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アメリカでのプレスリリース Part 2:プレスリリースの書き方

先日の続きでプレスリリースの話を。

どうやって記事にしてもらうか云々の前に、まずはプレスリリースの形式についてざっと書きます。

アメリカでのプレスリリースはかなり決まった形があります。最近ではソーシャルメディアにより取り上げてもらうために、多少違うフレーバーを使ったり、そもそも従来のプレスリリースを使わずにブログやソーシャルメディアに発信するということもありますが、まずは基本を抑えましょう。

まず長さですが、余程のことが無い限り、1ページに収める必要があります。英語の場合文字数ではなく、単語数で数える(Word countと言います)ことが通常ですが、その場合大体500ワードまでです。できれば400ワード以内がベストでしょう。単語数はMicrosoftのワードを使って書く場合は左下に自動的に表示されたりしますし、または”Word Count”でググればコピペするだけで数えてくれるサイトが簡単に見つけられます。

トーンですが、全体的にはそのまま新聞記事になる感じを想定して下さい。重要なのは広告記事ではなく新聞記事というところ。つまり客観的に書かれている必要があります。ですので、当然、当社(我々)が云々という書き方ではなく、「本日どこどこ所在のA社はxxxすると発表した」という3人称で書き、根拠の無い主観的な表現(例えば「革新的な」「優れた」など)は使わずに事実を記載します。

構成は以下の通りです。
1.ヘッドライン(タイトル/見出し)

短く1行で興味をひきつけ読みたくさせるようなもの。フォントは大きめで太字もあり。

2.サブヘッドライン

上記を一段深堀したもの。リリースの要旨を簡潔にまとめた感じ。これも1~2行。イタリックにするなどもOK.

3.本文

日付と所在地から始める。5W1Hを基本に簡潔にニュースの要点をまとめる。特にWhatとWhy、それから「誰が気にするか」(誰にとって興味深い話か)という点を明らかにするのが重要。いくつかのパラグラフで書いても良いし、一部箇条書きでもOK。

また、必須ではないですが、違う視点から情報を伝えるためにQuote(誰かの発言の引用)を入れることも一般的です。2通りあって、社長やその件の責任者の発言といった社内のものと、お客さんや業界の知識人の発言といった外部のものがあります。発言とはいえ、通常は実際に発言されたことではなく、あたかもそのように書かれているだけです。

最後に締めの内容を書いて、必要に応じてリンクをいれます。(例:製品はこのURLからダウンロードできます)

4.会社情報

簡潔に会社を説明するパラグラフで(2-3行)、テンプレートとして色んなところで使いまわせる類のものです。

5. コンタクト先

本件に関して更なる質問などに対応する窓口を記載。担当者名、メールアドレス、電話番号など。通常はPR担当の社員やエージェントです。連絡先はできればアメリカ国内にしましょう。記事にしようかなとちょっと思ったときにコンタクト先が日本の電話番号になってたりすると、面倒で引く可能性が大です。

読む人は相当時間がありませんし、一日にこうしたリリースが膨大な数あります。読む人の負担をなるべく少なくして興味を持ってもらうように配慮するのが重要です。その為、定型に沿うことはマストです。知恵を絞らなくてはいけないのは、事実を書くとはいってもつまらなくては意味が無いので、ニュースとして面白いネタを、如何に魅力的に的確に伝えるか、というところです。

大きな企業であれ、ベンチャーであれ、Webサイトでプレスリリースのページを設けて公開しているところは多いですので、いくつか見比べてみると感覚がつかめるかと思いますので、ぜひ、同じ業界や気になる会社のプレスリリースを見てみて下さい。

お気づきかと思いますが、実はだらだら書くよりも簡潔に書くほうが難しいのです。400ワードにまとめるためには、かなりの編集作業が必要ですので、作成は、見た目より相当時間はかかると想定しておくのが良いでしょう。

では今日はこの辺で。

資金はどこから調達するか?

スタートアップが盛り上がっているような若干バブル気味な状況になると、必ず話題になるのが資金調達の話しです。

お金が出回っていること自体は良い話なんですが、ちょっと危険なのは、どこがどのVC(或いはどのエンジェル)からいくら調達したか、なんて話しを日々聞くにつれ、起業したらまずVCやエンジェルから資金を集めるのが当然で、自分達も当然そのように資金調達できるはずだと思ってしまうことです。特に日本から見ていると、シリコンバレーでは皆がそうしている、という印象を受けるかもしれません。

が、そんなことはありません。

一番大きな資金の調達元は、ファウンダーの貯金や事業のキャッシュフローといった自己資金です。下の動画でPaul Kedoroskyがいくつか数値を出しています。

これによると、アメリカでの「若い企業」の50%以上が自己資金だけでなりたっていて、次に多いのがクレジットカードによるローン、友達や親戚、と続くと。で、最も急成長している部類の企業のうち20%以下がVCから資金を調達したことがある、という状況だとのことです。

この数値のソースや詳細は分からないのですが、スタートアップやシリコンバレーに限った話しではなく、そもそもVCなどの外部資金向けではないビジネスも含まれていると想定されます。ですので、シリコンバレーのいわゆるガンガン行きたいスタートアップに絞った場合、数値は異なる可能性は十分にあります。ですが、そうであっても、VCや最近大活躍のスーパーエンジェルなどのいわゆる「プロのお金」の投資を受けるというのは、かなり確率が低いということはぜひ心に留めておいて頂きたいと思います。

個別の状況によるので、早いうちに資金調達をするな、と言うつもりは無いのですが、ベターなタイミングというのはあると思います。ご存知の通り起業は安くなりましたし、スマートに目的に近づくことがより当たり前になってきていますから(Lean Startupなどの概念がこれにあたりますが、この件についてはまた別途詳細に書きたいと思います)、事業を始めるためにお金を集めるというよりは、まずは自分達で進めていって、芽が出て流行ってきたところで「プロのお金」が入ることが、実際多くなっています。これは起業家にとって最も勝ちパターンですし、投資の面からみても効率的です。

検証されたアイディア・方法に対して、それを成長させるために資金をどかんと投下することができますし、リスクを軽減していることと需要と供給のバランスから起業家にとってより優位な条件で調達が出来ます。このステージでは如何に競争に勝つかということが重要になる場合が多いですから、どこから集めるにせよお金がかなり必要になります。もちろんケースバイケースですが、ある段階では、「これまで自己資金でやってきたから」と頑固になって他企業の資金力に劣ってしまうのではなく、外部から十分に資金を取り入れるというのも一考です。

この辺りの話し、何となく昔書いたことがあるような気がしたら、やっぱりありました。アングルは違いますし2008年の時点ではありますが、今でも以前有効なことだと思うので、興味があればぜひこちらも見てください。→初期の資金調達で押さえておくこと

資金にはコストが付随します。これは日本とシリコンバレーでかなり温度差がある部分のように思いますが、シリコンバレーで「プロのお金」を入れるということは、それなりの期待値に添った行動をすることであり、ファウンダーの首も含めて、コントロールとの引き換えになります。それは物を(あまり強く)言わず権利も少ない投資家がいる状況、及び銀行などからのローンとの決定的な違いですので、当地で資金調達を考えるのであれば、しっかり肝に銘じておく必要がありますのでご留意を。