企業乗取り等のちょっと怖い世界
どうも。真夏日のここサンフランシスコですが、今日はヤフーとマイクロソフトの話にまた新たな熱い展開がありましたね。
あの、物言う株主、またはコーポレイトレイダー(corporate raider: 乗取り屋)として知られるカール・アイカーン氏の登場です。現取締役の決断は不合理だとして、マイクロソフトとの合併交渉を再開することを求め、取締役全員の入れ替えを提案し委任状争奪戦に乗り出すと表明しました。
カール・アイカーン氏、もう70歳を超えているはずですが、ほんとにどこにでも出てきますね。精力的極まりない。最近ではモトローラ、BEA、過去にはタイムワーナーなど関わった企業のリストは膨大なものになります。
近頃は日本でもライブドア、村上ファンドがらみで「物言う株主」の存在が広く知られるようになりましたし、敵対的M&Aも増えるなどして委任状争奪戦という言葉も馴染みのあるものになってきたと思います。こういう事は在る意味、派手でドラマのような面白さがあるために目立ちますので、これが M&Aの世界なのかと思ってしまっている人が結構いるようにも感じますが、決してそうではありません。多くのM&Aは友好的ですし、関係者のミクロのドラマは必ずありますが、もっと穏便です。
とはいえ、こういう「ハゲタカ」的な世界があるのも確かですし、この機に、カール・アイカーンってどんな人、乗っ取りってどうやるの、というような事を感覚的に把握したいという方の為に、映画をご紹介します。
それは今から20年以上前に出た「ウォール街」という映画で、オリバー・ストーン監督、マイケル・ダグラス主演のものです。随分前に見た事があるという方もいらっしゃると思いますが、そういう背景を知るという目的で見ると今更ながらの作品でも非常に楽しめると思います。私も普段はこういうジャンルは好まないのですが、アメリカ社会、特に企業活動や政治への理解を深める視点で見ると学ぶところがあるものが多いです。
さてこの映画ですが、主人公はGordon Gekkoというコーポレイトレイダーでして、このカール・アイカーン氏、そして他のウォールストリートの著名人(Ivan Boesky、J. Tomlinson Hill、 Michael Milken等)をモデルにしたと言われています。アメリカでは一時代を反映する映画として非常に有名ですし、Gordon Gekkoというキャラクター名を知らない人はいないというくらい、文化的な象徴であったりします。とても賢くやり手だけれども冷徹で拝金主義、とまぁ一言で言えば悪役です。
日本人の多くはマーティン・シーンが演じるお父さん役の倫理観に共感すると思いますし、オリバー・ストーン監督も行き過ぎた資本主義に反対する思いを込めて作ったのですが、皮肉なことに、アメリカではGordon Gekkoに憧れてウォールストリートでのキャリアを目指す人が続出し、ヒーローとしての扱いを受けてきたことも確かです。その辺もアメリカならではだな、と思います。
幾つか有名な台詞がありますが、その中でも実はとても深いなと思うのがこれ。Greedという言葉がきつ過ぎるかもしれませんが、日本社会が元気になるには必要な要素かもしれない、と思ったりします。
“Greed, for lack of a better word, is good. Greed is right. Greed works. Greed clarifies, cuts through, and captures the essence of the evolutionary spirit. Greed, in all of its forms, greed for life, for money, for love, knowledge has marked the upward surge of mankind.”
悪役なのですが、非常に魅力的な部分もあり、感情では悪だけれども、資本主義のルールに則ればそう簡単に悪とも言えない、といろいろ考えさせてくれるキャラクターです。それが正しいとしてウォールストリートに邁進するつもりにはなりませんが。皆様も色々な視点から見てみて下さい。
最後にチラ見せで一部を張っておきます。なお、この映画の続編が製作中との噂です。監督は異なりますが、マイケル・ダグラスが引き続きGordon Gekkoを演じ、今度はヘッジファンドの設定だとか。今年後半か来年公開予定とのこと。中々楽しみです。
今日はこの辺で。ではまた。