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どうも。前回のエントリーにはすごい数のアクセス及びブクマを頂きまして、かなり驚きました。ネットワーク効果の大きさを改めて認識した次第です。初めて立ち寄られた方、ぜひまたお越し下さいな。今年はぜひとも、α、β…θブロガーくらいを狙っていきたいものです。
さて、今日はつい先日の、SunによるMySQL買収に関する話を。SunがLAMPのMを$1billionで、ということですが、このM&Aは幾つかの重要な意味をもっているように思います。
一つ目は、Sunのこれからの方向性としてのもの。過去何年かにわたって混迷を続けてきたSunですが、この買収によってオープンソースソフトウェアの一大支持者、クラウドコンピューティングの覇者としての脱皮を図るつもりのようです。これはある意味ブランディングでもあり、MySQLから得られる収入と新たな顧客群、或いはDB進出も重要ですが、それ以上に、周りから再度「クール」だと思われることの意義は大きいです。
実際、SunはこのところWeb2.0系のネットベンチャーにもかなりアプローチしていて、私が参加しているSF Tech Meetupでも数ヶ月前からイベントスポンサーになり、ベンチャー支援プログラム(Sun Startup Essentials program)の宣伝や無料プレゼントをしたり、と地道にアピールしています。Solarisをプッシュするのかとか、PostgreSQLはどうなるんだ、とかの疑問もありますが、Jonathan Schwartz下のSunは、どうやらアイデンティティを再構築していけるかもしれないという気配がしています。
そして二つ目は、やはりオープンソースが確実に市民権を得てきているということ。これは凄いことですね。今後も更に商業的なオープンソースは増え、エンタープライズ仕様、更にミッションクリティカルなシステムにも取り入れられてくると思われます。そうなるとこれから益々ありそうなのが、、、
そう、三つ目、オープンソース企業間、或いは大きなIT企業によるオープンソース企業のM&Aの増加です。451グループによると、オープンソースがらみのM&Aは2003年には6件、2004年には3件、2005年には15件、2006年には22件あり、そして2007年には後半にぐんぐん伸びて30件に達しました。そしてこのMySQLですから、かなり旬な感じです。MySQLはIPOを予定して準備していましたし、他のオープンソース数社も今年のIPO候補として挙がっているのですが、今回の件で波はM&Aに向かっているように思われます。
但し、コマーシャルオープンソースは新しい概念ですから、従来のM&Aとは異なる要素が多くあります。通常のM&Aでは支配権ということが大きなポイントですが、オープンソースの場合はコアの技術がパブリックですから、何をモチベーションにどれだけの対価を払うかというのは中々難問です。そして買収する会社が買収後にそのオープン性をどのように取り扱っていくのかというのも、権利や、営利、モラルの観点からも一筋縄ではいきません。また、数多くおこっているようにオープンソース企業同士のM&A(コンソリデーション)ならば分かりやすいのですが、一般のIT企業が買収する場合にはカルチャーギャップの問題も大きいはずです。最悪の場合、買収した矢先に殆どの社員が「そんな邪悪なのはイヤだ」と離職してしまう可能性もあります。この辺りは今後も暫らく手探りが続くのだと思われます。
さて、上記で対価に触れましたが、ちょっとバリュエーションについて見てみたいと思います。MySQLの過去12ヶ月の売上げは一説には$50M弱程。買収額が$1billionですから、20倍ですね。データベースという観点から比較し得るものが近頃ないので、他のオープンソースを見てみます。 RedHatによるJBossの買収では過去12ヶ月の売上げ倍率は13倍。CitrixによるXenSourceの買収ではなんと500倍、Yahoo によるZimbraの買収ではこれまた大きく117倍….。
総じて一般のIT企業よりは高めのようですが、差はかなりありますね。ベンチャー企業のバリュエーションは定石が当てはまらず、結局はM& Aプロセスにおける仮想市場の原理が現実だと私は常々思っていますが、オープンソースの場合は先程述べたような手探り状態のため余計にばらつきがあるように感じます。
とまあ、色々あるわけですが、このオープンソース分野、私は興味津々です。M&Aに関しても今後可能性、実現性をより深く検討したいと思っていて今ちょっと勉強中です。メジャーになりつつあるもの、かなり将来性のあるオープンソースプロジェクトや企業、またオープンソースに関して良い資料などありましたら、ぜひ教えて下さい。
では今日はこの辺で。皆様、良い週末を。
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どうも。先日はJTPAのセミナーに初参加してきました。自分の業界(大まかに言えばですが)で遥か遥か先を行かれている東恵美子さんのお話を伺い、自分の現状と比して色々と考えさせられることも多く、大変良い刺激になりました。ぜひまた参加したいものです。
さてさて、今日は人材の話です。
数人の創業者で始めたベンチャーが多少軌道に乗ってくると、新たに外から人を雇ってチーム作りをしていく必要があるわけですが、この時期の人材獲得が非常に難しいということをよく聞きます。もう少し大きくなってからだと、既存チームのスタッフとして参加してもらう「働き蜂」を的確に集めることが重要になりますが、この初期の段階で必要なのは、創業者のビジョンを共有して、整った環境がなく細かな指示やサポートがなくても、ガリガリとそのビジョンの実現にむけて牽引できる人なので、確かに難しい。
スキル要件がピッタリあっていたとしても、大企業で過ごしてきた人がこの時期のベンチャーで実力を発揮できるとは限りません。実力もあり起業家精神がある人が望ましいのですが、かといって、そういう人々が自ら起業せずにそのベンチャーで力を発揮してくれるためには、ベンチャー自体に相応の魅力がないといけないですし、エゴの衝突ということも起こりえますので、その兼ね合いは一筋縄ではいきません。
技術系ベンチャーでこういった初期に必要なのはまずディベロッパーですが、それではどういうエンジニアを雇えばよいのか。
今日のOnStartupsブログで、その点に的を射たThe Startup Developer Superstar Detection Quizというのがありましたので、まずは引用します。以下、Yes/Noでお答え下さい。
1. You’re more of a pragmatist than a perfectionist.
2. You’ve muttered “I’m up anyways, might as well code” at 4:30 a.m. at least once in your life.
3. You understand why the above is misleading because time is continuous, not discrete and the probability of any individual having muttered anything at exactly 4:30 a.m. is near zero. But, you answered yes to #2 anyways, because you’re practical and know what was actually meant.
4. Your sense of satisfaction from software development is a function of how many users are delighted with what you’ve built.
5. You can argue both sides of a technical debate most of the time, if you had to. Some of the time, you actually do, just to better understand the tradeoffs.
6. You’ve been impressed with someone else’s code at some point in your life.
7. You’ve reused someone else’s code at some point in your life, and resisted the temptation to rewrite it.
8. Given a weekend, you could build and launch a trivial web application from start to finish in a language/platform of your choosing (C#,Java,PHP,Python,Ruby,etc.). And, since you’ve actually had weekends, you’ve actually gone ahead and done this.
9. You’re strangely comforted by the fact that the list of languages in #8 is alphabetical and not in descending or ascending order of quality/power/coolness/etc as you really don’t have the time for a religious war on languages and platforms.
10. Given a long weekend and some caffeine, you could do #8 with a popular language/platform that is not of your choosing.
11. You’ve developed something non-trivial before that nobody you know could recreate in a weekend (and you know more than two people that you’d consider great developers).
12. You’re going to start your own company someday. So, you’re interested in sales, marketing, operations and things other than figuring out how to make Ruby on Rails scale to large numbers of users when there are complicated database queries involved.
13. You read a lot, including things like Hacker News.
14. You’re not just an internet developer, you’re an internet participant. You actually use the stuff other people have built.
結果としては、上記の全てにYesな人は恐らくベンチャー向きの「スーパー」エンジニアだろう、とのこと。 私はエンジニアの評価ができる立場ではないので分かりかねますが、どうでしょう、こういう評価軸に賛同されますか?
私がこれを見てふと思い出したのは、小規模ながら素晴らしい実績をあげているサウスウェスト航空です。この航空会社は社員を重んじることで知られていて、そのユニークな人材活用は様々な書籍や記事で取り上げられています。詳しいことはそうした資料をご覧頂きたいのですが、例えば、技術的に定評のあるパイロットを面接に呼んだところ、面接が始まる前の受付や他の社員に対するその人の態度が些か傲慢で感じが悪かったことから、いざ面接が始まると即座に帰りの航空券を手渡して帰らせた、という逸話があります。
その背後には、仕事のスキルや知識というものは訓練で何とでもなるけれども、サービス業として重要な人となり・資質というものは教える事ができないので見極める必要がある、という信念があります。人に対する適切・丁寧な応対ということは、小手先ならばある程度訓練することが可能だと思うのですが、他人の心を汲み取って親身に対応するとか、他人のため何かをしてあげたいという心のありよう自体は、確かに教える事が難しいものだと思います。大人になると余計に頑固になりますしね。
社員のモチベーションを上げるリーダーシップ論を実践されている企業も多いと思うのですが、それとて向上したい気持ちがある人に対して障害を取り除き実践しやすい環境を提供することが趣旨であって、向上する気持ちのない人を変えることはできないと思います。何らかの理由でひねてしまっている友人や家族に対して根気良く手助けすることはできるとしても、雇用するという観点からは、そこに時間と労力をかける余裕はないでしょう。
人数が少なく、一人一人のパワーが会社の成功を大きく左右するベンチャー企業では尚更の事、自社のビジョン遂行に必要な資質をもった人を探すべきだと思います。引用したクイズの評価軸は総じて、この資質を見極めるものだと言えると思います。技術的なスキルについて細かく面接をすることも時には必要かもしれませんが、「働き蜂」以上の人材が必要ならば、感性、適性、方向性、価値観といった、決して客観的なものさしだけでは計れないことを多少時間をかけてじっくり探ることが重要だと思います。引用した評価軸を一例として、自社に必要な資質を考え人を見る際に取り入れてみてはいかがでしょうか。
今日はこの辺で。ではまた。