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貧困、起業、資金、そしてインターネット

どうも。最近は工数のかかる仕事が積重なっていて中々時間がとれずにおります。が、今日はBlog Action Dayとのことで、何とか一筆をと。

テーマの貧困ですが、普段テクノロジーとかベンチャーとかM&Aなんかについて書いているのであまり関係がなさそうですが、実は個人的には非常に思い入れがあります。私は大学時代、開発経済学のゼミに所属して主に東南アジアの貧困と発展について考え、当初はその道の仕事をしようと思っていました。それが、どうして今のようなビジネスの世界に進んだかというと、話がかなり長くなるので省きますが、その一つの理由として、アジアを数多く訪れる中で、彼らの豊かさを実感したというのがあります。

もちろん貧困も地域格差も社会基盤の脆弱さも色々とありましたが、多くの人は優しく逞しく、柔軟で賢く、疲弊した我々よりも満ち足りて幸せそうで、いわゆる物質や金銭では計りきれない類の豊かさがそこにはありました。そんな中で、援助とか国策の融資とかマクロの国際協力は、何か違う、と思ったのです。目線の違いとでも言うのでしょうか。

で、もう少し対等な形で個人のエンパワーメントに関わることができればと思いながら今に至ります。ここ数年は、仕事やブログを通じて、起業家のサポートを微力ながらしており、それはこの路線に沿うので充実感がありますが、貧困の問題には縁遠くおりました。

で、ここ暫らく気になっているのが、この両者を融合したマイクロファイナンスだとかソーシャルレンディングとよばれる分野です。こうした金融手法自体はかなり前からありますが、ネットを活用した形態はまだまだ新しく、今後様々な応用ができるのではないかと思っています。

ここではその内の一つ、Kivaを紹介します。これは地元サンフランシスコ発のNPOとして活動するもので、インターネットを通じて、開発途上国の起業家に融資する仕組みを提供しています。

起業家というとベンチャーなイメージになってしまうかもしれませんが、ここでは主に自分の生活を切り開くために何らかの商いをしている人達のことです。企業のポジションに応募することが仕事を得ることだという仕組みは産業化した社会における短い歴史の話であって、世界の多くでは収入を得るためにはにはビジネス自体を立ち上げる必要があり、資金にアクセスがあればそれを実現できる人がたくさんいるのです。逆に我々の方がそうしたビジネスとサバイバルの精神を忘れてしまったのかもしれません。

融資は一口25ドルからと小額で、融資者は、誰がどんな用途の為に幾ら必要としており返済期間はどのくらいかということを比較して、自分が融資したいと思う人やグループに融資します。融資希望者とKivaの間には地元のマイクロファイナンスやその他の機関があり、Kivaは融資者から集めた資金を無利子でその中間団体に貸付け、その中間団体が実際の貸付け(通常有利子)や支援を行います。Kivaはその貸付が公正であるよう管理しています。規定どおりに返済された資金は融資者に返還されるので、融資者は他の人にまた出資したり、Kivaに寄付したりすることができます。

在野のマイクロファイナンス機関と協力してネットを最大限活用することで、言語やコンピューターリテラシーの障壁もある人々が、所属する地域や政府の垣根を越えて世界中の個人から資金を調達するこを可能にする、というこの仕組みは素晴らしいことだと思います。資金による個人のエンパワーメントはきちんと効果もでていて、現時点での融資返済率は98.67%という高さになっています。

ぜひ皆様もKivaのサイトをみて、できたら、果物の仕入代とか、家畜の購入費とか、いろいろな用途に融資してみて下さい。(日本語での詳細はこちら

それからもう一つ、こちらは寄付ですが、私が学生の頃やっていたものを紹介しておきます。こちらはタイ・ラオス・カンボジアの子供達を中学校に通わせる資金を提供するダルニー奨学金というもので、中等教育就学率の低さによる格差拡大に対処する試みです。

というわけで、今日のスピリットに賛同して乱筆ですが書いてみました。何かのムーブメントができるといいですね。
このマイクロファイナンスの分野は私はかなり興味津々なので、また何かの機会に書いて見たいと思います。

では今日はこの辺で。

ディベートに見習う The art of spin

どうも。残り一ヶ月を切った米大統領選挙ですが、昨夜は第2回目のディベートが行われてましたね。ご覧になりましたか?

一視聴者としてみると、ロジックがおかしいとか、答えになってないとか、これはすごいとか、あーだこーだと言えるわけですが、自分がその立場になることを想像するとこれは相当に難しいことだなと思います。モデレーターが事前に明らかにしていない質問をして、候補者がそれに制限時間内(確か2分とか)で答えるという形になっているのですが、事前にかなりの準備ができコントロール可能なプレゼン等と違って、Q&Aというのはかなり厄介ですよね。しかもこの制限時間からして、Yes/Noのような短い答え以上の答弁を期待しているわけです。

こうした際に重要なのが、spinするということです。この言葉、日本語にしづらいのですが、詭弁とはちょっと違って、どちらかというと、以前に触れた「物は言いよう」というのに近いかもしれません。厳密な定義はさておき、一般的な用法では、自分や自分が代表している組織に有利になるような点に論点を持っていくとか、非難されている或いは疑わしい事象等について活用する情報やその表現を上手く選択することで良く見えるようにするということです。

PRや政治家はそれこそが仕事というくらいですが、程度の差こそあれ、マネジメントや営業の人も頻繁に経験しているかもしれません。さらにわかりやすい例では、就職の面接なんかがそうですね。

私の関わるベンチャー企業の売却では、例えば、「なぜ会社を売るのか」ということをポジティブに答える必要がありますし、収益やトラフィックが低い場合には、そういった数値が会社の価値を必ずしも反映しないということを論じる必要があったりします。

そのようにスピンはかなり重要なのですが、私はQ&Aのような咄嗟の場面はまだまだ苦手で、ともすればSarah Palin状態になってしまうこともあります。常々英語のせいにしてたのですが、今日ふと、では日本語だとできるだろうかと思いをめぐらせてみました。確かに英語でやるよりはましでしょうが、やはりある程度考えて準備をしていなければ日本語でも厳しいような気がしますし慣れというのもあると思います。ただ、私が日本ではそういう立場にいなかったせいかもしれませんが、こういう答弁やスピンの重要性はアメリカや他の欧米諸国での方がかなり高いように思います。論理の背景の違いだと思うのですが、実際どうなんでしょう。いずれにせよ更なる精進が必要そうです。

そんなこともあって、ディベート楽しく鑑賞しているわけですが、もう一つこの点で面白かった映画を思い出したのでご紹介します。数年前にでたもので、Thank you for smokingというものです。タバコ産業のロビイストでPRを担当している主人公が、逆風の中巧みなスピンを活用する風刺コメディで、他にもアメリカ文化の様々な要素が入り混じった中々良く出来た映画です。ちなみにこの映画のExecutive Producerには以前にも触れたPayPal創業者Peter ThielとMax Levchinが名を連ねています。あまり華のないシリコンバレーとしては珍しいのではないでしょうか。以下、映画の一部です。

苦労話、上手くなる方法などありましたらぜひお寄せ下さい。
では今日はこの辺で。