tech venture business » List of Author's posts

ベンチャーにこそ必要な営業プロセス

どうも。年末ともなると更に緊張感を増すもの、といえば営業がありますが、今日はその話です。

私は以前、経営コンサルティングの会社に勤めていたので、業務プロセス設計等に関わることも多く、業務を属人の部分とシステム化(コンピューターを使うという狭義ではなくて方法論・プロセスをかっちりするという意味ですが)すべき部分に分けて考えて、後者をしっかりするということを遂行したりしていました。

その中でもシステム化に対する反発が一番大きかったのが、営業の分野だと記憶しています。営業はケースバイケースで、熟練の技が活きるもので、営業マン個人個人が経験とノウハウを構築しているものだ、という見解が多かったのだと思います。もちろん属人的なスキルによる部分も大きいのですが、一方で効率的・効果的に組織として営業をしていく際にはシステム化できることも多く、こういった見解は一部非効率なことに対する言い訳も含まれているように思っています。

コンサルティング会社が入るような大企業だけが抱える問題かというと、そうとも言えません。私が今勤めている会社はとても小さいのですが、小さいが故に「そんな面倒くさいことすると規模に見合わない管理コストが発生する」というような理由で、あらゆることがファジーだったりします。どの程度かっちりするかというのは、もちろん規模とのバランスが必要ではあるのですが、よくよく考えてみると、大企業は非効率をある程度許容できるのに対して、逆に小さい企業は無駄があっては生きていけないはずなのです。

だからこそ、ベンチャー企業は明確なプロセスや指示がなくても個人個人がきちっと仕事をできるような優秀な人材を雇うべきだ、という話もあるのですが、中々それで効果的に行くかというとそうでもないのが現実で、クライアントのベンチャー企業でもこうした問題はよく起こっています。システム化というのは、なにも無味乾燥にするというわけではありません。なるべく曖昧な部分を削って、チェックリストのような形ででも、ステップをはっきりさせることで得られる部分が大きいと思うのです。

この点に関して良く纏まったものがとあるVCのブログにありましたので、引用したいと思います。営業において、こうした明確なプロセスがないとどうなるか。

# Salespeople wasting huge amounts of time on deals that are hopeless, because there’s no enforced checklist that keeps them from continuing to pursue opportunities where essential events aren’t being checked off

# Sales cycles that languish while salespeople have “good meetings” instead of checking off the next task on the sales process checklist

# Executive management, sales management, and BOD members searching for the magician that will improve the “black magic” sales situation instead of incorporating and enforcing process that ensures success independent of superstar performance

# Turnover in the sales organization but without improved performance

# A lack of predictability in sales performance (lumpy and generally random sales results)

# A stagnant pipeline – sales people can’t handle as many deals as they should be because they’re spending too much time on deals they shouldn’t be working on and the deals themselves take longer than they should because they’re not actually being pushed through a real process

#”Fuzzy” pipeline reviews (where every deal has a story associated with it, but where the basic questions of where the deal stands are never really answered)

私は上記のどれも、あーよくあるなー、という感じなのですが、如何でしょうか。もちろんマニュアルでなんでもすればいいという話ではなくて、優秀な人であれ何であれ、組織が前に進むためには指針が必要であり、その中で個人が力を発揮すべきだと思うわけです。営業ではターゲットの選定からパイプラインをどのようにどんなペースで進めていかなくてはいけないかということはハッキリしておくべきで、見込み顧客の購買パターンを理解したり、その社内の意思決定の綱をうまく渡ったり、自社が提供する製品やサービスの価値を効果的に伝えたりということは、属人的なことも多く個人個人が頭とスキルを思う存分活用するところだと思います。

最近は新たなプロジェクトも始まり急がしく、会社の将来に重要な管理面への考慮が先延ばしになってしまっているのですが、来年に向けて、営業やその他の面でシステム化することを色々と考えて再度提案しようと目論んでいるところです。振り返るのに良い時期ですし、皆様もぜひご一考あれ。

今日はこの辺で。ではまた。

コミュニスト的Craigslistの粋

どうも。あっという間に12月も半ばですね。最近こちらも寒い日が続いて参り気味です。

さて、先日別件で調べ物をしていたら、ちょうど1年程前の記事でCraigslist関連のものに遭遇しました。はご存知の方も多いと思いますが、この辺では特に人気のある、生命線に近いコミュニティーサイトです。もう十年近く存在しており、UIもシンプルで、1回目と今回のバブルに脇目も振らず淡々と成長し皆に愛されているサービスです。ご多分に漏れず私もよく使わせてもらっています。

営利主義ではなくユーザーの求めるもののみを提供するという信念を貫く企業として有名ではあるのですが、前回の動画にあったように一攫千金モードが高まっている昨今、この地でその姿勢を続けていることに新鮮さを感じざるを得ません。数年前にeBayが25%の株を取得してどうなるかと危ぶまれたこともありますが、その影響は殆どみることが出来ないくらいです。

この1年前の記事ではUBS global media conferenceでの質疑応答におけるCEOのJim Buckmasterとウォールストリートの人々との間の噛み合わないやりとりに触れています。単純に要約するとこんな感じです。

UBS analyst: What are your plans to maximize revenue?
Craigslist CEO: Craigslist does not maximize revenue. It’s not part of the goal.
Audience:..?..?..?….

Craigslistは現在450都市にサービスを展開しており月間ページビューは毎年200%成長を経て約80億を誇りますが(その他統計の詳細はこちら)、社員数は25名。 サービスの殆どは無料で、AdSenseや他のバナー広告等は一切なく、収入源はその内7都市にだけ課金している求人広告と賃貸広告料(求人:サンフランシスコ $75、その他6都市 $25、賃貸:ニューヨーク $10)のみです。トラフィックだけでもすごいことですし、本気で収入を増やそうと思えば企業価値はとんでもないことになると言われているのも納得です。

しかし、掲載ボリュームがかなりありこれだけで相当の収入となるため満足しているし、大金持ちになっても良いことないし、ユーザーの要望に応えるだけだからというCEO。理解不能とばかりそれでも食い下がるアナリスト。

UBS analyst: How about running AdSense ads from Google?
Craigslist CEO: Craigslist has considered that. We even crunched the numbers, which were quite staggering. But users haven’t expressed an interest in seeing ads, so it is not going to happen.
Audience:..?..?..?….

ウォールストリートの人々を中心としたその場の聴衆の表情は、なんとも面白かったでしょうね。これがまたJim Buckmasterが抑揚もほとんどなく淡々と当然のように語るので、かなり異星人に見えたことでしょう。その場の状況をZDNetのライターがJim Buckmasterは“delightfully communist”そして聴衆は“confused capitalists wondering how a company can exist without the urge to maximize profits”だと記しています。

こうしてよく共産主義者だと言われる彼らですが、そういうわけではなく、CEOも言っている通り、ただ足るを知る人々なのだと思います。まぁ、アメリカ人一般には受け入れ難いですよね。利潤を追求しない=コミュニストというのは資本主義の権化のこの国では通ってしまうことかもしれません。

どちらが良い悪いという話ではないのですが、何かの信念を貫くというのは、それが金銭的なものであれ別のものであれ、格別の充足感がありますし、それが他の人と価値観が違っていようとも、状況が許すのならばそれで良いではないか、と思います。状況が許すということは、私企業でかつVC等の投資家がいないこと、そして一緒に働いている人達がその理念を共有していることです。そこを固持していくことは、それはそれで非常に難しいことでしょうけど。

そんなわけで、特に結論もないのですが、今になって何だか新鮮だなと思った次第です。では、また。

P.S. 遅ればせながら、シリコンバレーツアーの告知を貼らせて頂きました。 締め切り間近だと思いますので、興味のある方は奮ってお申し込み下さい。私も次回はぜひボランティアとして関わらせて頂きたいと思っています。