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ベンチャーの失敗要因

ただいまです。ニューイングランドはすっかり紅葉も終わりのほうで、しっとりとしていました。

日中に乗る東海岸からの飛行機はとにかく長い!なので暇つぶしに機内のショッピングカタログをパラパラめくってみました。この機内誌は免税用のものとは異なり、あらゆる層に向けたアイディア商品とか便利商品とかいった類のものなのですが、これが笑えるものが結構多い。こんなもの誰が買うんだ!というものがかなりあります。例えばシリアルディスペンサー。ボタンを押すと予め指定した通りの量(ダイエットに効果的!とか書いてありました…)のシリアルがボウルに注がれる仕組み。そう、ペット用によくあるアレです。いくら面倒くさがりが多いアメリカでもさすがに箱からシリアルを取り出すことはそう厭わないでしょう。(と願います)

これはハイテクな商品ではありませんが、やはり確信したのは誰かが欲しがるものを作ることの重要さです。
当たり前なことなのですが、意外とこれが実践できていなくて失敗するベンチャーが多いのも事実です。ユーザーを考慮せず優れたテクノロジーを追求してしまう場合や必要としている別のユーザー層がいるか検証せずに話題になっているプロダクトやサイトのコピーのようなものを作ってしまう場合などが頻繁に見られます。

プログラマー、エンジェル投資家、画家、エッセイストとして幅広く活躍しているPaul Graham氏は、最近のブログでこの「誰かが欲しがるものを作っていない」という点をベンチャー企業が失敗する根本要因としてあげ、その状況を引き起こすいわば二次要因として以下の18点を挙げています。各々の詳細はこちらの原文でどうぞ。

1. Single Founder
多くの成功したベンチャーは数名の共同創設者がいる。一人では信頼性に欠き、仲間をがっかりさせられないというチームの意欲が働かず、何より一人でベンチャーを経営するのは困難

2. Bad Location
ベンチャーを支援する各種インフラ、知識、人材がない

3. Marginal Niche
競争を恐れるあまり、小さくあいまいなニッチマーケットを狙ってしまう

4. Derivative Idea
未解決の問題を解くのではなく、既存のプロダクトの派生、いわばコピー品を作ってしまう

5. Obstinacy
当初のアイディアに固執し状況に応じて変更する柔軟さがない

6. Hiring Bad Programmers
知らず知らずにできの悪いプログラマーを雇ってしまう

7. Choosing the Wrong Platform
間違ったプラットフォームを選択してしまう (7から派生することが多い)

8. Slowness in Launching
プロダクトのリリースを何らかの理由をこじつけて先延ばしにする

9. Launching Too Early
まだある程度充分に機能しないデキのものをリリースしてかえって評判を傷つけてしまう

10. Having No Specific User in Mind
ユーザー層を充分に特定していないため、そもそも必要な要件を明確にできない

11. Raising Too Little Money
次のステップに到達するのに必要な期間をサポートし得るだけの資金を持たない

12. Spending Too Much
集めた資金を必要以上に早く使いすぎる。特に人件費。

13. Raising Too Much Money
投資された資金を活用しようとして非効果的な出費をしたり、社員を増やしすぎてカルチャーが変わったりしてしまう。また、投資額が多いほど投資を得るまでの期間・労力は高まる。

14. Poor Investor Management
投資家を無視するか、かえって傀儡にされてしまうかして、経営者として投資家を上手く管理できない

15. Sacrificing Users to (Supposed) Profit
ビジネスモデルを重視してユーザーの要望を二の次にしてしまう

16. Not Wanting to Get Your Hands Dirty
自分の苦手なことやりたくないことに手を出したがらない

17. Fights Between Founders
創設者間でのいざこざ

18. A Half-Hearted Effort
守りに入ったまま起業し、どっちつかずで不完全燃焼になってしまう

「ベンチャー企業はこうすると失敗する」つまり「これをしなければ成功する」といった黄金則を包括的に挙げる事は不可能です。上記は必ずしも論理的に二次要因になっていない部分も見受けられますし、同意しかねるポイントもあると思いますので、ソフトウェア企業の視点からその一部を試みているものと見るべきでしょう。

3と4と10は「誰かが欲しがるもの」というそもそもの “what”に直結するポイントです。残りは多かれ少なかれ”how”の部類だと思います。8と9、11と12と13は言うは易しの微妙なバランスの問題。5と16と18は心構え的なもの、1と6と17は人事的なものですね。1に関しては私はファウンダーが複数である必要はないと思いますが、確かに初期のコアメンバーの人選は明暗を分ける最重要点の一つだと思います。複数の創設者が仲間割れする17のケースはかなり多いです。友人関係が崩壊することもありますし、また、友人が必ずしも本当に必要なスキルを保持しているとは限りません。

14の関係者の管理はとても重要な点だと思います。特にVCが絡んでいる場合では、経験の浅い企業家が知らず知らずのうちに多数株主の座を明け渡すことになり、「のっとられた」と落胆し「誰の会社だと思ってるのか!」という救いのない議論になってしまったりするケースは後を絶ちません。

この点ではこれと同様に重要なものとして、パートナーや顧客との関係管理を付け加えたいと思います。ベンチャーが大企業と何らかの関係を結ぶ際に不利な条件をのむことが多々あります。ある程度は致しかたないのですが、足元をみられて立ち上がらずにいると、捕虜のような状態になってしまうことがあります。これを俗に”Non acquisition acquisition”と言ったりしますが、起業家が気づいていないまま進行することが多いので注意が必要です。(この点は後日触れたいと思います)

どんな関係にせよ、即座に契約せず、契約の中身をビジネス・法律双方の観点から吟味して、直近ではなくても今後どんな意味を成すのかということを完全に理解し、その上で双方がWinWinになるように交渉すべきです。

如何でしょう。こんな点もある、というのをお寄せ頂けるとうれしいです。

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