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不況下でのエグジット

どうも。今日は不況とM&Aの関係についてちょこっと。

今月初めにアメリカではM&Aも減っているということに触れましたが、今日目にしたレポートによると、この状況下でテクノロジー業界はそれほどひどい影響は受けていないものの、やはりM&A件数・額共にかなり減少しているそうです。

一般的に、景気が悪くなると各社財布の紐を引き締めますので、どうしても必要なもの以外には手を出さなくなり、その選択はより慎重になり長期化する傾向があります。

「どうしても必要」という基準は各社様々ですが、概ね保守的になりますので、私が通常扱っているような「攻めの先行投資」的な案件は外的要因(e.g. 候補として検討していたA社をライバルが買収しようとしている等)がないと難しくなりがちです。但し、現金を大量に保有していて、このような景気状況でも強気に行けるような企業にとっては(e.g. グーグル、マイクロソフト)競争相手も少なく、選り好みでき且つお得にお買物ができる嬉しい状況であるとも言えます。

それから、通常でも売却の準備をしてからクローズするまで平均して半年はかかりますので、更なる長期戦になることを予測して動くように注意して下さいね。

一方で、安定した収益をあげている企業や、本来良質なのに何らかの事情で破産寸前だったり株価が非常に低くなっているような「低価格」な企業は、そうした案件が好きな会社にとっては格好のターゲットになります。テクノロジーベンチャー企業では少ないケースですが。

また買収側の株価が低く金回りが悪い状況なので、株式交換や買収の為に多額の資金調達の必要があるような、つまり手持ちの現金以外の買収案件は成立が難しくなります。逆に言えば、$20MくらいのテクノロジーベンチャーのM&Aにはそれ程影響はないので、大手の戦略にフィットする良いものをもっているベンチャーには引き続きエグジットの機会が開かれているということです。

というわけで、景気がどうだとか統計が何を示そうが、ベンチャー企業はbusiness as usualで前進するのみ、だと思います。運とかタイミングとか、あんまり考えすぎてもしょうがないってこともありますから。

さて、このレポートの中で意外なものが一つありました。それはこのドル安の状況下においても、アメリカ企業が他国の企業をかなり買収しているということです。Q2の数字では全体の40%弱がこうしたクロスボーダー取引ということですが、これはテクノロジー業界においては「良いもの」であればどこにあろうとかまわない、というグローバルな状況が現れているものと思います。

中々のレポートでしたのでこうした統計に興味のある方はぜひ参照してみて下さい。

では今日はこの辺で。

ネットベンチャーはサンフランシスコを目指す?!

どうも。ちょっと間があいてしまいましたが、今日は非アメリカ発ベンチャーがグローバル市場を狙うにはという話です。

先日イスラエル発のネットベンチャーNuconomyのインタビューを見たのですが、その中にイスラエルの起業家はサンフランシスコ及びシリコンバレーに短期間でも来るべきかどうかという話がありました。

NuconomyのCEOは、本国にもVCやネットワーキングの機会などのインフラが育っては来ているものの、本国でのインターネットベンチャーを育てる経験値が低いことや、パートナー企業やジャーナリスト、投資家その他の人々への露出度を高める必要があることから、少なくともCEOやマーケティングの担当は、初期のR&Dを本国で済ませたら早速荷造りしてサンフランシスコに移るべきと言っています。

海部さんが「パラダイス鎖国」に詳述されている通り、本国の市場が小さい場合は、普段使用するものも海外発の製品・サービスであることが多く、企業としても常に国際的な活動を意識しているので、このように営業拠点をアメリカやヨーロッパの大都市に移す、或いは併設するという考えは珍しくはありません。

拠点を移す必要があるかというと必ずしもそうだとは言えないと思いますが、資金や露出などの実質的な点に加え、競合他社や顧客層に対するアンテナも張りやすいですし、何と言うか場の空気みたいなものの利点もあることは否めないような気はします。

それでは、自国にこもらずグローバル市場を目指すと想定した場合に、どの段階で外に打って出るのが良いのでしょうか。

日本などの自国市場が大きい場合は、自国でかなりの成功を収めてから海外展開という形でマーケットを広げることが多いですよね。

一方、小国の場合よくあるパターンとしては、自国或いは隣国でユーザーから何がしかのバリデーションを受けてから、アメリカにBiz Dev拠点をもうけるか頻繁に行ったり来たりするというもの、或いはそれと平行してアメリカ企業への売却を検討するというものです。

例えばスウェーデンの通信ソフトウェアベンチャーだと、まずはエリクソンとパートナーになって、テリアソネラをお客さんとし、その後、エリクソンの既存顧客である他の西欧、東欧、ロシア、中南米、中近東、アジアなどの通信事業者に営業し、それと平行して、アメリカへの進出基盤としてBizDev部隊をアメリカで作ることを検討したり、売却を検討したりという流れなわけです。

こうした法人向けの製品やサービスについては依然としてこれが主流だと思うのですが、最近感じるのは、コンシューマー向けのネットサービスの場合は、外へ打って出るタイミングがそれよりも更に早いかもということです。

先程のイスラエルの例のように、本国でグローバル市場向けの英語でのサービスを開発しベータ版をリリースした時点で、既にCEOや他の数人はサンフランシスコ近辺にほぼ常駐している、というベンチャーには近頃よく遭遇しますし、そもそも当地をHQとして設立して開発部隊は本国だったり、ロシアなどのメジャーなオフショア地においているというのも結構見かけます。

ネットだからどこを物理的な拠点としていようが関係ないはずで、資金需要も低いため膨大な投資家へのアクセスは不必要と思いきや、ネットベンチャーほど早期にこちらに移ってくる傾向が見られるわけです。これはどうしてなんでしょうか。

一つには、ネットゆえの瞬時のグローバル性から、大きな市場で先に注目を集めたもの勝ちという点があるのかもしれないですね。自国である程度やってから海外という展開だと、事実はどうであれ二番煎じだと思われてしまうこともありますし。

二つには、ネット企業のカルチャー的にも分散型のチームが機能しやすく、事業開発はマーケットに近いところでというように、総人数は少なくても適材適所の体制を築く事が可能だという点があるのかもしれません。

まぁ中国はどうかとか、その辺を考え出すとかなり複雑なので深入りはしませんが、これは中々面白い現象だなと思ったので記してみました。日本でネットサービスを作っていて海外市場も狙いたいと考えている方々には、ちょっとこの点を考えてみられることをお勧めします。

ちなみにネットものに関しては、シリコンバレーよりもサンフランシスコ市内の方が盛り上がっているように思いますので、ご見学の際はご注意を。

ちと長くなりましたが、今日はこの辺で。ではまた。