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どうも。また一週間の始まりです。今日は寒いし雨ざーざーなので軽くてちょっと暖かい話を。
これまでにベンチャーを起業すること、特にインターネット系の企業を立ち上げることがとても安くなってきている、そのためVCから投資を受けずにやっているベンチャーも増えており、VCのビジネスも変化しつつある、そしてこれは構造変化だと思う、という話を何度か書いてきました。その路線の話が最近更に多く語れるようになってきました。先週では、NYタイムズの記事やTechCrunchでのPaul Grahamのインキュベーター Y-Combinatorに関する記事などが例です。今までの繰り返しになるので各記事には言及しませんが、ご興味があればご参照を。
ベンチャーを起業して経営していく際に、このように自力或いは小額の投資を元に起業する場合は特に、コストをできる限り抑えることが重要です。まあ、当たり前ではあるのですが…。でも前回の90年代バブルの際には資金投入量も多く、正反対にかなり派手にパーティーやらオフィスアメニティーなどに散財されていたという経験もありますので、渦中にいるとそれほど自明ではないのかもしれません。で、気になったのはVentureBeatのこの記事(Founders should live on Ramen noodles, and $2,000 a month)です。Founders should live on Ramen noodles, and $2,000 a month
いえ、記事の内容自体がどうの、というわけではないのです。気になったのはラーメン。そういえばアメリカでこの手の起業家ケチ生活に言及する際には、かなりの確率で「ラーメン喰って生き延びろ」的な表現に出くわすのです。あんまりにも頻繁に聞くし、この記事ではご丁寧にまるちゃんのインスタントラーメンの写真つきということもあり、ついつい、なんでラーメンなんだろ?と気になってしまったわけです。
この場合のラーメンというのは写真にもあるとおり、昔からあるような何の変哲もないサッポロ一番とか日清カップスターとかです。アメリカには結構前から広まったらしく、$1くらいで買える確かに安い代物です。でもなぜこの例えがマックバーガーとかもっとアメリカ的なものではないのか?
数人に聞いたところ、その例えがインテリ層向け(最低限大学に行った人の意)だから、とのこと。別に彼らがマックバーガーを食べないわけでは無いのですが、「日本食」とか食べてしまうグローバルな感じが教養と比例するので、少なくとも表現としてはアピールがある、のだそうです。実際、アメリカの大学生はよくインスタントラーメンを食べているらしいです。なので学生時代のジリ貧に戻って生活せよ、くらいの意味で、その学生ジリ貧のシンボルがラーメンなのでしょう。その階級っぽい概念があるところがアメリカらしいと思いました。
日本だと何でしょうね。まあカップラーメン、コンビニ弁当、吉牛、とかですか。学生やら教養やらに関わらず、日本人全般に適応されるものなので、それも日本らしい。日米の更なる違いといえば、健康志向。日本だと「安くて栄養バランスが取れる」という発想がありますが、アメリカはこの辺が弱い。カロリーとか脂肪は気にしても栄養バランスに関する知識がなさすぎるのです。本気でインスタントラーメンばっかり食べ続けてたら病気になると思うのですが、もしかしたら日本食=健康とか思ってたりして…
どうでしょうね、将来スターになるかも知れない起業家達に向けて、ラーメンに代わる安くて健康なちゃんとした食べ物をケータリングするってのは。なんならストックオプションで払ってもらってもいいですし。意外に儲かったりして… 一緒に仕出しビジネスしたい方はご連絡を。
とまあ、ラーメンに気がいってしまい妄想気味です。サウスベイの方では結構まともなラーメンが食べられるそうで羨ましいのですが、サンフランシスコでは厳しいです。スーパーで買った生ラーメンを家で工夫して食べるほうがまだイケます。
今日はちょっと脱線してしまいました…そろそろ家に帰ってラーメン食べます。では。
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この数年あまり顔を見ないと思っていたら、Jeff Bezos、またまた驚かせてくれました。Amazonがウェブサービスの延長で自社のデータセンターをサービスとして提供し、ユーティリティ/オンディマンドコンピューティングビジネスに突入というのです。このサービスは数ヶ月前に開始されたようですが、今週のWeb2.0 SummitでのTim O’Reillyとの対談で大々的にアナウンスされました。
主なサービスは二つでS3 (Simple Storage Service)とEC2 (Elastic Compute Cloud)です。簡単に言うとS3はストレージを「あちら側」で提供するサーバーホスティングで、EC2は各種サーバーコンピューティングを「あちら側」でレンタルとして提供するものです。
Jeff Bezosはこのサービスを “We make muck so you don’t have to,” というように銘打っています。つまり、サーバーメンテナンス、ネットワーク帯域確保、異種のハードウェアやソフトウェアを管理するといった”muck”(泥仕事)を受け持ってあげるから、君たちは本業に専念できるよ、ということです。これらのサービスは廉価で、これまでも何度か記述しているように、安くベンチャーを起業し経営することを更に加速させる可能性があります。現在のところユーザー数は20万でインターネットベンチャーだけでなく、MicrosoftやXeroxそしてあのSecond Lifeも既に顧客だそうです。
Amazonとしては既に多大な投資により内製しているインフラの一部をサービス化することで、稼働率を上げつつ新たな収益源とすることを主な目的としていますが、恐らくウェブをプラットフォームとして捉えそれをおさえるという方向を志向しているのでしょう。テクノロジー企業というよりはリテールのビジネスとしてすっかり捉えられていたAmazonがこのサービスをするということで賛否両論様々な意見が飛び交っています。上手くいくかは時を待つしかないですが、私は非常に興味深い戦略だと思います。前回のバブルの寵児で起業してから10数年経った今も(そんなに経っているということがちょっと信じられないですが…)、起業家としての先見の明と挑戦する気合を保っていることに思わず感銘を受けました。
この件に関してはBusinessWeekのフィーチャー記事(Jeff Bezos’ Risky Bet)詳しいのでぜひご参照を。(長いですが…)
これまでも述べてきたように、多くのインターネット系ベンチャーは近頃非常に安く起業できますが、ユーザーが急激に増えてくるとこのITインフラに対するコストはかなりのものになる場合が多いです。ネットワークやハードウェアにかかるコストに加えて、それらを効果的に管理していくのはかなりの労力と資力が必要で、大概のベンチャーにとって差別化に繋がるコアコンピタンスではありません。確かにGoogleはこれを内製していることが差別化にもなっていますが、これは特例と見るべきだと思いますし、今からこのプラットフォーム競争に挑むのは厳しいと思います。
特にWeb2.0的なサービスではスピードとスケーラビリティが重要で、広告モデルで利益を上げるにはコストを抑える必要があります。ある程度の規模になってからデータセンターを自前にすることも考慮すべきかもしれませんが、当初はAmazonのサービスや他のデータセンターサービスを上手く活用して、ユーザーに対峙する自社の本業の部分に注力して他社との差別化を確立するのが得策のように思います。
以前、アイディアやプロダクトに関してフォーカスすべきということを書きましたが、オペレーションに関しても同様です。資金がないからといって自前で総べてやろうとすると機会損失になりますし、自社の強みにフォーカスして、他社のサービスを活用できる部分はどんどんアウトソースするということが重要だと思います。以前、優秀なPh.D技術者3人でやっているHDD関連のベンチャーに会う機会があったのですが、彼らは自らエンドプロダクトを組み立て配送までし、しかもカスタマーサポートまでやっており、そういった業務に多大な時間をとられ残念ながら重要な技術開発ができなくなっているという状況でした。こうなったら本末転倒です。
ベンチャーのリソースは限られており、大企業のように全てを取り込んで非効率を許容するようなラグジュリーはありません。自社のコアを明確に認識し、場所は選び賢く戦うことが必要です。
今週はこんなとこで。皆様良い週末を。