ベンチャー企業と福利厚生
どうも。
今日はAsk the VCのエントリーでベンチャー企業の福利厚生に関するものがありました。事務的ではありますが社員をケアするという重要なことなので触れておきます。
アメリカでは医療保険や歯科保険、障害手当てや生命保険、或いは401K等の年金といった福利厚生は、大変複雑且つ企業ごとにかなりの違いがあります。各企業がどのプロバイダーのどのようなプランオプションを提供し、費用負担を企業と従業員の間でどのようにするかも決められるわけです。大まかに言えば、有名大企業は従業員の負担額が少なく且つ良質のプランを提供し、規模が小さく資金力の乏しい会社だとその逆になるかチョイスが極めて限定されるという図式にはなりがちですが、企業ごとのポリシーは違いますし、個人個人が年俸と合わせて交渉することも多く、同企業の従業員でも差があったりします。
とはいえ、自分がアメリカで起業するつもり、或いは軌道に乗ってきてそろそろ仕組みを作っていかなければと考える際には、何らかの相場が知りたいですよね。先のエントリーではVCから出資を受けているベンチャー企業に関して次のようなコメントがありました。
A typical VC backed company will offer to pay 100% of a good benefits package for the employee and between 0-50% for dependent coverage. A good package will include medical options PPO and HMO and dental, long-term disability and a minimum of 10K life insurance with an option to buy more.
まあまあの包括的な医療・歯科保険を従業員に対しては100%カバーして扶養家族には50%カバーする。それに長期障害手当てと最低100万円程の生命保険(自己負担で引き上げ可能)をプラス。
とまあ一口に言えばそうなのでしょうが、医療保険のPPOといっても免責金額、自己負担比率などのチョイスもかなり幅が広いのが実情です。実は私が今の会社に入ったときには仕組みが何もなくて、結局医療保険のみ提供してもらえることになったのは良かったのですが、私がリサーチ及び比較検討の担当に任命されてしまって、選択肢の多さ、実質的な適用範囲と料金体系の複雑さに、メニュー見ているだけでお腹一杯という状態に辟易した事があります。
私の場合はアメリカの困った医療制度事情に直に触れることになり勉強になりましたが、ベンチャー企業で日々格闘している方々にはこういう作業に時間をかけることはお勧めできません。これから従業員が増えてゆき、より魅力的で総合的な仕組みを作っていかねばならず、支払い等の事務処理も増えるというスケールの問題もありますし、且つ、最近ではコンプライアンスの問題も複雑なので、こういうHRのファンクションをまるごと外部化することをお薦めします。この手のサービスプロバイダーは数多く、HRアウトソーシング、またはPEO(professional employer organization)と呼ばれるものがありますし、更に幅広くバックオフィス全般を担うものもあります。
相場という観点からすると、私の知る範囲では年金に関しては余程の規模にならないと無かったり、外部から資金調達がない或いは初期のベンチャーでは医療保険も一切無しということも多いという印象です。この辺は周りにも聞いたり初期のメンバーのニーズを汲んでバランスを取る必要があるのではないかと思います。
福利厚生だけで参画するベンチャーを選ぶということは稀だと思いますが、唯でさえ先行き不安なベンチャーですから、できる限り他の心配事をさせずにすむようにしたいものですね。
では今日はこの辺で。