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すぐに多くを求めていないか

どうも。今年は今日で仕事+ブログ納めです。ブログを始めてから3度目の年越しとは早いものです。

それにしても今年の経済の急降下は凄まじいですね。選挙に浮かれている間にバタバタと投資銀行業界がなくなり、信用収縮は極端に悪い状況が続き、マクロの景気悪化と相まって、車などの事業会社もかなりやばくなってきた、ともう雪崩を見ている感じですね。

昨日のNYタイムズにトーマス・フリードマンのTime to Reboot Americaという記事がありました。ここ暫らくのアメリカは欲とエゴはあっても足元を見ると他国に劣るインフラや技術という状況に陥ってしまっており、またその状況を敢えて無視するという「パラダイス鎖国」的なモードが続いてきたため、国自体がGMになってしまったとして、必要なのはBailout(金融救済策)どころか、リブートだと主張しています。

その中の一節でちょっと気になったところを以下引用します。

To top it off, we’ve fallen into a trend of diverting and rewarding the best of our collective I.Q. to people doing financial engineering rather than real engineering. These rocket scientists and engineers were designing complex financial instruments to make money out of money — rather than designing cars, phones, computers, teaching tools, Internet programs and medical equipment that could improve the lives and productivity of millions.

要は、最も頭のいい人達が実際の物づくりではなく金融工学をすることで報われる、という傾向が間違っているということです。この主張は耳障りは良いのですが、現実とは異なっている気がしますし、虚業対実業というような観点で金融とそれ以外を対比させるというのは、問題の本質から外れていると思います。

では問題の本質は何かというと、そんなに単純に言える性質のものではないと思いますが、一つには欲、しかもinstant gratification(即座に得られる満足)を欲することが蔓延していることがあげられると思います。払える見通しが無くても巨額の借金をして家を買ったりというのもそうですし、大学を出てすぐに親の世代が一生かけて得たような報酬を得ようとしたりなんかもそうですね。これはアメリカの問題だけではなく、インターネット、携帯の時代に生きる我々多くにも関係することだと思います。

ここ数年のWeb2.0のバブル的な状況もこの延長という面もあるかもしれません。お金も期間もさほどかからないウェブの開発で当たったサービスが創業後まもなくで数百億でエグジットするという状況を間近で見れば、我もと参加したくなる人は多いわけです。中にはかなりハードコアな元半導体デザイナーもいれば、元通信ネットワークのミドルウェアのエンジニア、それこそ文字通りのロケットサイエンティストもいて、そうした諸々の「未来を変えうる技術」を生み出せる可能性のある人々が、こぞって似たような動画サイトやFacebook/iPhoneアプリ等を作ったりしているというように見えなくもありません。

そういう人々の個別の行動が悪いというわけではないのですが、社会としてそれを助長するような仕組みになっており、それ故にIPOするようなリアルな問題を解決しているイノベーティブな企業がでてこない、という社会的ロスにつながっているかもしれないという側面はあると思います。但し、これをどうにかするのは相当難しいでしょうね。

という訳で、2009年はどんな年になるか予想がつきませんが、個人レベルでは欲求や生き方などについて思いを巡らせるには良いチャンスなのではないでしょうか。米大統領が変わりますが即座に小手先の結果を求めるのではなく、本当に重要なことに舵を切ってもらい、来年は何かよいことの萌芽がみえることを願っています。

本年もこのブログにお付き合い頂きありがとうございました。まだまだ非効率な書き方をしているので、来年は頻度・スタイルなどの変更も視野に入れておりますが、続行致しますのでまたお立ち寄り下さい。来年もより多くの方々にお会いできることを楽しみにしております。コメント、メールなどお気軽にお寄せ下さい。

では、どうか皆様、年末年始プチリブートして良い年をお迎え下さい。

ネットサービスと課金のジレンマ考

どうも。今日はカフェスタがユーザーにお金を出してもらうことをお願いしたという話を興味深く読みました。

広告に頼る「タダ」のビジネスモデルが「バブルの産物」とは思いませんが、全てのネットサービスがそれだけでやっていくのは確かに現実的ではなく、タダを前提とする空気がお互いの首を絞めてしまっている感じはあります。初めから有料だとユーザーの拡大には影響がでるし、後のプレミアムサービスへの移行も容易ではなく、一筋縄ではいかないわけですが、何らかの形で価値のあるものには対価を要求する、という何となく心地良くないビジネスの一線越えをすることをもっと考えていかねばならない時が来たのかも知れません。

無料でユーザー数を伸ばし、ユーザーに「愛されて」いるようなサービスでは、洋の東西を問わず、ユーザーから心配の声が上がったり、ビジネスモデルの提案があったり、寄付があったり、有料会員化への呼びかけがあったりと、ユーザー側で自分達のコミュニティーを守る傾向があるようで、これは非常に面白い現象だと思います。ユーザーにとってそこまでなくてはならないものになっているということは素晴らしいことで胸を張るべき成功なのですが、にも関わらずそれを直接売上げに繋げる布石を打たずにこの信用収縮を迎えてしまった多くのベンチャーが、急遽敢なく悪条件で他の(私)企業に吸収合併されることを決断したり、或いは資金が尽きて解散に至るという勿体無いケースが最近顕著になってきています。

そこまでユーザーを掴んでいれば、収益という形では出ていなくても何らかの価値はあるはずで、ある程度の期間資金がもつのであれば、単体でそれを収益に結びつける策をすばやく打つか、或いはそれと平行して、そのユーザーベースをレバレッジできる余裕のある上場企業に買収される道を広く探ることができるのですが、最適とは言えない決断を急いでしてしまう企業を見るにつけいたたまれない気持ちになります。

さて、そのサービスへの対価を得るということ、どういう形があるでしょうか。

現状FreeとPremiumのコンビである「フリーミアム」が多いとは思いますが、ソフトウェアによくあるように無料なものはお試し期間限定にして基本を有料にするというのもサービスの種類によっては可能でしょうね。多く人に有用なSNS等のサービスを交通機関のような社会インフラとして捉えると、一律210円みたいな小額を全員に負担してもらうという議論もアリかも知れませんね。定期券みたいに長い期間プリペイドで契約するとお得とか。

プレミアムにしても、物販に限らず出稿、出店、組織化などのサービス内のサービスを個人に有料で提供するというのもあるかも。また、コミュニティの特性を活かして、例えばサービスに積極的に物申したい人には発言権的なものの購入という形で金銭的に貢献してもらったり、場合によっては株主になってもらうというのもアリかもしれません。

まあ他にもたくさんあるとは思いますが、支払いを要求するときに恐らく重要なのは、どのように納得感があるようにするかということなのでしょうね。無料のものと有料のものがあるのならば、それが有料である分かりやすい理由が必要でしょうし、値段や請求方法でも感じ方はかなり異なりますよね。不思議なもので毎月300円と言われると、「一年で4000円近くになる」と思ってしまうけれども、「一月コーヒー一杯分くらいの価値はあると思いません?」と言われると、そりゃそうだと思ったり。個別に請求されると嫌な感じでも、携帯やISPの元々のサービス代の請求書に項目として上がっていれば殆ど気にしなかったり。

何をやってもどう言っても、有料になると離れるユーザーというのは必ずいるとは思うのですが、一方で自分の気に入っているサービスが存続するためにも享受している価値の対価を払うのは当然だと思う人も多いはずです。当然ながら、有料化の流れになると、差別化はますます重要になります。タダ或いは安いから使う、というのでは同様サービスの首切り競争に陥るだけで、結局はスキだから使うというものでないとダメなわけです。

まずは自社の提供するサービスに対するユーザーの価値認識への理解を深め、サービスと様々な課金方の兼ね合いを充分に検討して、小さいことからでも実行してみるのが良いのではないでしょうか。無料から有料に変えるような場合はユーザーに対してサプライズにならないように、誠実なコミュニケーションをはかるよう、くれぐれもお気をつけ下さい。

では今日はこの辺で。