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今日はシリコンバレー界隈で良く使われる言葉、Hustlerについてです。
恐らくみなさんこの言葉聞いたことがあると思いますが、ん?ビリヤードのあれでしょ?とか、あの雑誌だよねー、という感じで、シリコンバレーのスタートアップとどう関係があるのかよく分かりませんよね。ラップを良く聴く方は、更に、麻薬の売人を想像されているかもしれません。
この言葉文字通りHustle(ハッスル)から来ているわけですが、とにかく機転をきかせてがむしゃらに行動して結果をだす、というような意味です。ずるいことをしたりするため、詐欺師とかディーラーとかネガティブな意味合いで使われることが多くなりました。が、シリコンバレーで使われているのは、(多分本来の意味に近い)ポジティブなもの。特にビジネスサイドのことをがんばる人について使われます。
最近では初期のスタートアップにはHacker + Hustler (+Designer) が必要という意見も多いです。Co-founderの組み合わせは、そうあるべきともいわれます。(例えばWozとJobsとかですねw)
では実際どんなことをするのか。例えば、何のコネもない状況で、とにかくネットワーキングに精を出し、がんがん人に会って的確なメッセージングと熱意で自社製品を売り込み、記事にしてもらったりアドバイザーを見つけてきたり、などです。必ずしもセールスの人である必要もないし、かといってエンジニアではだめだというのではなく、どちらかというとモチベーションとか性質が重要です。ほんとに初期の段階ではCEOがハスラー役のことが圧倒的に多いですね。
そんなわけで、アメリカ一般では悪い意味に使われますが、シリコンバレーではかなりの褒め言葉です。
Hackerの定義含め、さらに深堀りして知りたい方は、ぜひこれらのスレッド見てみてください。
http://learntoduck.com/micah/hackers-hustlers/
http://news.ycombinator.com/item?id=4175179
では今日はこの辺で。
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シード/エンジェルの資金調達を優先株によるもの(日本で言う「第三者割当増資」にあたる感じです)ではなくconvertible notes(コンバーチブル・ノート)で行うというやり方は、シリコンバレーではここ数年ですっかり定着しました。今では割合は過半数を超えるとか。日本発で米国登記するスタートアップの中にも、この方法でやっているところもちらほら見るようになりました。convertible notesが何かについてはAppGrooves柴田さんのTechCrunchへの寄稿記事が良くまとまっていますのでご参照下さい。
Convertible notesは転換社債の一つで、もとは例えばSeries AとBの間をつなぐためのブリッジローンとして使われていたものです。が、その簡易性(わずか5から7ページの資料)がシード期にお金をかけず(弁護士費用$5000くらいで済む)スピーディーに(この時点でバリュエーションを決める必要がない+細かい交渉が少ない)かつ随時(投資家ごとにことなってok)資金調達するのに最適、ということで好まれて使うようになってきました。Y Combinatorはじめ推進する人が多い一方で、著名なVCで公に反対する人がいるなど、その是非についてはかなり意見が分かれるところでした。
典型的なタームとしては、1年くらいを満期としたローンで、その間にSeries Aが行われる場合は予め既定した(有利な)条件で株式に転換するというもの。そして、そのような資金調達が行われなければ、交渉の末ローンのタームを変えるか、さもなくば、既定した利子とともに返済する、とういものです。
今やこの方法で資金調達したスタートアップの数は30,000に及び、ローンの総額は何と推定$50 billionとか! スタートアップ経済だけでそんな額の負債を抱えているわけです。返済能力のない人(企業)にこんなに貸付があるなんてサブプライム彷彿ってな話しもあるわけです。が、現実的には暗黙の了解があって、返済を要求する投資家はほぼいないのですが、それでも契約上債権は債権。倒産に追いこめられないリスクがないわけではないですし、そもそもきっちり契約で固めてるのに実際の運用は異なる、というのは契約社会アメリカ的にはかなり気持ち悪いものではあります。
で、この度、TheFunded.comとthe Founder Institute のファウンダーである Adeo Ressiと, 先日も話に出たWilson SonsiniのYokum Takuさんが協力して考案したのが、Convertible Equity。端的にはconvertible notesから満期での返済及び利子というスタートアップへのリスク要因をとっぱらって、その他の条件を調整することでスタートアップ、投資家双方にとって納得感のあるものにしましょうというものです。
Equityという名称はちょっと誤解を招くかなと思ったりしますが、現存の問題に対するシンプルでエレガントなソリューションなのではと思います。これから様々な人の意見・議論を通してブラッシュアップしていくとのことですが(Quoraや掲載されたTechCrunch記事のコメント欄などで活発な議論がみられます)、こうして起業家・スタートアップを囲む弁護士や会計士などサービスの分野でもイノベーションが起こらんとするところが、まさにシリコンバレーだなと思います。
かなりテクニカルな話しなので一部の人向けだとは思いますが、興味があればぜひ上述のリンクを参照して下さい。また、日本でこれが可能か、という話しは磯崎哲也さんが書いてくれそうですので、追ってみてください。
では今日はこの辺で。