国境を越えるには
先日のMySpaceがSoftbankと組んで日本進出というニュースはこちらでも結構話題になっています。このZDNetの記事やNY Timesの記事にもあるように全体的には海外進出は難しいという見方になっていることにちょっと新鮮味を感じました。というのもアメリカでは結構アメリカ至上主義という傾向があり、アメリカのこと(例えば映画、TV、音楽、スポーツ、政治、経済 etc.)は世界中の人が知っていて、当然成功している企業は他の国でも同様だろうし、またアメリカの技術はどこにもまして進んでいる、と特に考えずに思い込んでいる節が無きにしも非ずというところなのです。(最近は携帯に関しては日本や韓国等のほうが進んでいるということが知られてきてはいますが…)
ではこの見方の背景はと何かというと、数年前にオークションサイトのeBayが日本で敗退したということが大きかったのではないかと思います。eBayはアメリカではデファクトのオークションサイトでヨーロッパ等でも成功していますが、日本ではヤフオクに完全に敗れ撤退し、最近は中国でもそのビジネスを現地の有力インターネット企業Tomに受け渡しました。素材とかハードウェア等は営業やオペレーションの仕方は別としてプロダクトとしてはグローバルに展開し易いのですが、ことソフトウェア特にコンシューマー向けのサービスとなると言語だけでなく、文化、趣向、消費者行動等の様々な違いにより、海外展開は予想以上に難しいものです。インターネットサービスはその企業がどこにあっても世界中の消費者に向けてサービスができる一見して薔薇色なものですが、特にソーシャルな要素を持つものに関しては相当なローカライズの必要があり一筋縄ではいかないというわけです。
ソーシャルな要素をもつものの場合は相当数のユーザーを惹きつけて、ユーザーがロイヤルティを抱き、強いコミュニティーを形成するということが必要で、その国の潜在ユーザーを良く知らない限り的確なローカライズは無理と言えるでしょう。その為には現地と母国の双方に詳しいコンサルタントやそういったサービスをしている企業と協業したり、現地でキーとなる人材を自ら雇用したり、現地の企業とアライアンスを組んだり今回のように合弁会社を作ったり、はたまた現地の企業を買収したり、と様々な方法があるかと思います。
その際結構難しいのが、その”現地に通じている”はずである人や企業が実際どれほどそうなのか、更には自社の個性とか提供するサービスの雰囲気のような無形のものをどれだけ理解し現地の適したユーザーに展開できる実力があるのか、ということを判断することなのではないでしょうか。これには正しい答えがないのでしょうが、海外展開を考える起業家はこの点を念頭においてパートナー選びは慎重に行うべきだと思います。
eBayの敗因については色々と語られていますが、海外展開を考える日本の起業家にとっても学ぶことはあるのではないかと思いますのでこのリンク以外の記事にも検索をかけてみることをお勧めします。すでにmixiが強いという一見して不利な状況ですが、MySpaceのパートナーはかつてeBayを駆逐した、そしてそもそもヤフーの現地化に成功したソフトバンク。どうなるのか興味津々です。
さて多くのアメリカ人の思いとは裏腹にアメリカの技術が常に最先端というわけでは勿論ありません。携帯に限らず日本の方が進んでいる場合は結構ありますし、これからも出てくるでしょう。でも海外展開をしていないことが多い。日本の場合、国内市場が充分大きいためあまり外を見てこなかったということがあるのだと思います。勿論国内のみを対象にするのも良いのですが、より大きな市場を求めて海外に展開するベンチャーがどんどん出てきても良いのではないかと思います。
アメリカに子会社などをつくって進出する際には、上記のローカライズの問題に加えて一つ注意事項が。アメリカでは外国人でも会社というハコを作ることは結構安易にできます。ですが、そのハコに中身を入れる場合はビザの問題が大きく圧し掛かります。どういった方法で実現すべきかは弁護士やその他プロに相談することが必至ですが、特にご注意頂きたいのがとにかく時間と手間がかかるということです。
実は私はこれまでH1Bビザで働いていたのですが、今日移民局で面接があって、晴れて永住権を獲得しました。アメリカでは一般に事務・アドミ系は悉くお粗末なのですが、移民局の手際の悪さは日本人の感覚からするともう想像の彼方です。私の場合はかなりスムーズにいった方だと思いますが、それでもストレスフルなものでした。日本では数日或いは数週間単位でできそうなことが、アメリカでは数ヶ月数年かかったりします。ビザ自体に量や条件の制約がありその上この煩雑な事務が加わるので、アメリカに進出しようと考えている起業家は専門家及び経験者に早期に相談して入念な準備をする必要があるでしょう。
ちょっと事務的な話になりましたが、良いものにはぜひ国境を越えて欲しいなと思います。
10. 11月 2006 at 12:19 am :
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