tech venture business » Archive of '10月, 2007'

VCの数が5年で半減!

どうも。最近忙しい日が続いております。なので今日はさくっと、業界再編の話を。

アメリカのVC業界団体であるNVCAによると、アメリカにおけるVCの総数は2001年に946社でピークに達し、2006年には798社と15%減少したそうです。確かに当地ではVC業が発達していますが、そんなに大数だとは知りませんでした。

しかしながら、この数字はどうやら実情を正しく示していないようです。OVP Venture Partnersの分析によると、実際の淘汰はもっと厳しくて、この5年間でVCの数は半減したとのこと。

NVCAの数字にはいわば名目上存在しているものも含まれており、実は、新たなファンドが得られずメンバーの大半が去り、既存のポートフォリオを期末まで管理しているだけというような企業を除けば、2006年にアクティブなVCは587社になるというのです。(OVPは2001年のピークは1156 社としています)

業界再編は時に必要不可欠ですが、5年で半減っていうのもすごいですね。この規模からすると、恐らくバブル時に猫も杓子も的に増えすぎてしまったんでしょうね。再編が進むと全体の質は良くなるはずで、NVCAによると投資のリターンは過去5年は2.7%、過去3年は9.6%、直近の12ヶ月では 18.1%と改善しているということです。

ところが、このリターンについても懐疑的な意見もあるようで、PEHubでは次のように言っています。

As I reported a few months back, the average VC fund raised between 2001 and Q1 2007 have a median IRR of -2.6 percent. And it’s even worse for funds raised since 2003, where it comes in at -5.7%, with the upper quartile benchmark at -0.2 percent. In other words, more than 75% of VC funds raised since 2003 are underwater.

2003年以降のファンドではマイナスだと結論付けるには時期尚早な気もしますが、どうなんでしょう。

VCの数が半減したとはいえ、ベンチャー投資に流れ込む額が減ったわけではないようで、2000年にはファンドの規模は平均$100Mだったのが、 2006年には$200Mと倍になっているようです。それでも、このブログでも何度か触れていますが、現在のように資金需要が少なく一件ごとの投資額が少ないような流れが構造的な変化であるならば、今後も更に淘汰はありそうですね。より資金を必要とする業界・業種に投資できたり、様々なステージに投資できたり、質の良い小額のディールを数多く築くことができたり、タームを工夫する等、フレキシブルに対応できるVCのみが成功していくのかもしれません。

1社ごとのファンド規模が増えても、そのファンドをフルに活用して全体で大きなリターンを上げることが出来なければ、ベンチャー投資自体に流れ込む資金が萎んでしまうので、起業家のためにも頑張って欲しいものです。私もM&Aを通じてVCにリターンを出す側ですので、他人事ではありませんが。

今日はこんなとこで。ではまた。

交渉の掟

どうも。今日は交渉の話です。

交渉というのは企業間の契約や年俸等の大事ではなくても、実は日々の生活の中にも結構あるものです。そのように認識しないものの、「お皿洗うからゴミ出してきて」というのも交渉の一つですし、我々の生活は交渉の積み重ねと言えるかも知れません。それなのに、交渉の仕方については学校教育で教えてくれるわけでもなく(少なくとも私は習ったことはありません)我々の多くは、知識も技術も不足しているのかもしれません。もったいないですよね。

細かい交渉の技術はさておき、良い条件を引き出すために一番効果的なことは何かと言えば、いつでも自分から交渉を打ち切れる状況でいるということだと思います。これは覚悟とかハッタリとかではなくて(時には必要ですが)、常に他の選択肢を用意しておくということです。

例えばVCから資金調達する際に、バリュエーションや役員構成、株主比率等において最適な条件を得るためにはどうするか?

複数のVCと同時に交渉して其々の条件を引き出しつつ、そのVC達がベストオファーを出すべく競争するように促すのです。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、余りにも多くの場合、起業家は一社とのみ話を進めて、頓挫したら別の一社と新たに話を進める、というシリアルなプロセスを取りがちだという現状があります。一人で何役もこなす創業者が、日々の業務に奔走しながら資金調達することが多いので、時間的にも制約があり難しくはあるのですが、交渉を優位に進めるには、一時期にできるだけ専念して複数の関係者をマネージする必要があります。

これはM&Aの場合も同様です。自社を売却するにあたり、一社とだけ交渉していては良い条件を引き出すのは非常に困難です。「他社と話していることがA社に知れたら、A社が逃げてしまうのではないか」という心配を時々耳にしますが、そんなことはありません。もちろんA社は大企業vs.ベンチャーによくある立場の差に基づいたその恐怖心を煽るべく仕掛けてきますが、それは交渉の戦術であって、当社がA社の欲するものをもっている場合、A社が離れてしまうことはありません。

ベンチャー企業の売却における、こうしたパラレルな交渉の必要性については他にも様々な要素がありますので、後日また触れたいと思います。

今日はMLBのプレーオフを見ていて遅くなってしまったので、短くこんなとこで。

ではまた。