tech venture business » Archive of '1月, 2009'

「働きたい会社」の作り方

どうも。CNNによると今日一日で7万人以上の人が解雇通知を受けたとのこと。凄いことになってきました。

んっ?解雇は金曜日にすべしというのが定説だと思ったのですが、どうしたんでしょ。「首切り」は金曜日に、大規模な「レイオフ」は月曜にするのが良いという調査結果でもでたんでしょうか? 殺伐度が増してきましたが、ついにはヨーロッパの友人から「アメリカは治安が悪化するから銃を買え」と言われる始末です。

不謹慎ついでに、もう一つ、先日近所のバーのお兄さんから聞いた話を。実はアメリカでは、ちょっとギークな人の間では特に、「忍者」が人気だったりするのですが、その忍者に近頃新たな意味合いが加わったとの事。それも「無収入、無職、無資産」というナイナイな状態のことだそうです。つまりNINJA=No Income, No Job, and no Assetsというわけですね。元は酷いサブプライム商品で、そういう人でも借りられるという趣旨でNinja Loanと銘打って売り出したものがあったことによるのですが、それがここに来てそうした状態に陥る人が多くなってきたので一般的に使われるかもという話です。

そんな中、Fortuneで「100 Best Companies to Work For」というランキング結果が発表されたのですが、栄えある第一位はシリコンバレーにあるNetAppでした。レイオフをしていない或いはしない、ということもかなりのポイントになっているようです。昨年1位のGoogleは4位に転落したとのことです。

このNetAppは以前Network Applianceという名前だった、1992年創業のネットワークストレージ企業です。首位になった理由にボランティア有給休暇や養子縁組、自閉症サポートなどの充実した福利厚生もありますが、より重要だと思われるのが以下に引用するカルチャーに関するものです。

Says one employee: It feels like “a small startup company instead of a 7,000-plus corporation”.

まずは、7000人強の企業というよりか小さなベンチャー企業のようだ、と。これは多くのベンチャー企業経験者がご存知の通り、簡単なことではありません。規模が大きくなるにしたがって大きな悩みとなる場合が多いです。私はNetAppの内部に明るくないのですが、どのようにしてベンチャーな雰囲気を維持したかのケースのようなものがあると参考になって良いですね

Typical of its down-to-earth management ethos, NetApp early on ditched a travel policy a dozen ­pages long in favor of this maxim: “We are a frugal company. But don’t show up dog-tired to save a few bucks. Use your common sense.”

それから、極めて現実的で真っ当で、ムダを廃したプロセス。例えば、長々とした細かい出張規定は止めて「うちは倹約でいくけれども、たかが数ドル節約するためにへとへとになってやってくるような馬鹿なことはしないこと。常識で判断せよ」というシンプルな決まりにした事。これは素晴らしいですね。こうした経費の処理に関するコストは相当なもののはずです。

Rather than business plans, many units write “future histories,” imagining where their business will be a year or two out.

そして、多くの部署ではビジネスプランの代わりに「将来の実績」というものを書いているとのこと。これは面白い発想ですね。そのような捉え方をすることで、より地に足の着いた実現可能なプランが立てられるということなのでしょう。

不況だとマクロで言っても、社員のやる気を確保することで社員が顧客に応えることができるという、きちんとした仕組みをつくって実践できている会社は強いということでしょうか。「人材、人財」と軽々しく言う企業が多い中、その会社ならではの形できちっと施策に落として実行できる会社、そしてそれをカルチャーにまで昇華させることができる企業は賞賛に値すると思います。

ちなみにNetApp、現在も様々な職種で採用中だそうですのでチェックしてみて下さい。もしNetAppのマネジメントに関する良い読み物をご存知の方がいらっしゃいましたら、教えて下さい。

では今日はこの辺で。

軸を持ち信じて行動すること

どうも。明日20日は米大統領の就任式で、この歴史的瞬間を肌で感じようと各地からワシントンDC入りする人がたくさんいて、大変盛り上がっております。

11月の選挙からこれまで、人々の関心が高いせいもあってか、移行に関する報道でアメリカの政治に関する基礎的な背景を説明するものも多く、色々学びましたが、その中でもかなり驚いたというか違和感があったことがあります。

それは「こんな平和的な政権交代ができるのはアメリカだけ」という趣旨のもの。いつの時代の話をしてるんだろ、開発途上国でもあるまいし、と思ったわけですが、実際そのようなセンチメントを語る人が周りでも多いのです。アメリカでは外の世界や歴史を知らない人が多く、事実無根の「アメリカがベスト」みたいな意見は様々な面で見受けられるので、今回もそれかと思っていたら、それがそうでもないようなんですね。それ程政権というものがおおごとで○○朝とかダイナスティーって感じなのか、それともそもそも「他の先進国と比較して」という基準で考えないのか、うーんどうなんでしょうか。明日の予定を見ると、オバマ大統領就任の儀式後にはブッシュ夫妻はヘリコプターでホワイトハウスから退場するというドラマチックなことになっているようです。

それはさておき、アメリカの強みは、建国理念に基づいて真剣な議論をし方向性を定めることができることなのではないかと思います。国の歴史が浅いからこそできるという一面ももちろんありますが、アメリカはその分多種多様な人からなる国であるという難しさを抱えているわけです。国であれ企業であれ、組織においてミッションや行動指針という拠所がしっかりしているということは、やはりとても重要なことだと思います。何かがおかしくなってしまった時に、変わりはしないとただ悲観的になったり、昔は良かったと懐古的になったりせずに、皆が共有する原則と照らし合わせて方向修正できる可能性がありますよね。もちろんリーダーシップが必要ですが。

それからオバマ氏が強調している「believe」ということの重要さについては、今回の選挙を通じて非常にインスパイアされました。周りからナイーブと言われようが、「できるわけがない」と言われようが、ぶれる事なく行動すること。シニカルになることが大人になることだというような呪縛から逃れて、個々人が信条に基づいて生きていくことができればと思います。組織を変えることに比べれば、高々数十年の個人の人生の方向転換など小さいことなのかもしれません。

今、彼の「Dreams from my father」(訳本のタイトルはなぜかマイ・ドリームですが)を読んでいるのですが、その信念がどのような経験を通じて形成されてきたかに触れることができ、非常に良いです。何かをもてあましている感のある方には特にお薦めです。うだうだせずにポジティブにいきたいですね。

では取り留めないですが、前夜ということで。

ではまた。