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仕事の定義、自分との距離

どうも。このところ毎日雨で寒くて、ほとほと嫌になってきました。春が待ち遠しいものです。

さて、今日は仕事について。超一流のベンチャーキャピタルであるKleiner Perkins Caufield & Byersの創業者の一人、Tom Perkins氏はそれこそシリコンバレーのパイオニアとして米経済界で大変重要な方ですが、先日見たインタビュー記事で興味深いものがあったので引用します。
< 先日の記事で日本語訳の要望を数名の方から頂きましたので、今後は出来る限り意訳付でいきます>

Q. Where would you be if you were just getting into the Valley today?
今からシリコンバレーにやってくるとしたら、何をやりますか?

A. Always as an entrepreneur. Never as a venture capitalist. My advice: You can go to Wall Street and get in on the ground floor of the next scandal. And there will be one. You can become a venture capitalist, and you might do alright. But if you really want to have some fun, make an contribution, and maybe make money, you become an entrepreneur. It’s a buyer’s market for entrepreneurs. There is so much venture capital out there. As I said in my book, money is the least differentiated of all commodities. And venture capitalists are in the business of selling money.

起業家だね。決してベンチャーキャピタリストではなく。(私は以前からずっと起業家だったしそれは変わらないだろう)
私からのアドバイスをしよう。君はウォールストリートに行って、次に起こり得るスキャンダルに最初から関わることができるかもしれない。またはベンチャーキャピタリストになって、まずまずの成果を得られるかもしれない。しかし、楽しんで、貢献をし、もしかしたらお金儲けができる、そういうことを君が本当に望んでいるならば、起業家になりなさい。今は起業家にとっては買い手市場だ。世の中にはベンチャーキャピタルが溢れているからね。
自著<Valley Boyのことだと思います-筆者補足>でも述べたとおり、お金というものはあらゆるコモディティーの中でも最も差別化されていないありふれた代物なのだよ。そしてベンチャーキャピタリストというのは、そのお金を売るというビジネス(にいるセールスマン)なのさ。

この言葉、何と言うか、ちょっと驚きました。特に最後の部分。通常VCという職業にはもっと格好良いイメージがありますよね。このVC業界を作った人自身からこの言葉が出てきたのが、新鮮な感じです。彼自身の立ち位置はあくまでも起業家で、お金を売るビジネスというコンテンツ自体は二の次という感じなのでしょうか。今VCをされている方、VCを目指して厳しい競争を勝ち抜いているMBAの方なんかが聞いたら卒倒する人もいるかもしれないですけどね。

でも、よくよく考えてみると、どの既存ビジネスもミッションとか社員其々が抱いている意義とか、表向きの顔や正当化とか、そういったものを全て取り除いて、どういうビジネスモデルなのかという根幹の部分だけを表現してみると、意外とそんなものなのかもしれないですね。例えば、他人のお金を運用するビジネスとか、頭脳労働を時間単位で提供するビジネスとか、知識を売るビジネスとか… 世間一般では華々しいイメージでも、そのように紹介されたら働こうとする人は少ないかも。だからこそ、ミッションとかビジョンとかが重要だとも言えますが。

仕事との相性、或いは人生と仕事の関係を考えるときには人それぞれ重点が違うのだと思います。会社のミッション自体が合っていることが重要な人、コンテンツ自体が合っている事が重要な人(極端な例:おもちゃが好きだからおもちゃ会社で働けるなら経理でも営業でもいい)、ファンクション自体が合っている事が重要な人(極端な例:複雑なプログラミングができるのならばミサイル発射機でもOK)、或いは業務における何がしかの側面が合っている事が重要な人(例:人にたくさん合える、分析に溺れることができる)等々、色々とあることでしょう。恐らく先にあげたビジネスモデル自体が合うというのは少数派ではないかと思います。起業家としてそういうモデルを色々と立ち上げることが好きというのはありでしょうが。

常にこれらの組み合わせだったり、重点が時と共に異なるということがあるかとは思いますが、企業で働くにしても、自分で起業するにしても、こういう因数分解的な自分の志向は良く考えたみた方がいいような気がします。これは裏返せば、自分の仕事の定義は、業界や職種や肩書きに関わらず自分で創ることが可能で(例:自分は金融の知識を活かす事で死亡率を下げることを仕事としています、等)、自分が幸せであるためには、自らの定義に沿うように自分の進む方向を選んだり、道がなければ起業して切り開いたりすべきだということかもしれません。

ちょうど最近考えていたことにかする気がして書き始めたのですが、イマイチ纏まりませんでした。取り留めなくてすみませんが、今日はこの辺で。

オープンソースのM&Aが熱い

どうも。前回のエントリーにはすごい数のアクセス及びブクマを頂きまして、かなり驚きました。ネットワーク効果の大きさを改めて認識した次第です。初めて立ち寄られた方、ぜひまたお越し下さいな。今年はぜひとも、α、β…θブロガーくらいを狙っていきたいものです。

さて、今日はつい先日の、SunによるMySQL買収に関する話を。SunがLAMPのMを$1billionで、ということですが、このM&Aは幾つかの重要な意味をもっているように思います。

一つ目は、Sunのこれからの方向性としてのもの。過去何年かにわたって混迷を続けてきたSunですが、この買収によってオープンソースソフトウェアの一大支持者、クラウドコンピューティングの覇者としての脱皮を図るつもりのようです。これはある意味ブランディングでもあり、MySQLから得られる収入と新たな顧客群、或いはDB進出も重要ですが、それ以上に、周りから再度「クール」だと思われることの意義は大きいです。

実際、SunはこのところWeb2.0系のネットベンチャーにもかなりアプローチしていて、私が参加しているSF Tech Meetupでも数ヶ月前からイベントスポンサーになり、ベンチャー支援プログラム(Sun Startup Essentials program)の宣伝や無料プレゼントをしたり、と地道にアピールしています。Solarisをプッシュするのかとか、PostgreSQLはどうなるんだ、とかの疑問もありますが、Jonathan Schwartz下のSunは、どうやらアイデンティティを再構築していけるかもしれないという気配がしています。

そして二つ目は、やはりオープンソースが確実に市民権を得てきているということ。これは凄いことですね。今後も更に商業的なオープンソースは増え、エンタープライズ仕様、更にミッションクリティカルなシステムにも取り入れられてくると思われます。そうなるとこれから益々ありそうなのが、、、

そう、三つ目、オープンソース企業間、或いは大きなIT企業によるオープンソース企業のM&Aの増加です。451グループによると、オープンソースがらみのM&Aは2003年には6件、2004年には3件、2005年には15件、2006年には22件あり、そして2007年には後半にぐんぐん伸びて30件に達しました。そしてこのMySQLですから、かなり旬な感じです。MySQLはIPOを予定して準備していましたし、他のオープンソース数社も今年のIPO候補として挙がっているのですが、今回の件で波はM&Aに向かっているように思われます。

但し、コマーシャルオープンソースは新しい概念ですから、従来のM&Aとは異なる要素が多くあります。通常のM&Aでは支配権ということが大きなポイントですが、オープンソースの場合はコアの技術がパブリックですから、何をモチベーションにどれだけの対価を払うかというのは中々難問です。そして買収する会社が買収後にそのオープン性をどのように取り扱っていくのかというのも、権利や、営利、モラルの観点からも一筋縄ではいきません。また、数多くおこっているようにオープンソース企業同士のM&A(コンソリデーション)ならば分かりやすいのですが、一般のIT企業が買収する場合にはカルチャーギャップの問題も大きいはずです。最悪の場合、買収した矢先に殆どの社員が「そんな邪悪なのはイヤだ」と離職してしまう可能性もあります。この辺りは今後も暫らく手探りが続くのだと思われます。

さて、上記で対価に触れましたが、ちょっとバリュエーションについて見てみたいと思います。MySQLの過去12ヶ月の売上げは一説には$50M弱程。買収額が$1billionですから、20倍ですね。データベースという観点から比較し得るものが近頃ないので、他のオープンソースを見てみます。 RedHatによるJBossの買収では過去12ヶ月の売上げ倍率は13倍。CitrixによるXenSourceの買収ではなんと500倍、Yahoo によるZimbraの買収ではこれまた大きく117倍….。

総じて一般のIT企業よりは高めのようですが、差はかなりありますね。ベンチャー企業のバリュエーションは定石が当てはまらず、結局はM& Aプロセスにおける仮想市場の原理が現実だと私は常々思っていますが、オープンソースの場合は先程述べたような手探り状態のため余計にばらつきがあるように感じます。

とまあ、色々あるわけですが、このオープンソース分野、私は興味津々です。M&Aに関しても今後可能性、実現性をより深く検討したいと思っていて今ちょっと勉強中です。メジャーになりつつあるもの、かなり将来性のあるオープンソースプロジェクトや企業、またオープンソースに関して良い資料などありましたら、ぜひ教えて下さい。

では今日はこの辺で。皆様、良い週末を。