•
しばらく前にDave McClureが提唱して、今ではネット系ビジネスでは定番になったAARRRフレームワークですが、プロダクト・マーケットフィット(PMF)に達するためにまず重要なのは何だと思います?
少し流入があってユーザーを獲得できるようになったら、まずフォーカスすべきなのは最初のRでRetention、つまり如何にユーザーを維持してチャーン(離脱)を防ぐかです。
ユーザーを維持できなければ、いくら新規にユーザーを獲得しても、抜けていくだけで無駄ですよね。なのでその穴を塞ぐのに必要な分析ができる程度の流入が確保できたら、まずは穴ふさぎに全力投下です。
では、自分の製品・サービスのチャーンレート(離脱率)が高いのか、低いのか、をどう判断するか?
ユーザーの行動分析など自社で取れるデータを分析するのはもちろんなのですが、加えて、似たような業種、製品、ビジネスモデル等の他社の数値と比べるというのも参考になります。
ただ、チャーンレートと一口にいっても、どの段階でのチャーンか(e.g. 顧客になる前の初期段階なのか、有料顧客になってからの脱却か)、何を基点とするか(e.g 一度でも使ったユーザーの内なのか、真のユーザーとなった人の内なのか)でかなり変わりますし、完全に合う数値が見つかるとは限らないので、あくまでも「大体こんな感じ」というのを知るために使ってください。
例えばSaaSの顧客チャーン(有料顧客がダウングレード或いは離脱する)だと以下がベンチマークとして使えると言われています。(ソースはこちら)
ターゲット顧客が個人やスモールビジネス、スタートアップなどの場合は、どうしてもチャーンレートは高くなりますが、法人向けだとかなり低く抑える必要があります。Monthlyでは大したことがなく見えてしまうチャーンレートですが、年率だとかなり高いですので、こちらも注意してくださいね。
一方、業種は異なりますが、すごくリテンション率が高い例としてAmazonがあります。プライム会員のトライアルをした人の内73%がプライム会員となり、その内2年目も継続する人は91%に及ぶそうです。さらにすごいのが、長く使うほどリテンションが高まり、3年目に継続する人は96%とのこと。これは驚異的な数値ですが、色々な幅があるということで参考まで。
では今日はこの辺で。
•
スタートアップのマーケティングに携わるようになってかれこれ数年経ちますが、これ、すごく重要な話です。
通常「マーケティング」としてイメージされる活動(例えばPRや広告など)は、既にある程度ユーザーやクライアントがいる状態で、さらに伸ばすことには使えますが、始めたばかりの、ユーザーを0から100にもっていくフェーズには不向きです。
そういった施策を使って100ユーザーをゲットすること自体が悪いわけではないのですが、お金がすごくかかる割に学びが少なく、その後100から1,000またその先へ、とユーザーを増やすための基礎を築き難く、ユーザーからのエンゲージメントが低く、入っては抜けていくザルのような製品になって苦労します。
ではどうするのが良いのか。Kissmetrics等で知られるHiten Shahの先日のブログ記事を引用します。
- Practice $0 marketing to start building a customer base without going all in on expensive paid acquisition.
(広告などの高額な有料チャネルにガツンと投資することなく顧客ベースを築くべく、無料マーケティングを実践する)
- Talk to each of your customers to understand their actual problems and needs.
(顧客の一人一人と話して実際に抱えている課題やニーズを理解する)
- Identify your most successful customers—and learn to let go of the customers who might not ultimately be the best fit for your product.
(最もフィットする顧客を見つけ、そうではない顧客を手放すことも学ぶ)
リーンスタートアップや顧客開発をかじった人には馴染みやすい話だと思いますが、伝統的なマーケティング畑から来た人などには???なことが多いので注意しましょう。
この段階で先に急ぎたい気持ちを抑えて踏ん張って、誰が本当に顧客なのか、自分の製品は何を解決しているのか、価値をどう伝えれば良いのか、を学ぶことが後の成功に繋がります。Paul Grahamの有名な言葉 「Do things that don’t scale」に通じる話ですね。
上記3つのポイントを実践したスタートアップの事例などもありますので、興味のある方はぜひ原文を読んでみてください。
ちなみに、従来のマーケティングと分けるため、この段階の活動をuser acquisition、後にユーザーをガンガン増やす段階の活動をgrowthと呼ぶこともあります。この辺はまた別の時に。
ではまた。