GeekとNon-Geekのコミュニケーション
コミュニケーションというのは色々なレベルで本当に難しいものだな、と常々感じます。お互いの言語、知識、経験、興味、主観、先入観、考え方、捉え方…数え上げられないほどの違いという要因が背景にあって、その上で表現の仕方や媒体の選択によって伝わり度が変わる。だからこそ面白くもあり死活問題でもあるわけです。
ご存知の通り、テクノロジー業界においてはテクニカルな人々とノンテクニカルな人々(ユーザー、投資家、自社のビジネスサイドの人々等を含む)の間のコミュニケーションには相当の壁があります。同じ言語を話す人の間でも外国語会話ほどのギャップがあったりします。もちろん双方の歩み寄りが必要なのですが、ノンテクニカルな人がテクノロジーを理解するには限界があるので、テクニカルな人が万人に理解されるように、より一層の歩み寄りをしなければならないことが多いのが実情です。
私はその中間の立場の仕事をしてきているので、時には通訳のように思うこともあります。こういった「通訳」は存在しますが、当然必要なときに必要な人が周りにいるとは限らないので、テクニカルな人々はノンテクニカルな人々と直接コミュニケーションするスキルを日々身につけなければなりません。特に技術者が集まって起業した場合、少なくとも初期の間は、そのうちの誰かがCEOになったり、営業に回ったりとビジネス側に移らなければならないことが往々にしてあります。
そこでこんなリストに遭遇しました。Geek Marketing 101、つまりGeekのためのマーケティング基礎。
マーケティングというのは技術系に限らず、多くの人に結構誤解されて狭義に捉えられている概念ですよね。でも実は広義がありビジネスの根幹をなすものです。例えば、ある技術を開発したとします。もちろんそれだけではだめで、人に使ってもらわなくてはなりません。人に認知して理解してもらい、且つ使ってもらうようにするという活動全体がマーケティングなのです。よって、技術者であっても、日々、この活動には多かれ少なかれ関わることになります。このリストはマーケティングという切り口ではありますが、ほぼGeekとNon-Geekのコミュニケーションの仕方全般へのアドバイスとして見ることができます。シンプルではありますが的を得ていると思います。以下、ポイントの表題と趣旨の意訳です。
1) Marketing is not a department.
マーケティングとは部署ではない。それはユーザーを知ることができる環境を創造する様々な要素から成り立っている。PRやセールスはそのサブセットに過ぎない。2) Marketing is a conversation, but most people don’t speak geek.
マーケティングとは双方向の会話であるが、多くのNon-GeekはGeek語を話さない。彼らが理解できるように伝えなければならない。3) Simplicity does not negate complexity.
平易さは複雑さを無効にするものではない。簡素化されたマーケティングのメッセージは君の創り上げた複雑なものを無闇に矮小化しているわけではなく、世の中に分かりやすく説明するのに必要なのだ。4) Think what, not how?
そのプロダクトが何をするものかを伝えろ。どのように実現しているかの技術的な詳細に人は興味がない。混乱させるだけだ。5) Think will, not can.
そのプロダクトでユーザーが何を実現できるのかをシンプルに伝えろ。
あれもこれもと些細な可能性を羅列するな。6) Only you RTFM.
(RTFM=Read the f*****g manual!)
普通の人はマニュアルを読まない。技術が嫌いだからではなく、複雑すぎて無力に感じるのが嫌だからだ。技術をシンプルに説明せよ。7) Technical Support is marketing.
テクニカルサポートはマーケティングである。困っているNon-Geekなユーザーに対して分かりやすい言葉で親身にサポートすることで、ユーザーのプロダクトに対する認識を変えることができる、いわば最大のマーケティングツールなのだ。8 ) You’re not marketing to people who hate marketing.
君はマーケティングを嫌う人たちに対してマーケティングをしているのではない。自分のマーケティングに対する誤った偏見を挟み込んではいけない。人は口先ばかりの誇大広告などは嫌うが、自分の要件が満たされるのは嫌いではない。9) You’re not marketing to people who hate technology products.
君はテクノロジーを嫌う人たちに対してマーケティングをしているのではない。Non-Geekはテクノロジー自体が嫌いなのではなく、その分からない要素等がもたらすある種の劣等感が嫌なのだ。10) Marketing demystifies.
マーケティングとは分かりやすく説明することだ。ユーザーがプロダクトをよりよく理解すれば君も彼らのニーズをよりよく理解できる。相乗効果でお互いの距離が狭まるのだ。
私はクライアントであるテクノロジーベンチャーと一緒にプレゼン資料を作ることがよくあるのですが、その際3、4、5辺りは特に突き詰めます。その技術をシンプルに説明できるような核の部分が捉えられるまで、クライアントがうんざりするくらい、質問攻めにしたりします。そうしてビジネス側の人が見ても分かりやすく、かつ技術系の人が見ても詳細を知りたくなるようなレベルで表現するようにしています。そのプロセスにGeekの彼らは最初は戸惑いますが、時とともにその必要性を理解してくれることが多いです。
このコミュニケーションの溝を埋めるのは大変。日々精進ですね。
皆さんはどんなご経験がありますか?
そんなわけで今週はこれにて。
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