tech venture business » Archive of '10月, 2008'

こんな時期のM&Aはどうなるか

どうも。暫らく間があいてしまいました。

相変わらず大変な状況が続いている市場ですが、今日はそんな混沌期にM&Aがどうなるかという話を。以前書いたエントリーの補足です。

景気が悪くなると一般的には財布の紐が固くなるわけですが、M&Aが総じて減るかというとそういう訳でもないようです。

現在のような信用収縮が起こっている場合には、多額の資金調達が必要になるような大きなM&Aは難しいので減少しますし、より選択的になりますので日和見的な買収は減少します。一方で戦略的にピッタリと道理に適うもので、キャッシュでまかなえるようなものは引き続き行われます。但し、元々M&Aに保守的な買い手、或いはM&Aの経験が少ない買い手は暫らく様子見になる傾向があります。

ベンチャー企業のエグジットとしてのM&Aは戦略的且つ基本的には小サイズですので引き続き行われますが、経験の豊富な少数の買い手と、資金繰りが厳しくエグジット圧力のかかっている多数の競合するベンチャーという状況になると何が起こるかと言えば、買い手市場です。

今日出席してきたAdobeとSunとRFマイクロディバイスのコーポレートディベロップメント担当者によるパネルディスカッションでは、それぞれが「来年はどんどん買いますよー!」というノリでした。私が思っていたよりも遥かに買う気満々で、安く買えるこういう時期は買い手にとってはもうウハウハという感じでした。

この状況が吉と出るか凶とでるかはケースバイケースですが、M&Aのドアが閉じてはいないということ自体は、ベンチャーにとって良いニュースだと思います。株価の急落している上場企業を含め買い手にとってのオプションが増えているので、エグジットを考慮しているベンチャーはなるべく早期に積極的なアプローチを計画することをお薦めしますし、また同時に単体の企業として不況を生き抜く施策を取りつつそうした買い手になりそうな企業への露出向上を意識的にすることをお薦めします。

また、買う意欲が多少でもある大企業の方々には、この機に積極的にベンチャー企業との協業を検討し買収を打診したり、意欲を知らせるためにも情報収集のためにも、ベンチャー企業を担当しているようなM&Aアドバイザーやバンカーに接触し網を張ってみるのがよいと思います。

そんなわけで短いですが、今日はこの辺で。そろそろ明るい話でも書けると良いのですけどね。
ではまた。

貧困、起業、資金、そしてインターネット

どうも。最近は工数のかかる仕事が積重なっていて中々時間がとれずにおります。が、今日はBlog Action Dayとのことで、何とか一筆をと。

テーマの貧困ですが、普段テクノロジーとかベンチャーとかM&Aなんかについて書いているのであまり関係がなさそうですが、実は個人的には非常に思い入れがあります。私は大学時代、開発経済学のゼミに所属して主に東南アジアの貧困と発展について考え、当初はその道の仕事をしようと思っていました。それが、どうして今のようなビジネスの世界に進んだかというと、話がかなり長くなるので省きますが、その一つの理由として、アジアを数多く訪れる中で、彼らの豊かさを実感したというのがあります。

もちろん貧困も地域格差も社会基盤の脆弱さも色々とありましたが、多くの人は優しく逞しく、柔軟で賢く、疲弊した我々よりも満ち足りて幸せそうで、いわゆる物質や金銭では計りきれない類の豊かさがそこにはありました。そんな中で、援助とか国策の融資とかマクロの国際協力は、何か違う、と思ったのです。目線の違いとでも言うのでしょうか。

で、もう少し対等な形で個人のエンパワーメントに関わることができればと思いながら今に至ります。ここ数年は、仕事やブログを通じて、起業家のサポートを微力ながらしており、それはこの路線に沿うので充実感がありますが、貧困の問題には縁遠くおりました。

で、ここ暫らく気になっているのが、この両者を融合したマイクロファイナンスだとかソーシャルレンディングとよばれる分野です。こうした金融手法自体はかなり前からありますが、ネットを活用した形態はまだまだ新しく、今後様々な応用ができるのではないかと思っています。

ここではその内の一つ、Kivaを紹介します。これは地元サンフランシスコ発のNPOとして活動するもので、インターネットを通じて、開発途上国の起業家に融資する仕組みを提供しています。

起業家というとベンチャーなイメージになってしまうかもしれませんが、ここでは主に自分の生活を切り開くために何らかの商いをしている人達のことです。企業のポジションに応募することが仕事を得ることだという仕組みは産業化した社会における短い歴史の話であって、世界の多くでは収入を得るためにはにはビジネス自体を立ち上げる必要があり、資金にアクセスがあればそれを実現できる人がたくさんいるのです。逆に我々の方がそうしたビジネスとサバイバルの精神を忘れてしまったのかもしれません。

融資は一口25ドルからと小額で、融資者は、誰がどんな用途の為に幾ら必要としており返済期間はどのくらいかということを比較して、自分が融資したいと思う人やグループに融資します。融資希望者とKivaの間には地元のマイクロファイナンスやその他の機関があり、Kivaは融資者から集めた資金を無利子でその中間団体に貸付け、その中間団体が実際の貸付け(通常有利子)や支援を行います。Kivaはその貸付が公正であるよう管理しています。規定どおりに返済された資金は融資者に返還されるので、融資者は他の人にまた出資したり、Kivaに寄付したりすることができます。

在野のマイクロファイナンス機関と協力してネットを最大限活用することで、言語やコンピューターリテラシーの障壁もある人々が、所属する地域や政府の垣根を越えて世界中の個人から資金を調達するこを可能にする、というこの仕組みは素晴らしいことだと思います。資金による個人のエンパワーメントはきちんと効果もでていて、現時点での融資返済率は98.67%という高さになっています。

ぜひ皆様もKivaのサイトをみて、できたら、果物の仕入代とか、家畜の購入費とか、いろいろな用途に融資してみて下さい。(日本語での詳細はこちら

それからもう一つ、こちらは寄付ですが、私が学生の頃やっていたものを紹介しておきます。こちらはタイ・ラオス・カンボジアの子供達を中学校に通わせる資金を提供するダルニー奨学金というもので、中等教育就学率の低さによる格差拡大に対処する試みです。

というわけで、今日のスピリットに賛同して乱筆ですが書いてみました。何かのムーブメントができるといいですね。
このマイクロファイナンスの分野は私はかなり興味津々なので、また何かの機会に書いて見たいと思います。

では今日はこの辺で。