tech venture business » Archive of '12月, 2007'

コミュニスト的Craigslistの粋

どうも。あっという間に12月も半ばですね。最近こちらも寒い日が続いて参り気味です。

さて、先日別件で調べ物をしていたら、ちょうど1年程前の記事でCraigslist関連のものに遭遇しました。はご存知の方も多いと思いますが、この辺では特に人気のある、生命線に近いコミュニティーサイトです。もう十年近く存在しており、UIもシンプルで、1回目と今回のバブルに脇目も振らず淡々と成長し皆に愛されているサービスです。ご多分に漏れず私もよく使わせてもらっています。

営利主義ではなくユーザーの求めるもののみを提供するという信念を貫く企業として有名ではあるのですが、前回の動画にあったように一攫千金モードが高まっている昨今、この地でその姿勢を続けていることに新鮮さを感じざるを得ません。数年前にeBayが25%の株を取得してどうなるかと危ぶまれたこともありますが、その影響は殆どみることが出来ないくらいです。

この1年前の記事ではUBS global media conferenceでの質疑応答におけるCEOのJim Buckmasterとウォールストリートの人々との間の噛み合わないやりとりに触れています。単純に要約するとこんな感じです。

UBS analyst: What are your plans to maximize revenue?
Craigslist CEO: Craigslist does not maximize revenue. It’s not part of the goal.
Audience:..?..?..?….

Craigslistは現在450都市にサービスを展開しており月間ページビューは毎年200%成長を経て約80億を誇りますが(その他統計の詳細はこちら)、社員数は25名。 サービスの殆どは無料で、AdSenseや他のバナー広告等は一切なく、収入源はその内7都市にだけ課金している求人広告と賃貸広告料(求人:サンフランシスコ $75、その他6都市 $25、賃貸:ニューヨーク $10)のみです。トラフィックだけでもすごいことですし、本気で収入を増やそうと思えば企業価値はとんでもないことになると言われているのも納得です。

しかし、掲載ボリュームがかなりありこれだけで相当の収入となるため満足しているし、大金持ちになっても良いことないし、ユーザーの要望に応えるだけだからというCEO。理解不能とばかりそれでも食い下がるアナリスト。

UBS analyst: How about running AdSense ads from Google?
Craigslist CEO: Craigslist has considered that. We even crunched the numbers, which were quite staggering. But users haven’t expressed an interest in seeing ads, so it is not going to happen.
Audience:..?..?..?….

ウォールストリートの人々を中心としたその場の聴衆の表情は、なんとも面白かったでしょうね。これがまたJim Buckmasterが抑揚もほとんどなく淡々と当然のように語るので、かなり異星人に見えたことでしょう。その場の状況をZDNetのライターがJim Buckmasterは“delightfully communist”そして聴衆は“confused capitalists wondering how a company can exist without the urge to maximize profits”だと記しています。

こうしてよく共産主義者だと言われる彼らですが、そういうわけではなく、CEOも言っている通り、ただ足るを知る人々なのだと思います。まぁ、アメリカ人一般には受け入れ難いですよね。利潤を追求しない=コミュニストというのは資本主義の権化のこの国では通ってしまうことかもしれません。

どちらが良い悪いという話ではないのですが、何かの信念を貫くというのは、それが金銭的なものであれ別のものであれ、格別の充足感がありますし、それが他の人と価値観が違っていようとも、状況が許すのならばそれで良いではないか、と思います。状況が許すということは、私企業でかつVC等の投資家がいないこと、そして一緒に働いている人達がその理念を共有していることです。そこを固持していくことは、それはそれで非常に難しいことでしょうけど。

そんなわけで、特に結論もないのですが、今になって何だか新鮮だなと思った次第です。では、また。

P.S. 遅ればせながら、シリコンバレーツアーの告知を貼らせて頂きました。 締め切り間近だと思いますので、興味のある方は奮ってお申し込み下さい。私も次回はぜひボランティアとして関わらせて頂きたいと思っています。

明るいバブルは良いのかも

どうも。12月になるとやはり、今年一年を振り返る的なものが増えるのですが、その中でも最近面白かったのがこのビデオです。

タイトルはHere Comes Another Bubble!(またバブルがやってきた)で、90年代を彷彿させる昨今の雰囲気を皮肉ったものなのでが、特にWebまわりの流行り物がテンポ良く展開するので、今年を総括する意味でためになったりもします。Billy JoelのWe didn’t start the fireの替え歌をしているところも結構にくい。

昨年このブログを書き始めた頃には既に、Web2.0はバブルだということが言われていましたが、実はそれから結構長いこと引っ張ってますよね。結局バブルだとは思うのですが、90年代のそれに比して規模がかなり小さく、例えはじけたとしても一般個人への影響は殆どないような気が最近はしています。 VC業界や私達などのようにexitに関わる業界にはちょっとした構造変化があるとは思うのですが、サブプライムなんかと比べれば全然たいした話ではないはずです。

ひょっとすると、実質的ではなく気分的には常にバブル気味のほうが良いのかもしれません。その華やかで「自分も参加しなくては」と思わせる状況下では、各地から多くの人々が我も我もと押し寄せてきますし、毎日数多くのベンチャーが起業され、その中からは良いものが出てくる可能性も高くなるかもしれません。また起業家やベンチャー企業を囲む様々なビジネスも生まれたり繁栄したりするわけで、波及効果も色々とあるわけです。(Web2.0で一番儲かっているのはカンファレンス主催社だという説もあります)まぁ、流れにはのってしまえ、失敗しても次がある、というこうしたポップな楽観主義はシリコンバレーの底力の一つかもしれません。

このビデオ、良くみると結構芸は細かいです。一億円でも小さな家だったり、良いエリアの素敵なお家が欲しければ夫婦其々が一発当てなければ、というのはこの近辺では残念ながら強ち嘘ではありません。全体を通して現実にすれすれに近いジョークだからこそ面白みがあるのでしょうね。

ちなみに、「エンジニアはピザとビールがあれば働く」というのはあらゆる所で言われることなのですが、どうしてなんでしょうね、これ。かなり前にラーメンのことを書きましたが、これも私の中では謎です。確かにどのイベントに行ってもスポンサーが出すのは取り合えず、ビールとピザ。エンジニア職はかなり外国人比率が高いであろうのに、なんともアメリカンカジュアルな組み合わせ。食べるのに時間がかからないし、ながら食いもできるからなんでしょうか? 誰か教えて下さい。

そんなわけで、今日はこの辺で。

補足:このビデオ著作権関係でいざこざがあって暫らく見られないようになっていたのですが、新バージョンが出ているので遅ればせながら、差し替えました。