tech venture business » Archive of '8月, 2007'

実はよくある創業者間の対立

どうも。今日は共同創業者、創業メンバーの話です。

良いチームを作ることの大切さはよく言われることですが、人数の少ないベンチャー企業となるとその重要度は更に増すように思います。特に創業メンバーというのはビジョンをシェアし、基礎、カルチャーを形成する特別な役割を持っていますから、複数の創業者がいる場合、お互いを補完しあいながら良い関係を保ち、日々の困難を乗り越えて楽しみを分かち合うことが必要なのですが、何せ人間関係なので、これが難しい。友達同士で始めたベンチャーでも、諍いは結構あるものです。

そこで今日はThe Dark Side of Startups: 5 Corrosive Co-Founder Conflictsという興味深いエントリーがあったので、要旨を意訳しつつ触れたいと思います。ベンチャーをダメにする5つの創業者間対立として、よく起こる創業者間でのもめごとを分類しています。

1. The “Who Gets What?” Conflict:
「誰がいくらもらうのか」を巡る対立

This conflict is likely the most common. Anything that impacts the amount of money made for the various founders has the potential to generate conflict. …

最も頻繁に起きるのが、お金にまつわるもの。創業者各人の経済面に影響のでることは対立の原因になりやすい。持株比率、給与に関して誰が幾らもらうのか、なぜその割合なのか、誰が変更することができるのか、創業者の一人が辞めたらどうするのか等々に関してもめることがある。
上手くいけば、議論や交渉を重ねることで(場合によっては公平な外部者を交えつつ)問題は解決するが、悪い場合は其々が弁護士を雇って契約書を巡る不愉快な争いになることもある。

2. The “I Work Harder Than You!” Conflict:
「お前より俺のほうがもっと仕事してる!」を巡る対立

It is mathematically impossible for each founder to work at exactly the same levels in a startup. It is natural for each co-founder to invest time/energy based on her situation…. When founders begin arguing about who is doing how much, this can often be rooted in the “who gets what” conflict.

創業者各人が全く均等なレベルで仕事をすることはあり得ないので、各々の状況に応じた時間とエネルギーをベンチャーに注ぐのが普通である。各々の状況とは、その人のワークスタイル、家族等への義務を差し引いた活用可能な時間、そしてそのベンチャーに抱く情熱(あまり言われないことだが創業者間での情熱レベルには実は差があるのだ)等が含まれる。
この対立は1の「誰がいくらもらうのか」に発することが多い。例えば俺はあいつの2倍働いているのだから、2倍の株をもらって当然だ、など。

3. The “Who Gets To Decide?” Conflict:
「誰が決定できるのか」を巡る対立

If you and your co-founders are well matched, chances are your skills and talents are not totally overlapping (i.e. they are good at some things and you are good at others). This resolves most of the “who gets to decide” issues as lots of decisions fall into the area of
expertise of one co-founder or another. If the founding team is functioning well, most decisions never become issues. But, there are two areas where issues do arise: When you both have some background/expertise in an area (or believe you do) and when neither of you has any background — but both have opinions….

創業チームが良くできていれば、基本的に意思決定が問題になることはない。なぜなら各々が得意分野が異なるため其々の専門領域で決定がなされることが通常だからだ。意思決定が問題になる状況は二つある。一つは創業者二人の領域がかぶっているかそのように見える場合、二つ目は誰も経験がないのに皆意見だけはある場合だ。後者に関しては、初めて起業した際の資金調達が良い例。資金を外部調達すべきか、だとしたらどこから幾ら調達するのかに関して意見が大きく異なり対立することがある。
この対立は詰まるところ創業者各人の個人的なゴールの違いに拠るものだ。ある人は支配欲があったり、またある人は特定の結果を求めていたり(例えば著名な VCから資金調達をすることによるステイタス)、またある人はただ面白いものを創りたいだけだったりする。そこで、ある決定が個々人のゴールに影響を及ぼすことになるとピリピリしてしまうのだ。この件は早期に話し合うのに越したことはない。

4. The “I Can’t Stand Jill, One Of Us Has To Leave!” Conflict:
「あいつにはもう我慢できない。あいつが辞めるか俺が辞めるかだ!」を巡る対立

This is the worst. If the situation degenerates to the point where two co-founders are so conflicted that one or the other has to leave the company, several bad things can (and likely will) occur. In some situations, it’s not the loss of a co-founder that’s the most traumatic for the startup — but the time leading up to the loss. If there are other members on the team, their morale is impacted. If there are other co-founders (besides the two in conflict), they are pushed to “take sides”. Lots and lots of unpleasantness….

この種の対立が最悪である。創業者間の軋轢が悪化してどちらかが辞めざるを得ないという状況になると、いくつかの悪い事態を引き起こしがちである。チームのモラルが低下したり、争っている両者以外に創業者がいる場合には、どちらかの味方に付くはめに追い込まれたり、とにかく嫌なものだ。
場合によってはベンチャーの成長に合わせて創業者の一人が去ることが良い場合もあるので、関係者全員で最善策を検討すべきだ。

5. The “We’re Going Down In Burning Flames…” Conflict:
「俺達はもう終わりだ…」を巡る対立

In my experience, most startups have near-fatal experiences regularly…It could be some major product issue. Could be the potential loss of a significant client…. Whatever it was, something really bad was going on and it was easy to come up with all the reasons why the company would just not be able to survive this setback and the “why don’t we just cut our losses” type thinking begins. The conflict arises because not all the co-founders will see the situation in the same way. Some, because they’re natural optimists (like me) and will ignore the evidence. Others, because they are influenced by having too much, or too little at stake in the game. Regardless, the conflict arises because one or more co-founders want to just go ahead and call it quits — and the others do not. As is usually the case in these situations, there’s no clear answer….

大多数のベンチャーは瀕死体験をよくしている。製品に関する問題だったり、主要なクライアントを失ったり等々、例は幾らでもあるはずだ。その場合に、今回こそダメだという理由を思いつくことは容易で、この辺で出血を止めるべきだという発想が生じてくる。ここで対立が生まれるのは、全ての創業者が状況を同様に判断するわけではないからだ。ある人は根っから楽観的で証拠を無視することがあったり、またある人はその状況に深
く関わりすぎているか関係が殆どないかで思考が偏っていたりで、要は止めたい人と止めたくない人がいるのだ。
止め時はなかなか分からないし、もし正解が分かっても回りを説得するのは難しいから、この対立はなかなか厄介だ。

さて、如何でしょう。どれも確かによくある話で、皆さんの中にも経験のある方がいらっしゃるかもしれません。これらはそのまま家庭にも当てはめることが出来るくらい、根本的な人間関係の難しさから生じるものだと思うんですね。なのでこれという対処法があるかというと、残念ながらそうでもない気がします。こういう事が起こり得るということを念頭においておき、早期に意思決定、責任範囲、お金に関すること等についてしっかりと話し合ってルールを決めたり、問題の兆候が出てきたら先延ばしにせず、オープンに話し合うというカルチャーを作っていくしかないのではないでしょうか。

2の自分の方がよく働いている、という対立に関しては、費やす時間そもそもに文句がでることもあるとは思いますが、それとは別に、だれがどのくらい会社に貢献しているか、ということで対立することも多いと思います。ある人は他の人がやっていることが大して重要ではないと思っていたりで統一見解があることは稀なように思います。誰でも自分のやっていることが一番価値があると思いたがりますし、色々なファンクションが機能するからこそ会社が動いているということを見落としがちになってしまうのかもしれません。よくあるセールスと開発の人の衝突もその例かと。

5の終わりの話に関連しますが、M&Aで事業を売却することに関しても、かなり意見が分かれることがあるのはご想像がつくかと思います。他の会社の一部になることが本当に良いのか、だとしたら幾らが妥当なのか、いつするのが良いのか等、難問です。でも、ベンチャーを起業した以上M& Aの可能性は常に考えておくべきで、特に欧米ではそれを前提にしている場合が多いので、5のように酷い状況になることは少ないという印象です。VCが多数株主だったりすると選択肢がないので、あっさりと決まりますが、自己資金でやっていて創業メンバー数が多い場合は、皆の意見を纏めるのに非常に苦労するようです。

今こうした問題に苦労されている方、自分達だけじゃないんだと思うと、結構冷静に話し合いができると思いますのでぜひ解決に向けて話し合ってみてください。これから数人で起業される方、こういうこともあると念頭にいれて、でも怖じけることなく立ち向かってください。

今日はこんなとこで。ではまた。

自社技術の素晴らしさの伝え方

どうも。日本は熱帯と化しているらしいですね。みなさまご無事でしょうか。

こちらは涼しいのですが、しばらくクライアントの技術レベルのプレゼン資料を作るのに熱く格闘しておりました。私がサポートしている売却側に立った M&Aのプロセスでは、そのベンチャーの情報を段階的に開示し、興味を示す企業を絞りつつ、対話を進めていくわけなのですが、最初の企業紹介と最後の詳細なデューディリジェンスの間にあるステップで、どのように中身を示していくかというのは、いつもかなり悩ましいものがあります。

私の場合はテクノロジーベンチャーを扱っているので、主な内容はそのベンチャーの「技術の素晴らしさ」になるわけですが、「素晴らしさ」といってもアカデミック・科学的な観点からではなく、相手企業が現在抱えている穴、そして今後立ち向かうであろう困難をどのように解決できるのかを、宣伝的ではなく且つ説得力のある形で示す必要があるのです。

ベンチャー企業がソリューションをお客様相手に説くことは日常茶飯事なのですが、この場合違うのは、M&Aの相手候補というのは通常そのソリューションのエンドユーザーではないことです。相手候補はそのベンチャーの技術をそのまま或いは自社の既存製品・技術と合わせることで、彼らのエンドユーザーに提供するために、買収を検討しているのです。よって、通常行っているようにソリューションを説明するだけでは不足で、その一歩先を行く必要があります。What we doではなくhow we do what we doに深入りするという感じなのです。

こういった深入りのレベルは技術によっては明確なものもありますが、ソフトウェアはかなり厄介です。コードを見せるわけにもいきませんし、お偉いさんに見せてもしょうがないですからね。そこで深入りした説明をと頼むと、あらゆるフィーチャーの詳細を羅列してくる場合がどうしても多いんですね。資料作りにおいて、そこから先に進むのに難しい点が大きく分けて二つあります。

一つは、どんなに詳細であろうとも、それではwhatの詳細であって、決してhowの説明ではないということを伝えて理解してもらうこと。こちらがどのような情報をどのようなレベルで求めているかを、ベンチャーのCTOやVP of Engineeringに分かってもらうのには常に苦労しています。概念的だったり必ずしも客観的ではないものをコミュニケートするという難しさがあるのと、そもそもディテールとサブスタンスとでも言いますか、状況を鑑みた上でのただの細かい話と実質的な深い中身の区別が出来ない人が多いのだと思うのです。もちろんくっきりと線が引けるわけではないですが、そうした区別を念頭に置くことはあらゆる場面で重要だと思うのですけどね。

もう一つは、技術的なhowの内容をどのように分かりやすく示すかということです。パワーポイントにフォント9の文章で説明するわけにはいきませんので、チャートやポンチ絵で視覚化することが効果的なのですが、良い視覚化をあみだすのは簡単ではなく手間ひまのかかる事です。私はそういうことを前職でかなりやってきたので、本業を超えて実際に手を動かしてお手伝いするのですが、いつもクライアントと共に産みの苦しみを味わうことになります。

そんなわけでかなり格闘していたのですが、ようやく光が見えてきたので、後はひたすら作りこむだけだとホッとしているところです。今日の話は何の結論もないのですが、趣旨は違えど日々のオペレーションで似たような経験をされている方もいるかなと思いシェアさせて頂きました。特にディテールとサブスタンスの件については同様の問題意識を持たれている方がいらっしゃったら、ぜひ対処経験談をお聞かせ下さい。

では今日はこんなとこで。