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どうも。以前にこうした状況でもM&Aはあるものの、買い手市場なのでバリュエーションは低い傾向があるという話を書きました。私は売却側の立場であることが多いのですが、確かに近頃案件が増えてきて非常に忙しくしていますが、成就するかといえばまた別の話です。で、もう一つ、もしかしたら傾向としてあるかもと思ったのが、earn-out(アーン・アウト)の活用の増加です。
アーン・アウトというのは、給料に見立てて言えば、基本給に上乗せする成果報酬みたいなものです。買い手と売り手の間で価格に開きがある場合に、その部分を将来ある一定の条件に達した場合に追加して支払うという約束をすることで、買収を成立させるやり方です。この場合の条件には売上げや利益などのファイナンシャルな指標が使われることが多いです。
これ、よく「リスクをシェアする」という形で正当化して言われることがありますが、一般的に売り手にとっては非常に不利ですので、起業家の方は肝に銘じておいて下さい。
基本の額にある程度納得があって、アーン・アウトの部分が「Nice to have – 余分にくればラッキー」という割合のものならば構いませんが、そうでなければ、後々非常に辛い思いをする可能性は高いです。なので私のところでは通常、「アーン・アウトは考慮しません、クローズ時に全額キャッシュでよろしく」という強めのスタンスを取っています。ただし、こうした極端な買い手市場では、買い手により有利な条件を呑まざるを得ないという場面も予想されるため、この機に記しておこうかと思ったわけです。
アーン・アウトの何がそんなに問題かというと大きく二つあります。
一つは、追加の支払いをトリガーする公正な条件と支払いのメカニズムをきっちりと決めるのは非常に複雑だということ。そして二つには、全くのスタンドアローンの状況であるならまだしも、通常は、合併後のオペレーションを100%コントロールすることが出来ないため、当初予測していた通りに物事を進めるのが難しいことが多いということです。例えば、合併後数ヶ月して、買収元の会社が事業戦略の見直しをして、その合併した事業の経費削減をしたとします。そんな状況では当初単体で予測していた売上げすら達成するのは難しいですよね。
このような概念的な話だけでも不利度がお分かりかもしれませんが、知っておいて損はないと思いますので、また次回詳細をできれば回避方法も含めてお伝えしようと思います。
では今日はこれにて。
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どうも。CNNによると今日一日で7万人以上の人が解雇通知を受けたとのこと。凄いことになってきました。
んっ?解雇は金曜日にすべしというのが定説だと思ったのですが、どうしたんでしょ。「首切り」は金曜日に、大規模な「レイオフ」は月曜にするのが良いという調査結果でもでたんでしょうか? 殺伐度が増してきましたが、ついにはヨーロッパの友人から「アメリカは治安が悪化するから銃を買え」と言われる始末です。
不謹慎ついでに、もう一つ、先日近所のバーのお兄さんから聞いた話を。実はアメリカでは、ちょっとギークな人の間では特に、「忍者」が人気だったりするのですが、その忍者に近頃新たな意味合いが加わったとの事。それも「無収入、無職、無資産」というナイナイな状態のことだそうです。つまりNINJA=No Income, No Job, and no Assetsというわけですね。元は酷いサブプライム商品で、そういう人でも借りられるという趣旨でNinja Loanと銘打って売り出したものがあったことによるのですが、それがここに来てそうした状態に陥る人が多くなってきたので一般的に使われるかもという話です。
そんな中、Fortuneで「100 Best Companies to Work For」というランキング結果が発表されたのですが、栄えある第一位はシリコンバレーにあるNetAppでした。レイオフをしていない或いはしない、ということもかなりのポイントになっているようです。昨年1位のGoogleは4位に転落したとのことです。
このNetAppは以前Network Applianceという名前だった、1992年創業のネットワークストレージ企業です。首位になった理由にボランティア有給休暇や養子縁組、自閉症サポートなどの充実した福利厚生もありますが、より重要だと思われるのが以下に引用するカルチャーに関するものです。
Says one employee: It feels like “a small startup company instead of a 7,000-plus corporation”.
まずは、7000人強の企業というよりか小さなベンチャー企業のようだ、と。これは多くのベンチャー企業経験者がご存知の通り、簡単なことではありません。規模が大きくなるにしたがって大きな悩みとなる場合が多いです。私はNetAppの内部に明るくないのですが、どのようにしてベンチャーな雰囲気を維持したかのケースのようなものがあると参考になって良いですね
Typical of its down-to-earth management ethos, NetApp early on ditched a travel policy a dozen pages long in favor of this maxim: “We are a frugal company. But don’t show up dog-tired to save a few bucks. Use your common sense.”
それから、極めて現実的で真っ当で、ムダを廃したプロセス。例えば、長々とした細かい出張規定は止めて「うちは倹約でいくけれども、たかが数ドル節約するためにへとへとになってやってくるような馬鹿なことはしないこと。常識で判断せよ」というシンプルな決まりにした事。これは素晴らしいですね。こうした経費の処理に関するコストは相当なもののはずです。
Rather than business plans, many units write “future histories,” imagining where their business will be a year or two out.
そして、多くの部署ではビジネスプランの代わりに「将来の実績」というものを書いているとのこと。これは面白い発想ですね。そのような捉え方をすることで、より地に足の着いた実現可能なプランが立てられるということなのでしょう。
不況だとマクロで言っても、社員のやる気を確保することで社員が顧客に応えることができるという、きちんとした仕組みをつくって実践できている会社は強いということでしょうか。「人材、人財」と軽々しく言う企業が多い中、その会社ならではの形できちっと施策に落として実行できる会社、そしてそれをカルチャーにまで昇華させることができる企業は賞賛に値すると思います。
ちなみにNetApp、現在も様々な職種で採用中だそうですのでチェックしてみて下さい。もしNetAppのマネジメントに関する良い読み物をご存知の方がいらっしゃいましたら、教えて下さい。
では今日はこの辺で。