイミングの単発ではなく、日頃からこのような活動を継続して行うべき、というのも念頭において頂ければ。

では今日はこの辺で。