売るために作る?- M&Aを前提とした起業
昨日はまだそこらじゅうYouTubeの話で持ちきりで、何を書こうか考えていたのですが結局考えが纏まらず、一日半あけてしまいました。とは言え、考えながらサイトをいじっていたので、ようやく行間幅を増やしサイドバーに最近の投稿をリストすることができました!今までかなり読みづらいとは分かっていたのですが、なかなか変更できずにおりました。改善になっていると良いのですが…。
さて、で、結局何を書こうと思ったかというと、9月25日の投稿と10月2日の投稿で触れた、M&Aを見越してベンチャーを起業・経営することについて。これらではexitのゴールをIPOではなくM&Aに定めているベンチャーが多くてそのトレンドは今後も続くだろうということと、その為には単体として長期の競争力がある企業体であってもなくても、どこかの企業の穴(戦略的或いは財務的に足りない部分)をなるべくピッタリな形で埋めることができる企業という”M&Aに然るべき”性質のベンチャーである必要があるということを書きました。ベンチャー企業を成長させていく過程でM&Aが順当らしいということが次第に見えてくるという場合が多いのですが、最初からそれを狙って起業するというのもテクノロジーベンチャーにとっては筋の通るものだと私は思います。
作って売る、売る前提で作る、ということです。
この場合、どのようにお金を稼ぐのかというビジネスモデルが陳腐だったり弱かったりしても(多くのWeb2.0企業は広告収入モデル一筋だったりしますね)、しっかりしたプロダクトロードマップが無くても、世界中を股にかけ次々に大手の胸元に食い込んで行けるデキる営業マンがいなくても、開発期間を超えた次の展開フェーズを経営できるスキルがなくてもOK。その代わり、革新的な他とは違うやり方でピンポイントの課題を解決するような技術(例:既存のプロダクトに付与するフィーチャーになるもの)を開発するのに長けているか、又は誰もやっていないニッチな分野を切り開くアイディア(例:既存のプロダクトがカバーしていないギャップを埋めるようなもの)があってそれを実現化する力に優れているか、が問われます。 要は取り合えず得意な事にだけ専念して良いわけです。 技術者向きだと思いませんか?
とは言えM&Aが必ず実るわけではないので、必要最低限の資金で運営していくこと、それから早期のうちからベータ版でもよいので出していき、数多くの人に試してもらいフィードバックを開発に活かしたり知名度を上げていく事、M&Aに関するアドバイスを専門家から得るなどしていつでも複数の企業と話し合いができるように準備していく事等がリスクを軽減するためには必要です。
実際この様なベンチャーはかなり増えています。2年前のBusiness2.0の記事なのですが、非常によくまとまったものにOm Malik氏の「The New Road to Riches – Build a company cheap. Flip it fast. Repeat.」があり、彼はこういった企業を ”built-to-flip ”と名づけています。<かなり長い記事です。日本語での抜粋の説明はこれまた古いですがCnetで梅田望夫さんが連載していた当時の記事をご参照のこと>
以下そのトレンドを示す一部分。
The phenomenon has gone largely unnoticed because most of the deals are too small to make news. But the trend is accelerating. By the end of September, there will have been more than 5,300 tech acquisitions in 2004, based on research from Mergerstat. The average reported selling price was $12 million; in two-thirds of the transactions, the prices were so small that buyers didn’t disclose them. At this point in 2003, also a big year for small deals, there had been 4,500 tech acquisitions, averaging $12.5 million. Microsoft alone has bought 46 companies in the past four years; factor out the $100 million-plus deals, and most of Microsoft’s acquisitions average a few million dollars. Oracle has been buying up small companies at the rate of about one per quarter, even as it pursues its $7.7 billion bid for PeopleSoft. Google has bought six small companies in the past 18 months. Hewlett-Packard, IBM, Intel, Symantec, Germany’s SAP-indeed, all of tech’s power elite-have made stepped-up acquisitions of small fry an integral part of their strategies.
YouTubeの今回の一件は莫大な金額でしたがもれなく”M&Aに然るべき”路線の企業ですし、その他の近年のM&Aはこういった若いベンチャーの技術・人を垂直に飲み込む形が非常に多くなっています。例えばGoogle Blogoscopedに主にインターネット企業の近年のM&Aとその額が掲載されています。
若さ、つまり起業からM&Aに至るまでの期間については、最近のWeb関連はその技術的性質から特に早くなっているようです。この点については「俺たちの起業」ブログの中川さんが下記の素晴らしいリストと共に書いていらおられます。
サービス開始~Exitまでの期間(開発期間は無視)
● YouTube(Google):約1年8ヶ月(2006年10月)
● Grouper(Sony Pictures):約1年10ヶ月(2006年8月)
● Userplane(AOL):約3年7ヶ月(2006年8月)
● Writely(Google):約7ヶ月(2006年3月)
● Truveo(AOL):約4ヶ月(2006年1月)
● del.icio.us(Yahoo!):約2年(2005年12月)
● Skype(eBay):約2年(2005年12月)
● MySpace(News Corp):約2年(2005年7月)
● Flickr(Yahoo!):約1年1ヶ月(2005年3月)
● Bloglines(Ask Jeeves):約1年7ヶ月(2005年2月)
平均すると1年8ヶ月。ちょうどYouTubeと同じですね。本当にあっという間です。
梅田望夫さんは先日のブログで”GoogleがNASDAQの代わりになった”と書かれておられましたが、こういった技術や人を外から補充する大きな企業とそれを見越した開発をするベンチャー企業という構図はある意味社会的にロスの少ない健全なものですし、今後も続くと思います。
ちなみに、Google等の特定の1社に買収されることを目標に起業するのはとても危険です。潜在的な買い手が最低2社以上ない限り満足の行くM&Aの結果を得ることは非常に困難です。
この点についてはまた今度。
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